ホンダEクラッチやDCT、ヤマハのY-AMT、カワサキのハイブリッド車に搭載しているマニュアルモード付き電子制御6速ATなど、最近のトレンドといえる電子制御シフト機構。それらの多くが、クラッチレバー操作の不要なATモードを持つことで、長距離走行などでの疲労軽減や高い快適性などを実現。また、ライダーが任意でギアを選べるMTモードも選べることで、スポーティな走りも体感できます。
まさに、革新的な新機構といえますが、そもそも各メーカーの採用するシステムには、どのような特徴があり、どのようなバイクに搭載されているのでしょうか。ここでは、ホンダ、ヤマハ、カワサキといった国内メーカー採用する最新の電子制御シフト機構を中心に、その概要と採用モデルを紹介します。
ホンダE-クラッチ
まずは「ホンダE-クラッチ(Honda E-Clutch)」。これは、従来のMT(マニュアル・トランスミッション)仕様と同様にクラッチレバーとシフトペダルを備えつつも、最新の電子制御技術で最適なクラッチコントロールを自動制御する機構です。
これにより、MT車ながら、発進、変速、停止などでクラッチレバーの操作は一切不要。変速操作自体は、通常のMT車と同じくシフトペダルで行いますが、クラッチレバー操作がないため、渋滞路の低速走行や細い路地のUターンなどで、エンストによる転倒の心配はほぼありません。また、クラッチレバーなしでシフトのアップ・ダウン操作をスムーズに行えるため、スポーツ走行時にはクイックシフターのような使い方もできます。
加えて、電子制御によるクラッチコントロール中でも、ライダーがクラッチレバーの操作を行えば、通常のMT車のように手動によるクラッチコントロールも可能。さらに、システムの作動をオフにすることもできるので、一般的なMT車のように乗ることもできます。
なお、2025年4月末現在、ホンダE-クラッチ搭載車は次の通りです。
CBR650R E-クラッチ/CB650R E-クラッチ
ホンダがE-クラッチを初めて搭載したのが、648cc・直列4気筒エンジンを搭載するフルカウルモデルの「CBR650R Eクラッチ」と、その兄弟車でネイキッドの「CB650R Eクラッチ」です。いずれも、E-クラッチ未搭載のスタンダード車と併売し、2024年6月13日に発売しました。
E-クラッチ搭載車のベースとなるのは、2024年にモデルチェンジを受けた現行モデル。CBR650Rではヘッドライト、シュラウド、リアカウル、テールランプなどのデザインを変更。CBR650Rもヘッドライト、アッパーカウル、ミドルカウル、アンダーカウル、リアカウルなどのデザインを変更し、いずれもスタイリングを一新しています。また、豊富な情報を見やすく表示する5インチフルカラーTFTメーターの採用や、車両とスマートフォンを連携させられる「ホンダロードシンク(Honda RoadSync)」の追加なども実施。より使い勝手のよさや利便性を高めるアップデートを行っています。
ちなみに、両モデルのスタンダードとE-クラッチ搭載車は、見た目上でほとんど同じ。わずかな違いといえば、E-クラッチ搭載車の場合、エンジン右側のクランクケースサイドカバー部に、ホンダE-クラッチのユニットが追加されていることくらいです。しかも、ユニット自体はかなりコンパクトなため、スタンダード仕様の通常エンジンと比べても、スタイル的な違和感はほぼないといえます。
なお、CBR650R E-クラッチの価格(税込み)は115万5000円〜118万8000円。スタンダード仕様CBR650Rの価格(税込み)が110万円なので、E-クラッチ搭載車は5万5000円〜8万8000円アップとなります。
また、CB650R E-クラッチの価格(税込み)は108万9000円。スタンダード仕様CB650Rの価格(税込み)が103万4000円なので、E-クラッチ搭載車は5万5000円のアップです。
レブル250 E-クラッチ/レブル250Sエディション E-クラッチ
2025年3月13日に発売されたのが、軽二輪クルーザーモデル「レブル250」に追加した「レブル250 E-クラッチ」と「レブル250Sエディション E-クラッチ」です。
低回転域から扱いやすい249cc・単気筒エンジンと、シート高690mmという抜群の足着き性などで、初心者からベテランまで、幅広いライダーに支持を受けているのがレブル250とビキニカウルなどを装備したレブル250Sエディション。その2025年モデルでは、ハンドル形状を見直しポジションの最適化を図るとともに、シート内部の素材を変更して快適性の向上を図っていることがポイントです。
そんなレブル250の2025年モデルでは、通常のスタンダード車レブル250と、レブル250 E-クラッチを設定。ビキニカウル付きのレブル250SエディションはE-クラッチ搭載車のみの設定となりました。
価格(税込み)は、レブル250 E-クラッチが69万3000円で、スタンダードのレブル250が63万8000円なので、E-クラッチ搭載車は5万5000円アップ。レブル250Sエディション E-クラッチは73万1500円です。
ヤマハY-AMT
一方、高級スポーツツアラー「トレーサー9GT+」の2025年モデルにも採用され、話題を呼んでいるヤマハの「Y-AMT(ワイ・エーエムティ)」。
これは、クラッチレバーやシフトペダルを廃し、ハンドルに装備したシフトレバーでの変速操作を可能とする新開発の自動変速トランスミッションです。しかも、フルオートで変速するAT(オートマチック・トランスミッション)機能も備えており、ライダーが任意に選択することが可能。これらにより、ライダーは、クラッチやシフトペダルの操作が不要となり、体重移動やスロットル開閉、ブレーキングなど、ほかの操作に集中できることで、よりバイクを操る楽しさを堪能できるといいます。
いわば、パドルシフトによる手動変速とATモードを備える4輪車のセミオートマ(セミオートマチック)的な機構がY-AMTです。MTモードでは、左ハンドルにあるシーソー式のシフトレバーで変速操作を実施。「+」レバーを人さし指で引けばシフトアップ、「-」レバーを親指で押せばシフトダウンします。また、スポーツ走行で素早く減速する際などは、親指も使ってハンドルグリップをしっかりとホールドすることも多いですよね。そこで、Y-AMTでは、そうしたシーンで「+」レバーと人さし指のみの操作も可能で、引けばシフトアップ、外側に弾けばシフトダウンとなります。
一方、ATモードにすると、車速やアクセル開度に応じて最適なギアをバイクが自動的に選択します。ライダーが行うのはアクセルとブレーキ操作だけ。また、ATモードには、穏やかな走りとなる「D」と、スポーティで俊敏な走行が可能な「D+」といった2つのモードも用意。MTとATの切り替えは、右ハンドルのスイッチボックス外側にあるレバーを押すことで可能です。
ちなみに、Y-AMTとホンダE-クラッチの大きな違いは、ホンダE-クラッチでは電子制御シフトの機能作動中に変速する際もシフトペダルの操作が必要なこと。そもそもシフトペダルやクラッチレバーを備えないY-AMT搭載車とは一線を画す点です。
逆に、E-クラッチ搭載車は、先に述べた通り、電子制御によるクラッチコントロール中でも、ライダーがクラッチレバーの操作を行えば、通常のMT車のようにマニュアル操作への切り替えが可能。さらに、これも前述の通り、システムの作動をオフにすることもできます。
そう考えると、やっぱりバイクに乗るなら、アクセルとクラッチ、シフトペダルを細かく操作したいといった、昔ながらの乗り方を好むライダーには、今回紹介する各機構のなかでも、E-クラッチ搭載車が最もマッチするといえるでしょう。
なお、ヤマハでは、2025年4月末現在、Y-AMT搭載モデルとして次の3機種を設定しています。
MT-09 Y-AMT
Y-AMTを最初に採用したのが、888cc・3気筒エンジン搭載のストリートファイター「MT-09」。通常のMT仕様車にタイプ追加する形で、2024年9月30日に発売。2025年5月22日には、新色を採用した2025年モデルも発売予定です。
なお、MT-09 Y-AMTの価格(税込み)は136万4000円。スタンダードの価格(税込み)が125万4000円なので、11万円のアップとなります。
MT-07 Y-AMT
MT-09の兄弟車で、688cc・2気筒エンジンを搭載する「MT-07」の2025年モデルにも、Y-AMTを採用した「MT-07 Y-AMT」をタイプ追加。2025年2月26日に発売しました。
モデルチェンジを受けた新型MT-07は、スタンダード車とY-AMT搭載車のいずれにも、小型で薄い小径LEDヘッドライトなどを装備しイメージを一新。倒立式サスペンションなどで走りを強化していることも特徴です。なお、MT-07 Y-AMTの価格(税込み)は105万6000円。スタンダードが96万8000円なので、Y-AMT車は8万8000円のアップです。









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