1980年代のヤマハ製WGP(ロードレース世界選手権)マシン「YZR500」を彷彿とさせ、新機軸のカフェレーサーとして注目なのが「XSR900GP」です。
ヤマハが「スポーツヘリテージ」と呼ぶ「XSR」シリーズに属するのがこのモデル。シリーズのラインアップには、125ccの「XSR125」、700ccの「XSR700」、そしてXSR900GPのベースとなった900ccの「XSR900」を用意。いずれも、往年の名車をオマージュしたスタイルと、最新の装備をマッチさせていることがポイントです。
そんなXSRシリーズのなかで、唯一のカウリング装着モデルがXSR900GP。大きな特徴は、大型クリアスクリーンとナックルバイザーを装備したフロントマスク。とくに別体式のナックルバイザーは、まさに1980年代のYZR500が持つスタイルを彷彿させるものとなっています。
また、メインカラーとなる「シルキーホワイト(ホワイト×レッド)」仕様には、イエローのゼッケンプレートも採用。これは、YZR500が参戦した世界最高峰2輪車レース「WGP(現在のMotoGP)」の頂点、「GP500ccクラス」に出場するマシンにだけ与えられたものをモチーフとしています。
さらに、もともとのバーハンドルをセパレート式ハンドルに変更。ハンドルをマウントするトップブリッジ上面部分など、コックピットまわりのボルトも新デザインとし、質感の向上も図っています。
エンジンには、XSR900と同じ888cc・直列3気筒を搭載。最高出力88kW(120PS)/10000rpm、最大トルク93N・m(9.5kgf・m)/7000rpmを発揮するパワーユニットは、コンパクトな燃焼室などにより燃焼効率を上げることで、高いトルク性能を実現します。
また、独自の走行支援テクノロジー「YRC(ヤマハ・ライド・コントロール)」も搭載。ワインディングやサーキットに適した「スポーツ」、市街地走行に適した「ストリート」、雨天時などで悪化した路面状況に適した「レイン」といった3つの走行モードに加え、各種設定を任意に設定できる2タイプの「カスタム」モードも用意。ライダーが好みや路面状況に応じて、エンジンの出力特性や各種電子デバイスの介入度を選択することを可能とします。
ほかにも、メーターに視認性を配慮した5インチTFTディスプレイを採用。表示パターンは、専用のアナログ風タコメーターを含む4種から選択可能です。さらに専用アプリ「Y-connect(Yamaha Motorcycle Connect)」をインストールしたスマートフォンとバイクを接続する機能も装備。電話やメールの着信通知など、さまざまな情報や画像をメーターに表示できるなど、スマホと連携した多様な機能を使うこともできます。
ボディカラーは、前述のシルキーホワイトのほか、「パステルダークグレー」の2色を設定。価格(税込み)は143万円です。
ホンダ・GB350シリーズ
ホンダのGB350シリーズは、スタンダードの「GB350」、スポーティ仕様の「GB350S」、よりクラシカルな雰囲気の「GB350C」といった3タイプをラインアップし、いずれも高い人気を誇る空冷シングルスポーツです。
元々ホンダの「GB」というモデルは、1983年に登場した「GB250クラブマン」が元祖です。249cc・空冷単気筒エンジンを搭載したこのモデルは、1960年代に英国など世界のレースで活躍したシングルレーサー風のスポーティでクラシカルなフォルムを採用。軽快で扱いやすい乗り味などが幅広い層に支持され、1997年まで販売されたロングセラーモデルでした。
1985年には、400cc版の「GB400ツーリストトロフィー」や限定仕様の「GB400ツーリストトロフィーMkII」、500cc版の「GB500ツーリストトロフィー」なども販売。いずれも、シリーズ共通のクラシカルな外装とスポーティなフォルムが人気を博したモデル群でした。
そんなGBのネーミングを復活させたのが、2021年に登場したGB350です。パワーユニットには、存在感のある直立シリンダーの348cc・OHC空冷シングルを採用し、力強いトルク感と味わいある走りを実現しています。
スタイリングでは、燃料タンクやサイドカバーに、丸味を帯びた温かみのある形状を採用。さらに、金属ながら表情豊かな造形としたクランクケースカバーやシリンダーヘッドなどにより、高い質感やトラディショナルな外観も演出します。
足まわりではGB350とGB350Cがフロント19インチ、リア18インチのホイールを採用。スポーティ仕様のGB350Sは、リアホイールを17インチに小径化し、ワイドなラジアルタイヤをマッチングすることで、より俊敏な走りを実現しています。
また、2024年10月に登場した派生モデルのGB350Cでは、重厚感あるフロントフォークカバーの採用などで、よりレトロな雰囲気をアップしていることがポイントです。車体は、ヘッドライトカバーなどのフロント部から、燃料タンク、サイドカバー、セパレートタイプのシートへと、リアにかけてなだらかに傾斜したプロポーションへ変更。加えて、前後フェンダーの大型化や、水平基調のキャプトンタイプマフラーなどの採用により、よりロー&ワイドを強調したスタイルを実現しています。
なお、GB350とGB350Sは、2025年8月28日に一部仕様変更モデルが登場。新型のメーターは文字盤のデザインを変更すると共に、装飾リングをメッキ化し上質感も演出。また、ヘッドライトの照射範囲も改善し、夜間時の視認性をより配慮した特性にするなどのアップデートを行っています。
さらに、GB350Cも、2025年10月31日に一部仕様変更モデルを発売予定。スタンダードやSと同じく、ヘッドライトの照射範囲を夜間時の視認性により配慮した特性に変更したほか、カラーリングの変更も実施されます。
価格(税込み)は、スタンダードのGB350が64万9000円~67万1000円、スポーティ仕様のGB350Sが69万3000円~71万5000円、GB350Cは2025年10月31日発売予定の一部仕様変更モデルで71万5000円です。

GB350Cはフロントフォークカバーの採用などで、よりレトロな雰囲気をアップ。写真は、2025年10月31日発売予定の最新モデル。ヘッドライト照射範囲を夜間時の視認性により配慮した特性にするなどの一部変更を受けている
カワサキ・メグロS1&W230
232cc・空冷単気筒エンジンを搭載する「メグロS1」と、その兄弟車の「W230」も、カワサキが誇る人気ネオクラシックモデルです。
メグロS1の源流は、かつて存在した2輪車メーカー「目黒製作所」です。1924年に創業した企業で、第2次世界大戦前から戦後直後にかけて、数多くの高性能モデルをリリースし一斉を風靡しました。とくに500ccや650ccなどの大排気量モデルに定評がありましたが、1950年代後半以降、小排気量モデルの人気上昇に対応できず、業績が悪化。1964年にはカワサキ(当時の川崎航空機工業)に吸収合併されました。
そして、メグロS1は、合併後の1964年に発売された「250メグロSG」をオマージュしたバイク。カワサキも、このモデルを「正統な後継車」と発表していますから、まさに昭和のモデルを復刻させた最新のオートバイがメグロS1だといえます。
ちなみに、カワサキは、従来、773cc・空冷2気筒エンジンを搭載する「メグロK3」を販売。そのため、メグロS1は、その弟分で、メグロ・シリーズに属する軽二輪タイプということになります。
また、メグロS1の兄弟車となるW230は、カワサキが1966年に発売した「650-W1」、通称「W1(ダブワン)」の車名を冠した軽二輪モデルです。624cc・並列2気筒、バーチカルツインの愛称を持つエンジンを搭載したW1は、当時のバイクとしてはかなり高性能だったことで、世界的に大ヒットを記録。「大排気量の高性能モデル」という、後に続くカワサキ製オートバイのイメージを生み出した名車です。
ちなみに、このW1は、前述した目黒製作所との合併後、1965年に発売した「500メグロK2」がベースだといわれています。つまり、メグロは、カワサキ「W伝説」誕生のきっかけとなったといえるのです。そして、メグロS1とW230が登場した2024年は、目黒製作所の創立100周年という記念すべき年。これら2タイプは、こうした背景から生まれたモデルなのです。


















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