2000年代後半から2010年代半ばごろ、自動車メーカー各社は少しでも燃費をよく見せようと必死になっていた時代があった。そんなときに生まれたのが、すべてを燃費のために捧げた「燃費スペシャル」グレード。カタログや宣伝ではこのグレードの燃費で「クラスNo.1!」などと誇らしげに掲げていたが……その装備内容が攻めすぎだった!?
文/小鮒康一、写真/トヨタ、日産、ホンダ
■王者アクアに挑んだノートe-POWERとフィット3
ここ最近は落ち着きを見せつつあるが、低燃費を売りにするハイブリッドカーに代表されるエコカーたちは熾烈な燃費競争を行っていた時期があった。
なかでも一般ユーザーはカタログに表示される燃費数値を参考にすることがほとんどだったため、カタログ燃費を上げるためにさまざまな手段を採っていたのだ。
当時のコンパクトクラスの燃費王者と言えば、2011年に登場しカタログ燃費35km/Lオーバーを記録したトヨタ アクア(初代モデル)だった。
そこに対抗すべくまず登場したのが、2013年9月デビューのフィット(3代目モデル)のハイブリッドモデルで、最も燃費数値の良いグレードは36.4km/Lをマーク。するとアクアは同年12月の改良で37.0km/Lまで燃費数値を伸ばしてきたのだ。
そして2016年11月にはノートがビッグマイナーチェンジを実施し、エンジンで発電し、モーターで走行するシステムを搭載したノートe-POWERをリリース。このノートe-POWERの最も燃費の良いグレードは37.2km/Lと一躍トップに躍り出たのである。
このフィット3とノートe-POWERの最も燃費の良いグレード、実はかなりスペシャルな変更がなされた上での低燃費を実現していた。
まずフィット3は、「HYBRID」というグレードが36.4km/Lの数値をマークしていたが、徹底的な軽量化がなされており、ドアミラーウインカーやリアワイパーが省かれていただけでなく、フィットのウリでもあるアレンジしやすいリアのULTRシートまでもが省略され、一体可倒式になっていた。
さらにボンネットはアルミ化、燃料タンクも8L容量の小さな32Lタンクにするなどし、50kgもの軽量化を実現して低燃費を達成していたのである。
■ノートはまさかのエアコンレス……
一方のノートe-POWERは「e-POWER S」というグレードが燃費仕様となっており、こちらもフィットと同じく小さな燃料タンク(41L→35L)やリアのパワーウインドウレスなど装備を省いて軽量化を実現していたのだが、極めつけがなんとエアコンまでも非装着としてしまった点だ。
さらにタイヤサイズも185/65R15とした上で、指定空気圧を前後350kPaとメチャクチャ高く設定(その他グレードはフロント230kPa、リア210kPa)して転がり抵抗を極限まで減らすといった乗り心地や操縦安定性を犠牲にしたと言われてもおかしくない設定をしたことで37.2km/Lという数値を実現していたのだった。
さすがに日産もやり過ぎたと思ったのか、改良のタイミングでe-POWER Sもエアコンを標準装備としたが、こういった見せかけのグレードは消費者をある意味欺くことにもなりかねないため、現在ではほとんど見られなくなっているのが現状だ。
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