【試乗】「LMW」第一弾のトリシティ125が新スタイルに! ナビアプリと連携し、利便性も向上!!

【試乗】「LMW」第一弾のトリシティ125が新スタイルに! ナビアプリと連携し、利便性も向上!!

 ヤマハは、車輪および車体がリーン(傾斜)して旋回する3輪以上のモビリティを「LMW(Leaning Multi Wheel)」と呼んでいて、その「LMW」第一弾として2014年に登場したのが「トリシティ125」だ。その「トリシティ125」がスタイリングを変更し、スマホと連携機能を持つ4.2インチTFTディスプレイなど装備してモデルチェンジ。

文:小川浩康 写真:コイズミユウコ

 
 
 

「SUV」テイストを取り入れた新スタイリング

バイクユーザーに加えて、「二輪車に興味がない人」を想定し、安定性の高い「LMW」として2014年に初登場した「トリシティ125」。2018年には、好燃費と走る楽しさを両立したヤマハ独自の「BLUE COREエンジン」を新設計フレームに搭載してフルモデルチェンジ。2023年は「BLUE COREエンジン」を最新排ガス規制に適合させ、静粛かつ素早くエンジン始動する「SMG(Smart Motor Generator)」、スマホと連携する「Y-Connect 」に対応するなど装備を充実。フレームと前後サスも見直され、ホイールベースも60mm延長し、操縦性と接地感が改善されている。

 2025年9月にはスタイリングを変更。ルーフレールをイメージした新形状タンデムグリップ、穴開け加工なしで純正トップケース装着に対応したリヤキャリアは、4輪の「SUV」をデザインモチーフとし、フロントフェイスは「トリシティ300」から継承した「Yモチーフ」を採用。機能性重視のシティコミューターだけではない、走る楽しさが感じられるスポーティさも加味した「クロスオーバーコミューター」を具現化したスタイリングとなっている。

Y-Connect 」と連携機能を持つディスプレイは、4.2インチTFTを新たに採用。着信通知、メンテナンス状況の管理などに加えて、進行方向を矢印アイコンや距離などで示す「Turn by Turn表示」が可能となった。充電ソケットはUSB Type-Cを標準装備し、シート下収納にLED照明も設置された。なお、「トリシティ155」に新採用となった「トラクションコントロール」と、急ブレーキ時に前後ウインカーを点滅させる「エマージェンシーストップシグナル」は、「トリシティ125」は未装備となった。



フロアからシートまでを「逆台形シルエット」として安定感を出し、「水平基調」を織り込みトリシティらしさも持つ新スタイリング。画像のマットライトグリーンの他、ホワイト、マットグレーの全3色。



トリシティシリーズらしさを表す「Yモチーフ」を新たに採用したフロントフェイス。ハイ・ロー別灯ヘッドランプ、ポジションランプ、ウインカーはLED。



「NMAX」と同形状のテールランプを新採用しているが、リヤカウルは「トリシティ125」オリジナル形状でエッジの効いたデザイン。



新たに装備された4.2インチTFTディスプレイ。アナログ風タコメーターと速度計を中央に配置した表示テーマ。ホワイト背景は日中で目視しやすい。



夜間で目視しやすいようにブラック背景も設定。自動で背景色を切り替えるオート設定と、どちらかの背景色に固定する設定とを選択できる。



タコメーターをバー状に表示するテーマも選択できる。この表示テーマも、背景色をホワイトとブラックに変更できる。



Y-Connect」をインストールしたスマホと連携し、SNSや通話通知を表示。さらにGoogle Mapのナビ機能と連携し、目的地を矢印アイコンで表示する「Turn by Turn表示」機能も新たに搭載。利便性を向上している。



ディスプレイの表示切り替えや各種設定変更を行なうスイッチボックス。初見で分かりやすく配置され、節度感があって操作しやすい。



旧モデルのブルースモークからブラックスモークに変更されたスクリーン。フロントまわりのシャープなイメージを強調している。



前後方向に余裕があり、着座位置を変えてライディングポジション調整もしやすいシート。座り心地も快適で長時間でも尻が痛くなりにくい。



シート下収納の容量は約23.5Lで、今回着用したフルフェイスヘルメットも収納できた。「トリシティ155」と同じLED照明も装備された。



握りやすい形状のタンデムグリップは「SUV」のルーフレールをイメージしている。リヤキャリアは穴開け加工せずに純正トップケースを装着できる。



ポケットは耐荷重0.15kgだが、旧モデルより容量を拡大している。コンビニフックは耐荷重1.0kg、電源ソケットはUSB Type-Cを新たに装備。スマートキーを標準装備。

 
 
 

トリシティ125の足着き性をチェック



ライダーの身長は172cm、シート高は770mm。シューズは26.5cmだが、足を置く位置はほぼ固定される。足着き性は良好だ。



フロア部の幅は広すぎず、両足の足裏まで着きやすい。停車時の安定性も高く、小柄なライダーでも足着き性に不安を感じにくい。



旧モデルの「トリシティ125」のシート高も770mm。車体デザインは変わったが、フロアの広さとシート形状はほぼ変わらない。



こちらも旧モデルの「トリシティ125」。良好な足着き性を確立しているのも、「トリシティ125」の美点と言える。

 
 

軽快な加速性でシティコミューターとして扱いやすい



前二輪の左右で異なる傾斜角を実現し、左右輪の軌道が同心円となるヤマハ独自の「アッカーマン・ジオメトリー」を採用。その前二輪と車体の傾きを「パラレログラムリンク」が同調させることで、違和感のないスムーズなコーナリングを楽しめる。

 前二輪という構造もあって、「トリシティ125」の車重は173kgと、原二クラスのコミューターとしては重め。押し引きではフロントまわりに重さがあり、最小回転半径もやや大きめに感じた。

 エンジンスターターモーターとジェネレーターを一体化した「Smart Motor Generator」のおかげでエンジン始動は静粛かつスムーズで、アイドリングは1600rpm付近で安定。遠心クラッチがミートするのが3400rpm付近で、実用的なトルクは5500rpmから立ち上がってくる。車体を共用している「トリシティ155」よりも排気量が少ない分だけ極低~低中回転域のトルクも細めだが、6000rpmで60km/hに到達する加速性はまったく同じだ。ただし、これはエンジン特性を確認するためにスロットルをゆっくり開けていった場合で、実際の交通の流れにのって発進すると、スロットル開度も自然と大きくなる。そうした通常の発進ではアイドリングから6000rpmまでスムーズに上昇し、押し引きで感じた重さもなく交通の流れをリードできるほどストレスのない加速も発揮する。可変バルブ機構「VVA」が作動する高回転域まで回さなくても実用的な走行性能を発揮するので、市街地走行で扱いやすさが感じられる。

 「トリシティ155」との違いをはっきり体感したのは、再加速だった。走行中に前走車に追いついてスロットルを戻し、そこから前走車が加速していくような状況で、その流れにのろうと再びスロットルを開けると、一瞬間があってからクラッチミートするように感じられた。「トリシティ155」は4000rpmで実用トルクが立ち上がるのに対し、「トリシティ125」は5500rpm。その回転域に至る間をタイムラグとして感じたのだろう。とはいえ、その間はほんの一瞬で、加速性も充分。また、ブレーキは左側レバー(後輪)を操作すると前輪(右側レバー)も連動する「ユニファイドブレーキシステム」を装備。レバー操作のはじめにガツンと制動力が立ち上がるのではなく、レバーを握り込むほどに制動力が強くなる。制動力をコントロールしやすく、安心感がある。



油圧式カムチェーンテンショナーを新たに採用し、フリクションロスを低減した「BLUE COREエンジン」。主要機関は前モデルを踏襲し、高い信頼性を実現している。



エキパイにO2センサーを追加し、インジェクションセッティングも最適化している。エキパイのパイプ径は「トリシティ155」より細くなっている。

LMWならではの抜群の安定性! スポーティな走りも楽しめる



踏み切りやわだちなど前輪が振られやすい路面でも高い直進性を発揮する「トリシティ125」。二輪ビギナーも安心感を得られるのがLMWの特徴だ。

 押し引きでは重さを感じたが、少しでも車体が前進すると、乗り味は軽快に感じられる。ハンドリングにクセがなくて車体を倒し込みやすく、それでいて前二輪のグリップが失われる感じも皆無なので、狙ったラインでコーナリングがしやすい。この前二輪のグリップ力の高さもLMWの特徴で、車体を直立させた状態では抜群の直進安定性も発揮する。通常のバイクの場合、直進性と旋回性はトレードオフになることが多いが、LMWはその二つの特性を兼ね備えていて、さまざまな場面で高い安定性が感じられる。

 さらに、左右で独立したフロントサスを装備していることもあり、交通量の多い舗装路にできるわだち、段差のある踏み切り、滑りやすい石畳やダートなどで左右輪それぞれに衝撃を吸収してハンドルが振られるのを低減し、マシン挙動に安定性が発揮される。また、前後サスのストローク感は少ないが衝撃吸収性は良好で、シートのクッション性もよく、スムーズな乗り心地になっている。悪路や雨天時の走破性の高さと乗り心地のよさも、二輪ビギナーには安心感となるはずだ。

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