これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、アニメの人気キャラクターとのコラボモデル、シャア専用オーリスを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
■架空の会社を設立するほどこだわり抜いたプロジェクト
テレビ版『機動戦士ガンダム』第2話のひとコマ───。
マーカー:「続いて接近する物体がふたつあります。モビルスーツのようです」
ブライト:「ザクか?」
オスカ:「で、でもブライトさん、このスピードで迫れるザクなんてありはしません」
マーカー:「1機のザクは通常の3倍のスピードで接近します」
パオロ:「シャ、シャアだ、あ、赤い彗星だ」
ブライト:「は? 艦長、なにか?……ええっ、赤い彗星のシャア?」
パオロ:「ルウム戦役で五隻の戦艦がシャアひとりのために撃破された。……に、逃げろ!!」
ガンダムファンにはお馴染みの、ルウム戦役での戦闘でシャアが単独で連邦軍の戦艦を5隻沈めたという武勇伝が語られたシーンである。
連邦軍が恐れた「赤い彗星」というシャアの異名は、そのときの戦いにおいて乗機だったシャア専用ザクが「まるで赤い尾を引く彗星のようであった」という逸話から付けられたと言われている。この逸話は、ルウム戦役においてジオン軍の勝利に大きく貢献した黒い3連星(当時の乗機はザク)がシャアの駆るザクを見て、
オルテガ「あの野郎!」
マッシュ「シャアか!?」
ガイア「通常の3倍のスピード! まるで赤い彗星だ!!」
と、賞賛していることでも証明されている。
赤いモビルスーツを駆り類まれなる才能を武器に戦う華麗な姿、そして圧倒的な強さを「通常の3倍」というワード、「赤い彗星」という通り名で視聴者にわかりやすく知らしめることで、機動戦士ガンダムという作品においては、主人公であるアムロ・レイ&ガンダムのライバルキャラとして絶大なインパクトと存在感を放っていた。
と前置きが長くなったが(笑)、そんなシャアと乗機をモチーフにした「シャア専用オーリス」が2013年8月に登場した。シャア専用オーリスは、前年に行われたキャラクター&ホビーイベント「キャラホビ2012」に「シャア専用オーリス CONCEPT」として突如登場した。
当初は、イベントを盛り上げるためのショーカーと思われていたが、発表して以来、多くのユーザーから市販化の要望があったようで、その反響の大きさに応えるべく発売に至ることになる。
市販化プロジェクトの一環として、トヨタとガンダム世界に登場するモビルスーツ製造企業ジオニック社の合弁会社としてバーチャルカンパニー「ジオニックトヨタ」を設立。市販モデルのコンセプトづくりやパーツのネーミング・デザインなどの一部には、ジオニックトヨタに登録した2万6000人を超える社員のアイディアや意見が反映されている。
このジオニックトヨタプロジェクトを通じて集まった意見には、ファンの数だけ異なった 「シャア・アズナブル」のイメージがあることを把握できたほか、「隊長機に相応しいブレードアンテナは必須」とか「ナビや起動音の音にこだわってほしい」など、「シャア専用オーリス」に求める具体的な商品性もあったという。
【画像ギャラリー】『機動戦士ガンダム』で強烈な存在感を放ったキャラクターをオマージュしたモデル、シャア専用オーリスの写真をもっと見る!(14枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方