国交省から是正命令や3車種の認証取消措置を受けたダイハツの不正問題に関して、2024年1月18日、トヨタ自動車の執行役員である長田准渉外広報本部長が記者団の質問に答えた。国内生産工場の再稼働と新車販売再開に必要な条件について、「まずは、ご迷惑をおかけしたお客さまに許してもらえるかどうかが第一」と語った。
文/ベストカーWeb、写真/ダイハツ、ベストカー編集部
■「そこはトヨタが支えられるだけ支える」改めて言及
ダイハツは2023年12月20日の、第三者委員会からの認証試験における不正報告を受けてから現時点まで、国内4工場すべてで生産を停止しており、全国のダイハツ車販売店も新車販売をストップしている。
国土交通省は第三者委員会の報告が出た直後にダイハツ工業へ立入検査を実施し、2024年1月16日に、「3車種(ダイハツグランマックス/トヨタタウンエース/マツダボンゴ)の型式認定取消」、「新たに14件の不正を確認」、「是正勧告(1カ月以内の再発防止策提出)」、「2車種(ダイハツキャスト/トヨタピクシスジョイ)のリコール指示」の4件を公表した。
経済全体のことを考えると、「ダイハツの生産再開はいつか」というのが論点のひとつになるが、この点についてトヨタの長田執行役員が考えを語った。
「いま、それぞれのダイハツ車についての安全性を、国交省と一緒になってトヨタも入って確認しております。今後それぞれの車種について順次再確認の結果が出てくるとは思いますが、その(国交省の確認)結果と(現在止まっている)工場の生産再開というのは、イコールに繋がるものではない、と考えています。国交省がもういいよと言ったからいい、という話ではなく、まずは今回多大なるご迷惑をおかけして信頼を損ねた、ダイハツ車を買ってくださるお客さま、注文してくださる販売店の皆さま、部品を届けてくださるサプライヤーの皆さまに、それなら作ってもいいよ、と言ってもらうのが第一ではないでしょうか」
具体的な条件ラインを引いたわけではないが、全国の販売店を通じてユーザーからの声を細かく聞いて、生産や販売の再開は「それから丁寧に進める必要がある」とのこと。
ダイハツは従業員とサプライヤーに対して生産停止中の売上に対して補償を行なっているが、それが長引いたとしても、まずはユーザー、販売店、サプライヤーからの信頼回復を最優先すべき、との考えを示した(工場停止が長引けば長引くだけダイハツの財務状況は苦しくなるが、そこはトヨタが支えられるだけ支える、とも語った)。
長田役員によると、国交省からは(ダイハツに対して)「とにかくまともな試験をやって、まともなクルマを作る体制にしてくれ」と厳しく言われている、と明かし、今回発覚した認証不正問題の再発防止策に留まらず、ダイハツという会社の、軽のブランドをどうするか、トヨタへのOEM供給をどうするか、それを「まともに」(≒不正なく)やれるようにするにはどういう人事が必要か、ということを、今まさに急ピッチで進めているとのこと。
トヨタとダイハツの役員は毎日連絡をとりあって必要なものはなにか、この先どうするかを協議しているという。
もう一点、1月16日に実施された会見で、トヨタ佐藤恒治社長が「ダイハツに対して、特に小型車開発や製造のノウハウに対してリスペクトがあった。グループの中でもダイハツらしさを大切にしたいという思いがあり、それが(トヨタが)試験や開発の現場へ細かく入っていかなかったことに通じた」と語った件についても、説明があった。
「たとえばこれから我々が重視していかなければならない、アジア圏におけるAセグメント、Bセグメント、いわゆる小さくて安いクルマの開発と製造に関して、トヨタではとても出来ないことを、ダイハツは出来る力があります。小さくて安くていいクルマを作るためのダイハツの商品開発力は非常に高い。わたし自身も携わったエティオスという比較的小さいクルマをトヨタで作ってインドで販売しましたが、通用しなかった。そういう分野でダイハツには力があります。
だからといってじゃあ不正していいかというと、そんなわけはなくて、ではトヨタが開発と試験の現場に入っていって何を変えるのかというと、それは全部トヨタ方式に変えるというのではなくて、現地現物主義を徹底すべく、マネジメントが実際に現場にいって”匂い”を嗅いで、変えるところと残すところを見極めなくてはならないと思っています。
これはダイハツというブランド論にも大きく関わることですから、(今回の再発防止策を出す)一カ月ではとても終わるものではなくて、まずはそこで大きな方針を出しつつ、走りながら考えて、すこしずつ変えてゆくしかないのだと思います」
なお記者から「CJPTの枠組みからダイハツを外す考えはあるのか?(日野自動車の不正が発覚した際は外されたので)」という質問もあったが、「いまはそれも議論中ですが、とてもそこまで手がついていない」とのことだった。
ダイハツのダイハツらしさと、トヨタのトヨタらしさ。異なる価値観の衝突のなかで、よりよい「生まれ変わり」が果たせるのか。本件、引き続き続報が入り次第、お知らせします。
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