日産が2025年モデルのGT-Rを発表した。ニッポンにGT-Rがある歓び。これを感じずにはいられないのだが、いかんせん高くなり過ぎたようにも思える。特にトップモデルのGT-Rニスモは驚異の3000万円。いったいなんでこうなったのよ?
文:ベストカーWeb編集部/写真:日産、ポルシェ
■もはやGT-Rがあるだけでありがたいと思うべき?
日産、いやニッポンのスポーツモデルを語るうえで外せない存在がGT-Rだ。あらためて紹介するまでもないがレースに勝つために生まれたホットモデルは、2007年にスカイラインの系譜から離脱。独立したGT-Rとして世界に向けて挑戦状をたたきつけた。
天才エンジニア水野和敏氏の設計したモデルは毎年のようにニュルのタイムを標準車で更新し、いまでも2013年モデルまでの「水野モデル」は伝説となっている。その後もエンジニアは変われど熟成は進み、18年目のモデルライフを歩みだしたことになる。
とはいえGT-Rは価格でも性能でも並みいる海外のスーパースポーツを打ち破るのが目標だった。初期モデルのベースグレード777万円はきっと出血大サービスのバーゲンプライスだったのだが、2008~2009年は861万円、初めてニスモが設定された2014年も1000万円を切る930万9600円だった。
それが2025年モデルはベースグレード1444万3000円、ニスモは3008万5000円のプライスタグをつける。 年々この手のクルマを作るコストが上がることは理解するが、3000万円超のGT-Rはかなり強気にも思える。
■仮想敵「911ターボ」を超えるプライスタグ
GT-Rはライバルをキッチリと見据えてきた。その1台がポルシェ911だ。2008年にはニュルブルクリンクのラップタイムレコードを巡り、ポルシェが日産に「市販以外のタイヤを履いていた疑惑がある」と異議を唱えるなど、場外戦にも発展したほどヒートアップした。
当時市販車最速を誇ったGT-R。それほどまでに水野和敏さんが率いたGT-Rはポルシェに肉薄し、ポルシェの開発陣も敬意をもって対応していたのだ。それほどまでにGT-Rとポルシェの関係性は深い。
特に911ターボはGT-R開発では必ず視野に入れる存在だし、特にGT2/GT3というスペシャリティモデルを除いたトップグレードであるターボSは「仮想敵」といっていいほどの存在なはず。現行型のポルシェ911ターボSのスペックは650ps/800Nmで、GT-Rニスモの600ps/652Nmを圧倒する。
しかも価格が3279万円。GT-Rニスモとの差額は約270万円。しかもポルシェは2007年から997、991、992とモデルチェンジをしている。それを考えればGT-Rニスモの価格がいかに高いのかは理解しやすいだろう(もちろん現在でも一線級のその性能に敬意は表すが)。
■そろそろGT-Rは次期モデルへとバトンタッチか
まことしやかに今回の2025年モデルが最後のR35GT-Rと伝えられている。2007年のデビューからすればもういいんじゃないかというレベルだが、次期型の姿がなかなか見えてこない。2023年のジャパンモビリティショーで展示された「ハイパーフォース」は全固体電池を採用したモデルだったが、あちこちにGT-R風の装飾が施された。
丸テールにグリルにはGT-Rバッジらしきデザイン。それでも日産は「次期GT-Rではありません」と否定をした。なにかの布石かもしれないが、GT-Rをもてあそんでいる印象も受けた。きっと電動化されたGT-Rの開発は進んでいる。しかし超サプライズ発表だったR35のデビュー時ですら、コンセプトモデルは登場していたし、ハイパーフォースの不明瞭なコンセプトに落胆した人もいるだろう。
2001年の「日産GT-Rコンセプト」を振り返りたい。翌2002年にR34スカイラインGT-Rの生産が終了するのだが、当時の日産社長カルロス・ゴーン氏は2001年の段階でキッチリとGT-Rのバトンタッチを公式に発表した。それこそGT-Rへの愛情だと思うし、熱狂的なファンへの儀礼ではないだろうか。
もし2025モデルが最後のR35になるのなら、もう間もなくバトンタッチの発表があってもいい頃合いだ。GT-Rに限ったハナシではないが、日産は開発現場のエンジニアたちの熱い思いを、正しくしっかりと伝えてほしいと願うばかりだ。
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