2024年5月27日に行われたトヨタ・スバル・マツダによる共同の技術説明会「マルチパスウェイ ワークショップ」でマツダが発表した、新世代ロータリーエンジンと電動化ユニットの組み合わせに関する計画。横置きと縦置きレイアウトの新たなロータリーEVシステムは、ロータリーエンジンのBEVをつくる専売特許をもつマツダならではであり、クルマファンとしては大いに期待したいところだ。ただ、技術的なハードルが高いとされるロータリーエンジンであるだけに、どのレベルで実現されるのかは非常に気になるところ。はたしてロータリーエンジンに光明はあるのか。冷静に考えてみよう。
文:吉川賢一/写真:MAZDA
新ロータリーエンジンハイブリッドが次期CX-5に搭載される!??
2024年3月期のグローバル販売台数は約124万台と、前年比で13%も増加したマツダ。その内訳は、北米市場が約51万台、欧州市場が約18万台、日本市場が約16万台、中国市場が約10万台と、4割以上が北米市場を占める。魅力的なスモール商品群に加えて、ここ数年で一気に投入したラージ商品群の新型モデルがヒットしており、目下、販売は好調だ。なかでも売れているのがミドルクラスSUVの「CX-5」。マツダによると、新車販売の4台に1台がCX-5であり、現在のマツダの好調の源になっているようだ。
そんなCX-5の次期型で、マツダは「マツダ製のハイブリッド」を搭載すると発表している。マツダといえば、2023年11月にトヨタ製のハイブリッドシステムを搭載したCX-50ハイブリッドが中国市場専売モデルとして登場しており、これと区別するため、あえて「マツダ製の」としているのだろう。この「マツダ製のハイブリッド」の正体がみえたのが、冒頭の「マルチパスウェイ ワークショップ」で世界初公開された、ロータリーEVシステムコンセプトだ。
驚いたことに、トヨタのハイブリッド「THS」らしきユニットと組み合わせられていたが、確かにエンジンは横置きのロータリーエンジンであり、電動トランスミッションはトヨタ製であっても、これは「マツダ製のハイブリッド」といえるのだろう。
マツダによると、この新エンジンは、電動化ユニットの組み合わせることが前提の新たなパワーユニットだそうで、エンジン本体を小型化したことで、エンジンフードをさらに下げることができ、デザイン性向上させつつ、空気抵抗の低減、そして燃費改善にも貢献するとのこと。これが実現するならば、ロータリーエンジンの可能性は一気に広がるように思う。
ロータリーエンジンは通常の直列配置エンジンよりもカーボンニュートラル燃料に対応させやすい
さらにロータリーエンジンは、マツダによると「燃料の雑食性がある」とのこと。通常の直列配置エンジンよりも様々なカーボンニュートラル燃料に対応させやすいそうで、これが実現できるならば、モーターを介すことなく、エンジンで駆動するロータリーエンジン搭載車が今後も生き残り続けることができるということになる。クルマファンにとっては夢に見た展開だ。
ロータリーエンジンの課題であるCO2排出をどう抑制できるかは気になるところだが、マツダは、将来的にさらに厳しさを増す排ガス規制に適合すべく、ロータリーエンジンの研究を進めるとしているとのこと。マツダの象徴でもあるロータリーエンジンを再び光の下に戻し、マツダの将来を担ってもらう判断をしたマツダの意気込みには、クルマファンとして大いに期待したいと思う。
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