5代目シビックといえば「スポーツシビック」の呼称で知られ、トップグレードの「SiR」ばかりが注目されたが、セカンドグレードの「VTi」も走りのいいモデルだった。当時を振り返ってみたい。
文/ベストカーWeb編集部・渡邊龍生、写真/ホンダ、ベストカー編集部
■5代目シビックといえばテンロクVTEC搭載のSiRばかりが脚光を浴びたが……
1991年にFMCを受けて登場した5代目シビック(EG型)。通称スポーツシビックは3ドアハッチバックと「フェリオ」のサブネームが与えられたセダンの2種類が選べた。
トップグレードは1.6LDOHCのB16A型VTECを搭載したSiR。先代4代目グランドシビック後期型から搭載されたこのユニットは、先代型の最高出力160psから10psアップの170psを絞り出していた。
当時のテンロクスポーツでは、AE101型カローラレビン/スプリンタートレノが搭載する4A-GEが大幅パワーアップで160ps(先代AE92型は140ps)となり、EF型シビックSiRに並んでいただけに再びパワーで突き放すことに。
1992年、4代目ミラージュに最高出力175psを発揮する1.6LのMIVEC搭載車が登場するまでは、この5代目シビックSiRがテンロクNAスポーツ最強の座についていた。
■5代目シビックVTiはコスパ最高の「ボーイズレーサー」だった?
前置きが長くなったが、このスポーツシビックで隠れた「そこそこのスポーツグレード」だったのがVTi。1.6LDOHCのB16A型VTECに対し、こちらは1.5LSOHCのD15B型VTECを搭載していたのだった。
最高出力170ps/最大トルク16.0kgmのB16A型に対し、D15B型は最高出力130ps/最大トルク14.1kgmとかなり控えめなスペックに見えるのだが、実はそうではないのが注目点。
ライバルのAE101レビン/トレノが4A-GEを積むGTアペックスの下に、最高出力115ps/最大トルク15.0kgmのハイメカDOHC、1.6LDOHCの4A-FEを積んでいたのに対し、シビックVTiは排気量が1.5Lながら最高出力130psを発生回転数6800rpmで叩き出すエンジンだったのだ。
■1.5Lながら吸気側にのみ可変バルタイ採用で優れたパフォーマンスを発揮
その秘密は1.5LSOHCながら高出力と実用性両立のため、吸気側にのみ可変するバルブタイミングリフト機構を採用していたこと。吸気側カムシャフトにのみハイ/ローの2種類のカム駒を設定し、ロッカーアームを切り替えて吸排気バルブの開閉タイミングとリフト量を変化させる凝ったシステムを採用していた。
当時、ほかの1.5Lエンジンでめぼしい存在はマツダがファミリアNEOやオートザムAZ-3などに採用していたB5-ZE型があったくらい。その最高出力も115~125psだったことを考えればシビックVTiは1.5Lトップクラスのパフォーマンスだった。
しかも当時のシビックVTiの新車価格は128万6000円と内容を考えると格安。また、当時の10.15モード燃費もライバルを凌駕する16.4km/Lをマークしていたのだから文句なし。
当時、大学生だった実弟が最初のマイカーとしてシビックVTiの5MT車を購入したのだが、仕事で使っていた私のR32スカイラインタイプMが故障のため1カ月間の長期入院となった際に1カ月間借りて乗っていたことがある。
そこそこ速いミドルクーペのR32スカイラインに乗っていたこともあり、1.5Lのシビックじゃ大したことないだろうと勝手に先入観を抱いていたのだが、1カ月間乗っていたらすっかりVTiの虜になってしまっていた(笑)。
パワー感こそさほどでもなかったが、まるでバイクのようにシュンシュンと回る1.5LVTECエンジンに、わずか990kgと1トンを切る軽量ボディ、5MTを駆使して走り回っていると、その爽快感たるや2LターボのタイプMとはまた違った世界を味わせてくれたことに驚かされたものだ。
何となくだけど、テンロクNAを積んでいた先代型スイフトスポーツのような感じだったのかなあと今さらながら感慨に耽っていたりする。
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