ヨーロッパ市場をメインターゲットととしたトヨタ オーリス。ヴィッツよりも一回り大きく、走りへの進化を加速させていったクルマだが、実はトヨタ車でも類を見ないとある大物とコラボしたモデルでもあったのだ。
文:西川 昇吾/写真:トヨタ、モデリスタ
■ヨーロッパメインだったオーリス
毎年多くのニューモデルが登場する日本の自動車市場。そしてその陰ではひっそりとラインアップからフェードアウトするモデルもある。今回はそんなモデルの中からトヨタのCセグメントハッチバックオーリスを振り返る。
オーリスは2006年10月に日本市場での販売を開始した。与えられた開発テーマは「直感性能」。見た瞬間、乗った瞬間、走り出した瞬間に魅力が実感できることを目標としていた。
日本市場でも販売されていたが、ターゲットとしてはヨーロッパ市場をメインとしていたことだろう。
エクステリアデザインはヨーロッパのデザイン拠点であるED2が手掛けている。ショート&ワイドなフォルム、そして低い位置で前傾したベルトラインと傾斜させたクォーターピラーは良い走りを期待させるエクステリアデザインだ。
良い走りにこだわったのはメカニズムからも現れていて、当時新開発のプラットホームとサスペンションを採用していた。
また、走行テストもヨーロッパ各国の道路を始め、サーキットでも走り込みを実施。高速ワインディングやハイウェイなどあらゆるシーンでの卓越した走行性能を求めたモデルであった。
2009年の改良時には走りのグレードであるRSが追加された。それまでトランスミッションはSuper CVT-iのみだったが、このRSは6速MTで登場。1.8Lエンジンは2ZR-FEから2ZR-FAEへと進化、新たに可変バルブタイミング機構であるバルブマチックが採用された。
■走りがさらに進化した2代目
2代目へのフルモデルチェンジは2012年8月に行われた。エクステリアデザインは大きく変わったが、「直感性能」というイメージはキープコンセプトで、「スポーツハッチバックの新基準」を確立することを目標に開発された。
大きく変わったエクステリアデザインのテーマは「SMART DYNAMISM」。低重心なパッケージがより生かされたデザインとなっていて、当時のトヨタ独自のフェイスである「キーンルック」も特徴の1つと言える。
走りも磨き上げられており、高いボディ剛性を確保して俊敏な走りと上質な乗り心地の両立を実現。リアサスペンションはダブルウィッシュボーンを新採用している。
さらに走りのグレードRSは6速マニュアルミッションはそのまま専用で用意され、専用の大型フロントブレーキを装備していて、より走りを特別感が高められた。
■なにこれ? シャア専用オーリスとは
そして2代目オーリスで印象的であったことと言えば「シャア専用オーリス」だ。これは『機動戦士ガンダム』に登場する「シャアアズナブル」とトヨタのコラボレーションで誕生したモデルで、シャア専用ザクをモチーフにした専用パーツをモデリスタが製作し、ディーラーオプションとして販売されていた。
特に特徴的であったのが専用カーナビ。ルート案内や走行条件のアナウンスがシャアを演じる声優の池田秀一さんによるオリジナルボイスでドライバーに伝えられるというものであった。
好評だったためか、マイナーチェンジ後の2015年には更に進化した「シャア専用オーリスⅡ」が300台限定のコンプリートモデルとして販売された。
トヨタのラインアップからオーリスは消えてしまったが、その実質的な後継モデルはカローラスポーツと言える。オーリスのころからヨーロッパのCセグメントハッチバックに対抗しようと、走りの良さを求めたその姿勢は今日のカローラスポーツに対する走りの高評価へと繋がっているのだ。
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