スズキは、もはや軽自動車だけのメーカーではなくなっている。その原動力を探っていくと、ひたむきに日本市場を見つめ続けるスズキがあった。最も日本ユーザーファーストなメーカーは、スズキだったのだ。
文:佐々木 亘/画像:スズキ、ベストカーweb編集部
■「軽でも強い」スズキを作り上げた2台の英雄
スズキをダイハツと並ぶ、日本の2大軽自動車メーカーとイメージするユーザーは多いと思う。ただこのイメージを持つのは、年齢が高い人に多いようだ。最近の若年層から中年に差し掛かる世代は、スズキに対して「小型車」というイメージを抱いていると、スズキの販売現場で働く営業マンが話してくれた。
本稿執筆時点で、スズキの軽自動車は派生車種も含めて14ある。対して登録車はOEMのランディを含めて7車種だ。しかし、軽自動車比で車種が半分しかない登録車の売れ行きは良く、特に若年層は、スズキディーラーに登録車を見に来ることが多いという。
こうしたブランドイメージの引き上げを担っているのが、大人気のソリオとスイフトであろう。この2台によって、スズキは「軽自動車で強い」メーカーではなく、「軽自動車でも」強いメーカーになった。
一体、ソリオとスイフトは、スズキに何をもたらしたのだろうか。
■スイフトの誕生と新生スズキの始まり
1990年代後半から、ワゴンRワイドや初代スイフトのような、軽自動車+αの登録車を作ってきたスズキ。ただ、軽自動車からの脱却は難しく、単に価格の安い登録車で終わってしまっていた。
2000年代に入り、スズキは世界へ目を向け始める。そのスタートとして登場したのが2代目(ZC・ZD型)スイフトだ。スズキの世界戦略車として開発されたスイフトは、初代同様に低価格なのだが、デザイン・走行性能が格段に良くなっている。
誰もが軽自動車メーカーと思っていたスズキが、登録車専用の新設計プラットフォームを開発し、ここまで登録車を成長させたことに、国内外から驚きと称賛の声が上がった。
ただ、世界戦略車で大成功を収めたスズキは、主戦場を世界に変えることはせず、日本市場を見つめ続けた。この姿勢が、あの大ヒット車「ソリオ」を生み出す原動力となっていく。
■日本の小型登録車に必要なモノが全部詰まったソリオの誕生
ソリオが現在のような形になったのは、2011年に登場した2代目からだ。元々の系譜であるワゴンRから完全に独立し、大ヒットしたスイフト同様に、新設計プラットフォームを軸にしたクルマづくりを行っている。
昨今は、スズキ以外の他メーカーが海外市場を販売の軸に据え、「海外で人気の出るクルマをつくり日本でも売る」という開発姿勢を取っているように見える。大きな経済成長が見込めない日本市場よりも、拡大する海外市場の優先度が高くなるのは当たり前のことなのだが、それでもスズキだけは、日本市場から目を背けてはいない。
結果として、日本人が求める小型車の理想をカタチにしたソリオが生まれたのである。ボディサイズはコンパクトで、しっかりと小回りが利くものの、室内空間は広い。ハイトワゴンに機能性の高いスライドドアを取り付けるというソリオのカタチは、紛れもなく日本人の好みに合わせた作り方だ。
現行型では広さ・燃費・安全性を求めるユーザーの声を重視して、小回り性能を維持したままボディサイズを拡大し、より広い室内を作り出した。独自のパラレル式ハイブリッドの登場や、スズキセーフティサポートの機能拡充も果たしている。
日本独自の文化である軽自動車をつくりつづけたからこそ、スズキは日本市場を見つめ続ける存在であり続けられるのだろう。結果として、日本人が今クルマに求めていることを一番よく理解し、クルマづくりに反映させられるメーカーとなったのだ。
スズキが日本人のためにクルマを作り続けるからこそ、そうした目に敏感な若年層から支持を集めることができた。これからの日本の自動車文化は、もしかするとスズキが引っ張っていく存在になるのではないかと、筆者は思っている。
日本人が作る日本人のためのクルマは、スズキに任せておけば大丈夫だ。
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