実物大のポケモン「ホンダコライドン」降臨! 2輪の先進技術で子どもを乗せて自走OK。完成は2025年夏前?

実物大のポケモン「ホンダコライドン」降臨! 2輪の先進技術で子どもを乗せて自走OK。完成は2025年夏前?

ホンダが、伝説のポケモン「コライドン」のリアルな外観に加え、独自の2輪先進技術で子どもを乗せて自立走行も可能な未来型モビリティ「ホンダコライドン」を開発。2025年3月7日〜3月9日、同社ショールール「Hondaウエルカムプラザ青山(東京都港区)」に展示した。
世界中で人気のゲームソフト「ポケットモンスター スカーレット」に登場する架空のキャラクターがコライドン。それを外観や大きさだけでなく、動きまでリアルに再現したというのがホンダコライドンだ。2025年夏前には、実際に走行する姿を披露するというが、果たして、どのような動きを見られるのだろうか。また、制作した狙いはなにか。報道関係者向け発表会に参加して取材した。

文/Webikeプラス編集部

 
 
 

コライドンとは?

 ポケットモンスター、いわゆるポケモン・シリーズのゲームソフトなどを手掛けるポケモン社が監修し、世界中のポケモン・ファンを納得させるフォルムはもちろん、その細かい動きにまでこだわったというのがホンダコライドン。そのもとになったコライドンは、2022年に発売されたゲームソフト「ポケットモンスター スカーレット」に登場する伝説のポケモンだ。

 

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ホンダコライドンのフロントビュー

 

 「主人公と一緒に旅をして成長していく相棒」のようなキャラクターで、その姿は、場面に応じてトランスフォームすることが可能。たとえば、

・4足歩行で歩く「せいげんけいたい」
・逞しい四肢を使って走り抜ける「しっそうけいたい」
・高速で遊泳する「ゆうえいけいたい」
・風に乗って空を舞う「かっくうけいたい」

 など、物語が進むにつれて多様な姿に変化し、主人公を乗せていろんな場所へ移動できる能力を持つという。

 

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ホンダコライドンのサイドビュー

 

 

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ホンダコライドンのリアビュー

 

 
 
 

プロジェクトのきっかけはトヨタ版ポケモン

そんなコライドンを、ホンダが未来型モビリティとして再現したのがホンダコライドンだ。制作にあたっては、ホンダの2輪やパワープロダクツ事業、先進技術研究所などの各部門より、約40名の有志が社内公募で集まりプロジェクトチームを結成。プロジェクトの発起人かつチームの推進責任者は、今回の発表会にも登壇した二輪事業企画部の坂本順一氏が担当する。

 

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プロジェクトチーム推進責任者を務める二輪事業企画部の坂本順一氏

 

坂本氏によれば、当プロジェクトを発案したきっかけは、2024年にトヨタ自動車(以下、トヨタ)の有志たち「トヨタ技術会」が制作した「トヨタミライドン」だ。こちらは、同じく2022年発売のゲームソフト「ポケットモンスター バイオレット」に登場する「ミライドン」を再現したものだ。
制作の主な目的は、実際に乗ることができるゲーム中の人気キャラクターを作ることで、子どもたちの夢を形にすること。毎年、トヨタ技術会が開催しているイベント「わくわくワールド」へ展示するために、ゲームソフトを手掛けるポケモン社と共同で制作したトヨタミライドンは、リアルなスタイルだけでなく、実際に子どもを乗せて走行も可能。「大人の本気が子供の夢になる」というスローガンを掲げ、それを具現化したことで大きな話題となった。

 

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プロジェクトを発案したきっかけは、2024年に「トヨタ技術会」が制作した「トヨタミライドン」

 

そして、そうしたトヨタの活動に触発された坂本氏は、「ホンダならホンダらしいポケモンが作れるはず」とプロジェクトを提案。ポケモン社から了承を得ると共に、ホンダ社内の稟議も通し、晴れてホンダ版のリアルな「ポケモン」制作に至ったという。

 
 

●外観やカラーにもリアルさを追求

発表会には、坂本氏と共に、当プロジェクトチームの開発責任者で、同じく二輪事業企画部に所属する萩原和也氏も登壇。

 

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プロジェクトチーム開発責任者を担当する 二輪事業企画部の萩原和也氏

 

 萩原氏によれば、制作にあたっては、コライドンは架空のキャラクターではあるものの「できるだけリアルさを追求した」という。そのため、外観の形状はもちろん、高さ2.5m、重さ303.0kgというコライドンの設定値も踏襲。重さや大きさは、ほぼ実物大なのだという。

とくに、カラーは、コライドンの色使いが、ホンダのMotoGPマシン「RC213V」をはじめ、レーシングマシンや市販スポーツモデルなどに施される「トリコロール」というカラーに近い配色であることもあり、かなりこだわったという。

 

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「トリコロール」は、MotoGPマシン「RC213V」はじめ、ホンダのレーシングマシンや市販スポーツモデルなどでおなじみのカラー

 

 赤・青・白を基軸にしたカラーリングは、ポケモン社からの意向も参考にしつつ、新しい色合いの塗料を開発。また、頭部から伸びる角のような部分に施したグラデーションは、ホンダ社内の職人が手作業で塗装した。

 

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ホンダ社内の職人が手作業で塗装するほど、外装色にもこだわった

 

 加えて、顔や前足・後ろ足など各部の形状なども、オモチャのように見えないように質感を工夫。恐竜の模型なども参考し、リアルさを追求したという。ほかにも、翼もゲーム中のコライドンと同様、移動時などに可動させるなど、とにかく細かい部分まで徹底的に再現した。

 

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顔や前足・後ろ足など各部の形状なども、オモチャのように見えないように質感を工夫

 

ホンダの独自技術で自立走行も可能

そして、モビリティとしての動き。ホンダコライドンでは、移動時に以下のような動きが可能だという。

・「しっそうけいたい」での乗車が可能。バランス制御技術を使って自立走行もする
・しっそうスピード(走行速度)に合わせ、手足、首、顔の動きを変化させ躍動感を表現予定
・顔、目、瞼(ひとみ)などの細かい動作を再現予定

 なお、走行の速度は10〜15km/h程度を想定。走行時には、子どもを背中に乗せて自立走行できることも特徴だという。

開発責任者の萩原氏いわく「とにかくゲームをやり込んで動きを徹底的に学んだ」というホンダコライドン。今回の発表会では、実際の走行までは見られなかったが、VRシミュレーション上では、自立走行を実現しているという。また、完成の時期だが、坂本氏は「明言はできない」としつつも、「2025年夏前ごろにはお披露目したい」という。

 

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VRシミュレーション上では、自立走行を実現

 

走行に関するより具体的な機能としては、まず、前後2か所にある「浮き袋」と呼ばれる円形状のボディ下に、小さなタイヤを装着。実際の走行は、それら前後タイヤを電動パワーユニットで回転させることで行うという。

 

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浮き袋と呼ばれる円形状のボディ下部に、小さなタイヤを装着

 

 では、前後にある4本の足はなにか。これらはあくまで、コライドンの動きをリアルに見せるためのいわばギミックだ。あたかも4足で歩行したり、疾走しているかようにみせるために可動させるのものだという。

 

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ホンダコライドンに備わる4本の足は、走行に合わせて可動する仕組み

 

つまり、ホンダコライドンは、基本的に2輪車と同じ走り方をするのだ。ただし、普通の2輪車と違うのは、発進から走行中はもちろん、停止中も自らバランスを取って、乗員が足を地面に着けなくても転倒しないこと。ホンダが開発中の「ホンダライディングアシスト」という技術を応用することで、それを可能としている。

ホンダライディングアシストとは?

ご存じのとおり、バイクはバランスを崩すと転倒してしまう乗り物だ。ホンダライディングアシストは、2輪車が持つそうした潜在的リスクへの不安を解消することを目的に、ホンダが開発している2輪姿勢制御技術だ。ホンダが製作したヒューマノイドロボットのアシモなどで培った独自の姿勢安定化技術を応用し、バイクが転倒しやすい停止中や極低速域で車体を安定させることが大きな特徴だといえる。

 

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ホンダライディングアシスト2.0を搭載したNM4

 

 

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ホンダライディングアシストは、ヒューマノイドロボットのアシモなどで培った独自の姿勢安定化技術も応用

 

もともとは、2017年に北米の電子機器関連見本市「CES」や「東京モーターショー」などで公開された技術だが、当初は前輪を前後左右に自動で動かし、バイクが停止状態を保ったまま自立し、極低速でのスムーズな旋回などを行った。

 その後、2022年に、その改良版となるホンダライディングアシスト2.0を発表。前輪のみの制御だった従来型では、たとえば、曲がりたいときにシステムの介入が強すぎて、ライダーが違和感を持つ場合があったという。

 そこで、改良版の2.0では、車体と後輪の間に「車体・後輪揺動機構」を追加。車体後部にモーターを搭載し、リアタイヤと車体を左右にスイングさせることで、バランスを取る仕組みを採用したことで、より自然な制御を可能とした。

 

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ホンダライディングアシスト2.0は、車体と後輪の間に「車体・後輪揺動機構」を備える

 

ちなみに、この技術の公表当時、システムを搭載したバイクは、ホンダが2019年まで販売していた「NM4」(現在は生産終了)。745cc・2気筒エンジンを搭載し、近未来的なスタイルなどが当時話題となったモデルだ。今回の発表会にも現車が展示されていたが、ホンダライディングアシストのシステムは、一部をホンダコライドンへ移植。当面はリアルな「ポケモン」の動きを再現するために活用されるという。

日本のものづくりをアピールしたい

 以上が、ホンダコライドンの概要だが、ホンダはどんな目的で開発しているのだろうか。

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