ロータス エランの中の異端児、エラン+2というモデルをご存知か? 家族を持ったスポーツカー乗りのための一台、などといわれた。ひと回り大きくなったことから、軽量という点では一歩譲るのだが、最近、+2への注目も高まっている、という。
文、写真/いのうえ・こーいち
■エランの派生モデル
ロータス・エランは1962年に登場し、1964年にシリーズ2(S2)、1966年にシリーズ3と発展していくのだが、そのシリーズ3時代の1967年6月にエラン+2が加えられている。
先にエラン全体のチェンジを紹介しておくと、1968年にシリーズ4にチェンジ、S4時代の1971年には「エラン・スプリント」が加えられて、最終的には1975年にフェードアウトしている。
エランS1、S2はオープン・モデル、S3モデルからはオープン(ドロップヘッド・クーペ=dhcと呼ばれる)に加えてクーペ(フィクストヘッド・クーペ=fhc)もラインアップされた。
オープン、クーペともに2シーターだったのだが、そのエランS3クーペをベースに、リアに+2シートを設けたエラン+2が加えられた、というわけだ。もちろん+2は子供2人にちょうどのサイズ、であった。
■+2のつくり方
ロータス・エランは鋼板で形づくられたシャシーにFRP製ボディが架装されたものだ。+2シートのスペースを確保するためにホイールベースを延長したシャシーから別ものになっている。
もちろん構造は同じで箱型の断面で、前後がサスペンションを受けるようになっているのだが、エランのホイールベースである84インチ(約2134mm)を12インチ延長して96インチ(約2438mm)にされた。
その延長分はいうまでもなくリアシート分になるわけだが、それだけでなく全体にひと回り大きくなった印象を与える。
それは実際の寸法的にみてもその通りで、全長は+23インチで4263mmになったのは当然だが、全幅も+7.5インチで1613mmになっているのが特筆される。まあ、現代のクルマからみるとまだまだ幅が狭いがエランは1422mmだから200mm近く広がったことになる。
それとともに大きくなった印象にはスタイリングの変更も大きく加担している。リトラクタブル式のヘッドランプも形状が変わったほか、前後が絞られちたのが拡大され、スクウェアなボディになっているようだ。
■+2の魅力はたくさん……
ライトウエイト・スポーツカーを走らせる感覚としては、速さのためには我慢もある種美徳になる。少々の狭さはタイトな感覚になって嬉しいし、軽量であるためにペカペカなボディだって許せてしまうのだ。+2はその辺りも想像以上に手が加えられていた。
エランのFRPボディは1/8インチ厚(約3.2mm)なのだが、エラン+2には倍の1/4インチ厚(6.4mm)が使われている。重量を少し犠牲にしてでも、遮音だとか強度を重視した結果である。
それは室内にも及んでいて、ひと回り厚いパッドが用いられて、居住性への配慮がみられる。あの走るだけに徹したエランが……とクルマ好きはなんだかエランが別世界に行ってしまった気にもなった、という。
少し白い目で見られていたようなエラン+2が、昨今人気が高まっている。ホイールベースが長い分、走行安定性も増しているし、ひと回り広くなったトレッドはコーナリングの踏ん張りも向上している。そんなことに気付いたクルマ好きが、こっそりエラン+2を手に入れていたりするのだ。
エラン+2は1968年10月からフォグランプ追加などしたエラン+2S、1971年には126PSエンジン搭載のエラン+2S130、さらには5段ギアボックスを導入したエラン+2S130/5などがある
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