1985年に登場したGSX-R750は、当時の750ccクラスの常識を覆す軽量とハイパワーで大排気量スポーツの歴史を塗り替えた。それから40年。ブレずに一貫してスーパースポーツであり続け、他に媚びることなく、諦めずにスーパースポーツを追求してきた
最長にして唯我独尊のブランド“GSX-R”。その歴史を
最新型となる2026モデルが発表されたタイミングで振り返ってみたい。(※この記事では並列4気筒モデルに絞って紹介しています)
【1984 GSX-R(400)】初登場は国内専用機
その名前を冠したモデルの初登場は1984年。前年登場のRG250γに次ぐアルミフレーム車として登場した400ccスポーツ・GSX-R(400)だった。スタイルはスズキの耐久レーサー・GS1000Rを徹底コピーしたもので、同じくGPレーサーのスタイルを投影したRG250ガンマと併せて「レーサーレプリカ」というジャンルを確立。乾燥179kgの超軽量車体にGSX400FW用の水冷4気筒をリファインしたエンジンを搭載し、ツインバレル(1つのキャブに2つのスロットルを持つ)のキャブレターも
特徴だった。
ちなみに正式車名は排気量表記の付かない「GSX-R」だが、1985年に750、1987年に当時のシリーズ末弟となるGSX-R250が登場すると、1988年の3型で「GSX-R400」へと改められている。

【主要諸元】水冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 398cc 59ps/11000rpm 4.0kg-m/9000rpm 車重152㎏(乾燥) タイヤF=100/90-16 R=110/90-18
【1985 GSX-R750】栄光の油冷エンジンを搭載した初モデル
名機の誉れ高き油冷エンジンの搭載初号機がGSX-R750。航空機エンジンに着想を得た、エンジンオイルで燃焼室を冷却する油冷エンジンに加え、1983年のRG250ガンマ、1984年のGSX-Rに次ぐアルミフレームの採用で、当時の750ccクラスの平均を20㎏以上も下回る乾燥車重・179㎏を達成。
国内外のプロダクションレースのトップカテゴリーが1000cc→750ccへと変更されて以来、苦戦を強いられていたスズキの渾身作で、ヨシムラの手により1985〜87年の
全日本TT-F1クラスを3連覇。この油冷機の成功がGSX-Rブランドを確立させたと言っていい。
ちなみに1984年の400は日本専用車だったため、世界的に見れば「GSX-R」という車名の初登場はこの1985年となる。スズキもこの年からカウントして「40周年」を謳っているようだ。

【主要諸元(国内仕様)】油冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 749cc 77ps/9500rpm 6.4kg-m/8000rpm 車重179㎏(乾燥) タイヤF=110/80-18 R=140/70-18
【1986 GSX-R1100】世界最速を狙ったフラッグシップ
スズキのフラッグシップとして、750の翌年に誕生したのが1052ccの油冷エンジンを搭載する1100。一見すると750と同じに見えるアルミフレームはひとまわり太い角パイプを用いて剛性を高めており、
リヤタイヤもワンサイズ太い。その上でライポジをやや快適方向に振るなど、レーサーレプリカのルックスをキープしながら旗艦らしくツアラー能力も高めている。とはいえ乾燥重量197㎏という当時の750ccクラスと同等の超軽量車体に、130psの最高出力で世界最速マシンとして君臨した。

【主要諸元】油冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 1052cc 130ps/9500rpm 10.3kg-m/8500rpm 車重197㎏(乾燥) タイヤF=110/80VR18 R=150/70VR18
【1987 GSX-R250】シリーズ化を図ったファミリー末弟
400〜750〜1100とシリーズ化してきたGSX-Rシリーズの末弟として登場。兄貴分とはやや異なる、連続感のあるエアロフォルムが特徴で、乾燥138kgの車体に45psを発揮する水冷4気筒を搭載。キャブレターは初代400同様のツインバレル型。フレームはダブルクレードルながらスチール製で、前後タイヤサイズは17インチを採用する。

【主要諸元】水冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 248cc 45ps/14500rpm 2.5kg-m/10500rpm 車重138㎏(乾燥) タイヤF=100/80-17 R=130/70-17
【1988 GSX-R750】戦闘力向上を目指して高回転化
初のフルモデルチェンジを敢行。アルミ製ダブルクレードルフレームは剛性を60%以上も高めた新作となり、エンジンもより高回転型を目指してショートストローク化(70mm×48.7mm→73mm×44.7mm)。ホイールサイズも前後18→17インチ化するなど、レースでの戦闘力向上を目指して細部まで熟成される。1989年にはホンダRC30、ヤマハOW01に対抗するレース用ホモロゲーションモデル・GSX-R750Rが登場。さらに1990年にはそのノウハウを注いだエンジンを搭載し、倒立フォークを採用するなど進化を続けた。

【主要諸元(国内仕様)】油冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 748cc 77ps/9500rpm 6.8kg-m/7000rpm 車重195㎏(乾燥) タイヤF=120/70R17 R=160/60R17
【1989 GSX-R1100】排気量アップ&近代的シャシーに
前年に登場した750の後を追うようにフルモデルチェンジ。デザインや車体の基本は750に倣うが、エンジンはボア×ストロークを共に拡大し、排気量は先代の1052ccから1127ccへとアップ。出力の向上に合わせてフレーム剛性は25%高められ、湾曲型オイルクーラーの採用で冷却効率も高めた。タイヤ径も先代の前後18→17インチとなるなど近代化されている。2本出しマフラーの採用などで車重はやや増加した。

【主要諸元】油冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 1127cc 143ps/9500rpm 11.9kg-m/7250rpm 車重210㎏(乾燥) タイヤF=120/70ZR17 R=160/60ZR17
【1992 GSXーR750】水冷化によりライバルを追撃
ライバルモデルの台頭により、徐々に戦闘力を失っていった油冷エンジンをとうとう刷新。新開発の水冷4気筒を搭載してフルモデルチェンジ。フレームもダブルクレードル形状をキープしながら極太の五角断面パイプを用いてねじり剛性を24%向上。フルアジャスタブルの倒立フォークなど、足回りにもレース仕様のノウハウを投入した。

【主要諸元(国内仕様)】水冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 749cc 77ps/9500rpm 6.8kg-m/7000rpm 車重208㎏(乾燥) タイヤF=120/70R17 R=170/60R17
【1993 GSX-R1100】水冷化で国産最強の155psを発揮
前年の750と同様、GSX-Rの特徴だった油冷エンジンを水冷の新エンジンへとチェンジ。ボア×ストロークをロングストローク傾向に改めて排気量は1074ccとややダウンするも、最高出力は前年モデル+10psの155psに到達。この数値は当時のライバル・カワサキZZ-R1100の147psを上回り、当時の国産最強を誇った。フレームは750同様、ダブルクレードル形を維持しながら新設計。フロントキャリパーを対向6ポッドとするなど、フラッグシップらしい進化を遂げている。

【主要諸元】水冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 1074cc 155ps/10000rpm 11.7kg-m/9000rpm 車重231㎏(乾燥) タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17
【1996 GSX-R750】車体もエンジンも革新的構造に
ダブルクレードルフレームを完全新設計のツインスパーフレームへと変更。さらに車体ディメンションもGP500のワークスマシン・RGV-Γ500を手本にホイールベースをクラス最短の1400mmに定め、水冷4気筒エンジンも前後長を極限まで短縮した完全新設計に。エンジンの主要3軸(クランクシャフト/メインシャフト/カウンターシャフト)を同一面上に並べず、三角形に配置する構成は近代スーパースポーツの定石だが、このレイアウトを初めて採用した機種でもある。徹底的な軽量化で初代と同じ乾燥179kgを実現したのもポイントだ。
1998年には燃料供給をキャブレター→FIへと変更。また、1997年には750の基本構成を踏襲しつつ、スーパースポーツ600クラス参戦のベースモデルとして開発されたGSX-R600も登場している。

【主要諸元(国内仕様)】水冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ 749cc 77ps/10000rpm 6.7kg-m/7500rpm 車重179㎏(乾燥) タイヤF=120/70ZR17 R=190/50ZR17
【2000 GSX-R750】徹底的な軽量化で戦闘力向上
軽量化を主眼にフルモデルチェンジ。エンジンはまたもや新設計となり、シリンダーとアッパークランクケースの一体化などで4kg軽量化。フレームも新設計となり、スイングアームを延長しつつもホイールベースは1400mmと前モデルと同値に抑える。その他外装部品などの徹底的な軽量化で乾燥重量166㎏を達成した。このモデルは翌年登場するGSX-R600、そして初代GSX-R1000とも基本設計を共有する。

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