「毎日乗れるスーパーバイク」をコンセプトとして開発された「ヤマハYZF-R25」。スポーティさと扱いやすさを兼ね備えた走行性能が評価され、10年を超えるロングセラーモデルとなっている。その「YZF-R25」がアシスト&スリッパークラッチ、スマホ専用アプリ「Y-Connect(YAMAHA Motorcycle Connect)」への対応、新デザインのフロントカウルなど装備を充実。さらに新色「マットパールホワイト」が牽引役となり、販売台数は前年比190%超えという大人気モデルとなっている。
「YZF-Rシリーズ」のDNAを継承しつつ、利便性を高めた

LEDポジションランプを新デザインとして、「YZF-Rシリーズ」らしさを象徴するM字ダクト内にプロジェクタータイプのヘッドランプを設置した新型フロントカウルを採用。画像のマットパールホワイトに加え、ブルー、マットダークグレーの全3色。
ヤマハスポーツモデルの代名詞「YZF-Rシリーズ」の技術をベースとした走りと、日常での扱いやすさを調和させたグローバルモデルとして開発された「YZF-R25」。新設計の直列2気筒DOHC4バルブエンジンを新設計ダイヤモンド型フレームに搭載し、2014年に国内モデルとして初登場。2019年に倒立フロントサスペンションを採用し、フロントカウルやタンク&タンクカバーを新デザインへと変更した。
2025年モデルではクラッチレバー形状と位置を変更し、アシスト&スリッパークラッチを装備することでクラッチレバーの操作性が軽くなり、シフトダウン時の余剰トルクも軽減。USB Type-Aソケットを装備し、スマホ専用アプリ「Y-Connect 」にも対応。さらにシート幅とサイドカバーをスリムな形状として、足の着きやすさを改善するなど、ライディング中の扱いやすさと利便性を向上している。
また、LEDポジションランプのデザインを「睨み目2眼」の4エレメントタイプに変更し、ヘッドランプもプロジェクタータイプに変更して「M字ダクト」内に設置。フロントカウルは、「YZF-Rシリーズ」のDNAを継承したレーシーなスタイルとなったのが特徴だ。

スマホ専用アプリ「Y-Connect」と連携し、着信・SNS通知、電池残量をメーターに表示。スマホ側ではメンテナンス時期の管理などが行なえる。
YZF-R25の足着き性をチェック
中庸さがライディングのしやすさになっている
「YZF-R25」は、排気量を320ccに拡大した「YZF-R3」と車体を共用していて、車重も169kgで同一となっている。しかし、車体はコンパクトで押し引きや取りまわしがしやすく、重さはなく軽く感じられた。ハンドルはセパレートタイプだが前傾姿勢はそれほどキツくなく、前輪に自然と荷重がかかってハンドリングにしっとりした落ち着きが感じられる。着座位置の自由度もあり、好みのライディングポジションをとりやすいのも、ビギナーや小柄なライダーの安心感となるだろう。個人的にはヒザの曲がりに少し窮屈さを感じたけれど、その半面、タイトなライディングポジションが決まりやすく、車体との一体感が得られるのが好印象だった。
アイドリングは1400rpm付近で、3000rpmからトルクが立ち上がり、4000rpmで車体をしっかりと加速させる実用的なトルクが出てくる。そこから6000rpmまで回転はスムーズに上昇していき、交通の流れをリードできる加速力を発揮する。とくに5000~6000rpmでトルクの厚みが増してきて、スロットルに対するレスポンスもシャープになり、スポーティな走りを楽しめる。この時、回転を上げるほどトルクの厚みが増していき、車速もスルスルと上昇していく。ちなみに「YZF-R3」は4000rpmをキープした状態でもシャープな加速力を発揮したが、「YZF-R25」はそれよりも高回転域まで回すことになり、その回転上昇のタイムラグが加速力の差として感じられた。6000rpm以上の加速も「YZF-R3」のほうが伸びがあり、瞬発力と高速巡航では排気量の差を如実に感じる。
とは言え「YZF-R25」の加速力も必要充分以上あり、市街地でストレスを感じることはない。スロットル操作に対するレスポンスのマイルドさと、トルク変動の穏やかさは、多少ラフなスロットル操作をしてもマシン挙動の乱れにくさになっていて、それがスロットルの開けやすさにもなっている。さらに、アシスト&スリッパークラッチがスロットルオフ時の過度なトルクを軽減し、新形状クラッチレバーも旧モデルから操作荷重を17%低減。スロットルの開けやすさとクラッチレバー操作の軽さが、ライディング中の車体を軽く感じさせてくれて、乗りやすさにもなっている。
軽量コンパクトな車体は倒し込みもしやすく、ハンドリングもクセがなく前輪のグリップが分かりやすい。狙ったラインをトレースしやすいから、市街地のコーナーや右折時などの常識的な速度域でもマシンコントロールする楽しさが感じられる。これは「YZF-R25」の扱いやすさとも言えるだろう。
スポーツ性と利便性が均衡した、国内向け「YZF-Rシリーズ」のスタンダード的モデル
今回はタンデム走行も行なったが、2名乗車時でもリヤサスペンションが沈み込みすぎず、前輪の接地感も損なわれなかった。さすがに急加速や急ブレーキといった操作はマシン挙動を乱す原因となるが、前後ブレーキの効きは充分で、制動力のコントロールもしやすかった。また、低中回転域でのトルクが粘り、発進時や渋滞時の低速走行でもエンストしそうな気配も感じなかった。
タンデム走行時に快適な乗り心地を実現している前後サスだが、1名乗車時では衝撃を感じることもあった。段差などの荒れた路面で前後サスは底突きせずにストロークの途中で踏ん張るのだが、そのストローク途中で受けた衝撃が手に伝わってきたからだ。ただし、状態のいい路面ではフラットなマシン姿勢をキープして乗り心地は良好だった。また、100km/h巡航時は6速で7500rpmくらいで、1万4000rpmからのレッドゾーンまで余裕がある。その際にハンドルグリップに少し振動を感じるが、耐えられないレベルではなく、カウルが整流効果を発揮するので、高速巡航もこなせる。
筆者はこれまでに多くの「YZF-Rシリーズ」を試乗してきたが、軽量な車体でマシンコントロールを楽しめる「YZF-R125/R15」、取りまわしやすい車格と扱いやすいパワーの「YZF-R25/R3」、ツーリングで余裕を感じる「YZF-R7」、本格的なサーキット走行に対応した「YZF-R1/R9」という感じで、ザックリと分類していた。そして購入候補としては、軽量かつパワフルでマシンコントロールを存分に楽しめる「YZF-R15」か、レスポンスと加速がシャープでよりスポーティな走りを楽しめる「YZF-R3」の2択だと思っていた。
ただ今回改めて「YZF-R25」を試乗してみると、「YZF-Rシリーズ」らしいスポーティな走りを楽しめつつ、市街地やタンデム走行といった日常の足としての扱いやすさと高速道路やツーリングでの乗りやすさも兼ね備えているのが再確認できた。軽さや加速性で突出したところはないけれど、1台で何でもこなせるオールラウンドさがあり、維持費やランニングコストなども考慮すると、「YZF-R25」は国内での使用状況にベストマッチだと思った。新色の「マットパールホワイト」は、「日本流行色協会」主催の「オートカラーアウォード2025」でグランプリを受賞し、前年比190%の販売実績に牽引役にもなっている。2025年型「YZF-R25」は、記憶に残るモデルとなりそうだ。
















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