空冷4ストローク125ccエンジンを搭載して、2003年に発売された「シグナスX」。そのシグナスXの後継モデルとして、2021年末に国内発売されたのが「CYGNUS GRYPHUS(シグナスグリファス)」だ。シグナスシリーズ初となる水冷エンジンを搭載し、フレームも新設計のフルモデルチェンジ。その後、2023年5月にカラー変更が行なわれている。
文:小川浩康 写真:コイズミユウコ Webikeプラス
規制対応で水冷化。重量増もBLUE COREが補完する
排出ガス規制に適合するために、シグナスシリーズ初の水冷エンジン搭載モデルとなったシグナスグリファス。補器類の追加もあり、車重は6kg増の125kgとなったが、環境性能と走りの楽しさを両立する水冷BLUE COREは最高出力12PSを発揮。シグナスXの最高出力9.8PSからパワーアップすることで重量増に対応している。それでいて燃費は37.5km/L→44.5km/Lと大きく改善され、燃料タンク容量が6.5L→6.1Lと減少したものの、航続距離は逆に伸びている。
車体サイズもひと回り大きくなったが、乗降しやすいフラットフロア、静粛にエンジン始動できるSMG(Smart Motor Generator)、フロントポケット、USBソケット、コンビニフック、容量28Lのシート下収納と、コミューターとしての装備も充実。ブレーキは前後ディスクだがABSは装備されず、リヤブレーキ操作でフロントブレーキが連動するUBS(Unified Brake System)となっている。
CYGNUS GRYPHUSの足着き性をチェック
軽快さと安定性が共存し、スポーティな走りを楽しめる!
規制に対応するためにエンジンを水冷化し、ラジエターや触媒が装着されるなど、シグナスXから6kg増となった。重量増やエンジン・パーツの搭載・重心位置を最適化するためにフレームも新設計されたが、エンジン自体が大きくなったこともあり、車体もひと回り大きくなった。しかし、シート高も10mmアップとなったが、ライディングポジションはシグナスXとほぼ変わらず、またがった状態では車体の大きさは感じなかった。
重量増をカバーするようにエンジンはパワーアップされ、そのパワーを受け止めるために前後タイヤ幅は10mmワイド化されている。ホイールベースは1340mmと35mm延長しているが、キャスター角は27°00′から26°30′へと変更。アイドリングから少しスロットルを開けて前進し始めると、車体はビシッと安定するが、コーナリングの車体の倒し込み時や交差点でのハンドル操作にダルさはなく、直進安定性と機敏な操作性が両立しているのが体感できた。
また、ワイドタイヤと新設計フレームは、車体を倒し込んでいった時のタイヤの接地感をはっきりと伝えてくれるので、車体の姿勢をコントロールしやすく、コーナリングに安定感をもたらしてくれる。シグナスXから受け継いだ前後12インチタイヤはハンドリングの軽快さにも貢献していて、さらに水冷BLUE COREエンジンが走りを軽快にしてくれる。
シグナスグリファスの水冷BLUE COREエンジンは、NMAX125をベースとしているが、変速比を全体的に低速寄りとした加速重視のセッティングとなっている。スロットル操作に対するエンジンのレスポンスがよく、3000rpmくらいからトルクが立ち上がり、4000rpmではトルクがグッと出て、不快な振動もなく加速力がしっかりと発揮される。さらにスロットルを開けると6000rpmまでスムーズに上昇し、そこからはVVA(Variable valve actuation=可変バルブ)が低速向けから中高速向けカムに切り替わり、さらに加速が伸びていって、交通の流れを余裕でリードしていける。
前後ディスクブレーキはタッチがよく、制動力も充分。UBSの前後配分に違和感がないので、カックンブレーキにならず、マシンコントロールのしやすさになっているのが分かる。
スポーティな走りを優先した作り込み
ハンドリングの軽快さ、シート下収納の容量などを考慮して前後12インチタイヤが採用されたというが、10mmワイド化された12インチタイヤには、安定性と軽快な操作性のバランスのよさが感じられた。ただ、荒れた舗装が続くような路面では、前輪が小刻みに上下動しているようなコツコツとした衝撃が両手に伝わってきた。状態のいい舗装路やスピードを上げっていった際には、そうした衝撃はあまり感じず、市街地のゆったりした流れで感じることが多かった。とは言え、ハンドルが振られるようなこともなく、小回りのよさといった小径タイヤのメリットを感じるほうが多かった。
シグナスグリファスには、ABS、トラクションコントロール、アイドリングストップ、スマホとの連携機能、スマートキーといった装備はない。けれど、乗り降りしやすいフラットフロア、自由度のあるライディングポジション、直進安定性と軽快な操作性の両立、そして全域でツキがよく高回転までスムーズに加速するBLUE COREエンジンと、スポーツライディングを存分に楽しめる作り込みがある。手軽にライディングできる125ccコミューターとしてだけではなく、スポーティな走りを楽しみたいという人には深く刺さる1台だと感じられた。
1982年にヤマハ初の4ストスクーターとして登場したシグナス180。1984年にはシグナス125として再登場し、以降モデルチェンジを繰り返し、シグナスシリーズは40年のロングセラーとなっている。初登場時にここまでの長寿モデルになるとは思わなかったが、シグナスグリファスのスポーティな走りはヤマハらしいと感じた。
スペック【2023年型ヤマハCYGNUS GRYPHUS主要諸元】
・全長×全幅×全高:1935×690×1160mm
・ホイールベース:1340mm
・車重:125kg
・エンジン:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒124cc
・最高出力:12PS/8000rpm
・最大トルク:1.1kgf・m/6000rpm
・燃料タンク:6.1L
・変速機:Vベルト式無段/オートマチック
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-12、R=130/70-12
・価格:37万4000円
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/366634/
【試乗】加速感が楽しいシグナスグリファスは、フラットフロア125最速!?【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery2/?gallery_id=366634
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