鉄道会社が開発した住宅地に自社線を伸ばして需要を創設するというのは、日本の私鉄のお家芸だが、賃貸マンションにバスチケットを付けるという話は聞いたことがない。西鉄が始めたビジネスモデルはどういうものなのだろうか。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
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■そもそもバス券が付く物件とは
西鉄がビジネスモデルとして特許出願しているのは、福岡市博多区のラクレイス県庁口という賃貸マンションで、交通は福岡市地下鉄「千代県庁口」駅から徒歩1分、「千代町」バス停から徒歩1分の場所に位置する。
賃貸総戸数は126戸(内訳は1R・1LDK・2LDK・1LDKメゾネット・2LDKメゾネット)他、中央区での1棟のマンションでのサービスだ。
入居者には、入居日の翌月よりアプリにてデジタル版の「西鉄バス福岡市内24時間フリー乗車券」を、1年間、1戸あたり毎月4枚(年間計48枚)進呈するというものだ。
デジタル版の24時間券の通常発売額は1100円なので52800円分のチケットが進呈される計算になる。通勤や通学には定期券を持つので必要ないが、週1程度のお出かけをする住人がいる世帯であればありがたいサービスだ。
■1年間ではオマケだが恒久だとプレミアム!?
賃貸マンションに交通サービスが付加されるというのはあまり例がないように思える。本サービスは1年間なので、おまけ的な要素が強い。
しかし恒久的なサービスであれば物件そのものにプレミアムが付加されるようなものなので、そこまで踏み込んでもいいような気もする。
しかし昨今はバス運転士不足の問題でバスの便数や路線そのものが削減されていく中で、露弁性が悪いと判断されて乗客が減れば本末転倒だ。
乗客を誘致する努力も必要なので、バスの利便性を知ってもらう「お試し」的な要素としては価値がある物件なのかもしれない。
■路線網が充実しているからこそのサービス
鉄道や地下鉄と重複する路線を数多く持つ西鉄のバス路線だからこそ、バスだけでどこへでも行ける福岡ならではの利便性が享受できる。
博多駅から郊外の住宅地まで行くバスの車内で帰宅途中と思しきの女性二人組が「バスは遅いし遅れるけど今日みたいに雨が降っても1本で行けるからねぇ」「そうそう、電車だと乗り換えが面倒だし最近は座れないからねー」と井戸端会議をしていた。
他の大都市だと最寄りの駅まで電車に乗ってからフィーダー路線バスに乗るしか選択肢がなく、福岡らしい選択肢の多さなんだと感じた。地方の特色に合った形での住環境の「育成」も大切なのかもしれない。
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