本誌『ベストカー』にて、クルマにまつわる変わったもの、見慣れないものを取材する連載企画『これは珍なり(略して『これ珍』)』。数ある企画の中から、当時全国初の事例となった、元からあった信号を撤去してのラウンドアバウト式交差点の設置を追いかけた記事をプレイバック。(本稿は「ベストカー」2013年3月26日号に掲載した記事の再録版となります)
写真/資料提供:飯田市
■長野県飯田市に新たなラウンドアバウト式交差点登場
欧米に行ったことのある人なら、クルマが環状の交差点をグルグル回っている光景を見たという人も多いことだろう。
右側通行の欧米の場合、この環状交差点においては、左折したくてもまずは交差点に進入して反時計回りに周回し、行きたい道に達したら円から離脱する。
この「ラウンドアバウト」と呼ばれる方式の交差点、欧米のみならず世界的に見ても環状交差点の主流であるのだが、日本ではほとんど見かけない。
が、なんと長野県飯田市では新たなラウンドアバウトが最近できたという。しかも元からあった信号を撤去してのラウンドアバウト化は、全国初だとか。これは取材しなくては!
■ラウンドアバウトにするにはワケがあるのだ
新たにラウンドアバウトになったのは飯田市東和町にある5枝の交差点。
交差点の完全な完成は3月だというが、すでに2月5日から運用が開始されており、飯田ケーブルテレビのホームページでは、ライブカメラでこの東和町交差点の現在の様子が流され、クルマが時計回りに(日本は左側通行のため)交差点内を移動している様子が確認できる。
この東和町交差点。2009年度にラウンドアバウト化が検討されたが、当時は警察協議の結果4枝の信号交差点とすることが決定したとか。
その後、すでにラウンドアバウトとして存在していた吾妻町ラウンドアバウトでの社会実験実施により技術的な知見が得られ、震災等による対策として関係機関の理解も進み、さらに「やはり5枝の交差点にしてほしい」という地域の要望もあって、東和町交差点のラウンドアバウト化が決定したという。
ではなぜ飯田市の建設部地域計画課が、一度は信号交差点にすると決まった東和町交差点を、社会実験などを行なってもラウンドアバウトとして整備したかというと、それはラウンドアバウトには特有の利点があるからにほかならない。
真っ先に挙げられるのはやはり安全性だ。
ラウンドアバウトは交差点中央にある島に沿った環状の道路を走っているクルマに優先権があるため、交差点に進入するクルマは速度を抑制する必要があり、重大な事故が発生しにくい。
東和町のラウンドアバウトはさらに交差点進入前に一時停止が決められているため、海外に多い必ずしも一時停止の必要がないものより、さらに安全であるといえる。
また、信号待ちの時間がないことによるCO2削減効果も大きい。
計算による数値ではあるが、一時間あたりのCO2排出量が、信号交差点に比べ確実に減るという結果が導き出されている。
そのほか、一から交差点を整備するような場合でも信号交差点として作るよりコスト的に有利ということもある。
飯田市では今後、このほかの交差点でも改良の必要が生じ、さらに構造基準がらみの検証、信号交差点との効果の比較などの条件をクリアし、そして関係機関と地域の合意が得られれば、その交差点をラウンドアバウト化する可能性はあるとしている。
長野県飯田市、ひょっとしたら日本で一番欧米風カーライフが味わえる場所になるのかもしれない。
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