現行型プリウスは登場時のかなり攻めたスタイリングから多くの人から否定的意見を聞いたものの、2018年末のマイナーチェンジでちょっとマイルドに変身。
その効果もあってか販売台数は堅調に推移し、2019年4月にはアクアの7764台に対し9700台で登録車で首位を獲得。
同年5月もノートの8058台に対し9450台でこちらも首位に輝いた。クルマ好きの否定的意見とは相反してプリウスは売れに売れているのだ。
クルマの構造と因果関係のない暴走事故などに関連付けられるなど、近年はさらに批判の多い車種ながらなぜにこうも売れるのか。その理由を聞いてみました。
文:清水草一/写真:トヨタ
■ ハイブリッドシステムは、男女の関係のように複雑かつ深淵だ!!
2018年12月にマイナーチェンジを受け、外観がかなりフツーになったプリウス。
個人的には、オリジナルのデザインを「先進的かつ挑戦的」と評価していたので、マイチェンには残念な思いを抱いていたが、効果はてきめんで、販売は勢いを取り戻し、2019年4~5月の登録車販売台数(軽を除く)では、プリウスが首位に返り咲いた。
筆者は初代プリウスのド中古を激安で購入し、数年間ふだんの足として使った経験があるが、プリウスが積むトヨタハイブリッドシステム(THS)は、乗れば乗るほど奥が深かった。
なにしろエンジンと電気モーターの組み合わせで走るのだから、どちらか一方しか積んでないクルマに比べれば、順列組み合わせは無限大。それが面白くて、ド中古プリウスの後、新車でアクアも買いましたからねぇ。
しかし、自らプリウスを愛車にしたことで、プリウスに対する世間の偏見も自覚した。
クルマ好きにとって、プリウスは最大の敵。「この世で最も退屈なクルマ」と決めつける人が多い。実際はあのハイブリッドシステムは、男女の関係のように複雑かつ深淵なんだけど。
さらに近年は、「プリウス=老人の暴走車」という風評被害までこうむっている。もちろんプリウスが、独特のセレクトレバーのせいで暴走するなど、根も葉もない噂にすぎないが(参照ページ)。
そんな逆風にもめげず、マイチェンをきっかけにプリウスの売れ行きが復活しているのは、「さすがプリウスの地力は強し!」である。
■燃費とエコで先進的なイメージで売れ続ける歴代プリウス
ところで、プリウスが売れ続けてきた理由はなにかと言えば、言うまでもなく燃費と、エコで先進的なイメージだ。
クルマとしてのデキはどうかというと、ハイブリッドシステムは最初から歴史に残る傑作だった。初代の初期モデルには熟成不足もあったが、着実に改良を重ねてきた。
あえて文句をつければ、「電気式無段変速機」ゆえ、アクセルのダイレクト感が超薄いという部分があるが、それは生来の構造だから仕方ないし、その点も徐々にフィーリングが改善されている。
一方乗り味は、初代はフランス車のようにフンワリしていて独特の癒し感があったが、2代目、3代目は、ドタバタとした乗り心地になり、それをマイナーチェンジで改善するという繰り返しだった。
そして現行の4代目。これは、当初からTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用しており、これまでのプリウスとは、走りの次元が違っていた。
2代目、3代目プリウスの足回りがイマイチだったせいもあるが、4代目はものすごく走りがしっかりして、よくなった。
デザインに関しては、2代目・3代目は、「誰にでもわかりやすい未来感」みたいな感じだったが、4代目はそこから一歩進んで、前衛の世界に足を踏み入れていた。これも個人的には高評価の理由。特に斜め後ろから見た姿は大好きでした。
つまり、現行の4代目プリウスは、歴代プリウスの中で出色のデキなのだ! その販売が3年目から大失速したのは、「いいクルマになったのになぁ」と、残念な思いが募ったものです。買ってませんけど。
トヨタも、プリウス失速の最大の原因をデザインだと分析したのだろう。マイチェンでその部分に大きくメスを入れてきた。
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