古のTT・F1マシンを彷彿とさせる、ネオレトロレーサーレプリカGS1200SS

古のTT・F1マシンを彷彿とさせる、ネオレトロレーサーレプリカGS1200SS

取材協力:バイク王つくば絶版車館

 「男のバイク。」という、現代では少々使いにくくなってしまったキャッチフレーズと共に姿を現したスズキGS1200SSは、TT・F1クラスで活躍したヨシムラGS1000Rをイメージしたネオレトロスポーツバイクだった。

 
文/後藤秀之 Webikeプラス
 

スズキとヨシムラ、そのコンビネーションが生み出した伝説のGS1000R

 スズキにとって「GS」という名前はトップエンドのバイクに与えられる名称であり、その後4バルブ化されて「GSX」という名称へとそれは引き継がれた。

 「GS」の名前を一躍有名にしたのは、レーシングコンストラクターヨシムラが手がけたGS1000Rの存在が大きい。スズキのセミワークス的な立場で活動していたヨシムラは、スズキ製のF1フレームに天井知らずと呼ばれたヨシムラチューンのDOHC2バルブのGS1000ベースのエンジンを搭載。180kg前後の重量の車体に、130PSオーバーのエンジンを搭載したGS1000Rは鈴鹿の8耐やボルドール24時間耐久などのTT・F1レースで数々の勝利を挙げた。1983年にはモリワキ製のアルミフレームに4バルブのGSX1000Sベースのエンジンを搭載したマシンで1983年の鈴鹿8耐へとエントリー、戦績は振るわなかったがこのマシンは後のGSX-R750/1100へとつながっていく。

 1985年のデビュー以来丸目ニ灯のヘッドライトはGSX-Rシリーズの伝統であったが、少しずつそのデザインは変化していき、2000年にはそのデザインは完全に新しいものへと移行した。しかし、1980年代のレーサーレプリカブームに青春を送ったライダーにとって、丸目ニ灯の耐久レーサーデザインは忘れられぬものであり、スズキのデザイナーの中にもそんな思いを抱えた人がいたのだろう。

 

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ヨシムラGS1000Rのベースとなったのは、DOHC2バルブエンジンを搭載したGS1000だ。

 

 

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DOHC4バルブエンジンを搭載したGSX1100E。TT・F1用としては1000ccのGSX1000Sカタナのエンジンが使用された。

 

 

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アルミフレームに油冷エンジンを搭載したGSX-R1100は、それまでの大型バイクの常識を覆した本格的なレーサーレプリカだった。

 

 

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GSF1200に搭載された1200cc化されたGSX-R1100系のエンジンは、GS1200SSへと受け継がれていく。

 

 

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GS1200SSのベースとなった言えるのが、イナズマ1200。スチール製のダブルクレードルフレームを持つ、ネオレトロ系のネイキッドだ。

 

 

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バンディット1200はGSF1200のモデルチェンジ版と言え、GS1200SSとギア比が共通になっている。

 

 
 
 

GS1000Rのイメージを、21世紀に復活させたGS1200SS

 2001年、スズキから登場したGS1200SSは、そんなレプレカ世代の興味を引くデザインを持っていた。GSF1200やイナズマ1200、バンディット1200などに搭載されていた油冷の4バルブエンジンをスチール製のダブルクレージルフレームに搭載し、丸目ニ灯のヘッドライトとシングルシート風のシートカウルを持つこのバイクは、GS1000Rのレプリカ的に仕上げられていた。エンジンが4バルブなのに「GS」と名付けられたことも、GS1000Rを意識していたと考えられるポイントだ。

 GS1200SSが登場した時のキャッチコピーは「男のバイク。」であり、乗り手を選ぶセパレートハンドルや無骨な1200ccの油冷エンジン、80年代のレーシングバイクを再現したそのデザインや黒一色のカラーリングが醸し出すその雰囲気はまさに男のバイクそのものの姿であった。追加された赤と黒のツートンカラーは完全にヨシムラカラーであり、そのカタログには「甦るレーシングスピリッツ」というキャッチコピーと共にサーキットを駆けるGS1000Rの写真が使用されていた。2003年モデルではフューエルタンクの形状を変更して、カラーはスズキのワークスカラーと言える青と白のツートンを採用、デジタル表示だったスピードメーターをアナログ化するなどより80年代レーサーのイメージを強めたが、残念ながらこれが最終モデルとなった。

 

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全身ブラックアウトされ、まさに「男のバイク。」といった出立ちのGS1200SSの初代モデル。

 

 

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GS1200SSにはこの赤と黒のヨシムラカラーがマッチする。中古車市場を見ても、このカラーリングだけが特出して価格が上がっている。

 

 

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ツインショックとシングルシート風のシートカウルが、GS1000Rを思い起こさせるリアビュー。

 

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セパレートハンドルを採用しているが、上半身は今時のSSよりも起きており、膝の曲がりもそこまできつくない。

 

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身長170cm、体重65kgのライダーが跨ると、両足のかかとがが軽く浮く。足つきが良いとは言えないが、不安を感じるレベルではない。

 

マニアックな作りは、近年再評価されつつある

 GS1200SSはカウル類は専用にデザインされたものであるが、車体の基本は同じ油冷エンジンを積むイナズマ1200がベースとなっている。いわゆるネオレトロバイクであるイナズマをベースに、レトロレーサーのレプリカを作るというのはある意味正しかったのかもしれない。その作り方はまさに80年代のレーサーであり、デザインはよくまとまっている。ヘッドライトはGS1000Rが右寄りに丸型ライトを配置した一灯タイプだったのに対して、丸目ニ灯になっている。GSX-R750/1100が丸目ニ灯をセンター寄りに配置していたのに対して、GS1200SSは左右の少し離れた位置にライトが配置されているのでイメージはかなり異なる。このあたりは好き嫌いの範疇になってしまうのだろうが、筆者的には思い切ってGS1000Rのように一灯タイプにしてしまった方が良かったのでは無いかという気もする。

 エンジンは先にも触れたようにイナズマ1200とほぼ同様の、油冷式DOHC4バルブ直列4気筒1156ccで、最高出力74k・W(100PS)/8000rpm、最大トルク94N・m(9.6kgm)/6500rpmというスペックにチューンされている。ちなみにイナズマ1200は最高出力74k・W(100PS)/8500rpm、最大トルク10kgm/4500rpm、バンディット1200は最高出力74k・W(100PS)/8500rpm、最大トルク93N・m(9.5)kgm/6500rpmと兄弟社ではあるがチューニングは微妙に異なっている。ミッションは5速であり、ギア比はバンディット1200と同じである。

 足回りもタイヤサイズがイナズマ1200と同じであることを考えるとイナズマベースと考えられるが、フロントのブレーキキャリパーに6ポットが採用されるなど変更点は見受けられる。フロントフォーク径は43mmとイナズマと同径、リアサスペンションはアルミ製の角形スイングアーム+ツインショックで構成される。

 ポジションはセパレートハンドルを採用しているものの最新のSSほどきついものではなく、思っているよりも普通に乗れるというのもこのバイクの魅力のひとつで、肩肘張らずに付き合えるというバイクでもある。新車販売時には最新SSの影に隠れて早期に販売終了してしまったGS1200SSだが、近年そのマニアックさが再評価され、生産台数も少ないため相場は鰻登りという状況になっている。

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丸目ニ灯タイプのヘッドライトは、GSX-Rと違って左右にある程度距離がある。アッパーカウルは幅と高さがあり、防風性は高い。

 

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初期モデルは、デジタル式のスピードメーターとアナログ式のタコメーターの組み合わせ。後期型ではスピードメーターがアナログ式に変更されている。

 

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パワーモードなどはない時代のマシンなので、スイッチ類も最低限となる。クラッチは油圧式なので、左側にもマスターがある。

 

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セパレートタイプのハンドルはトップブリッジの下に取り付けられているが、シートの位置との兼ね合いによって低すぎない設定。

 

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フューエルリッド周りは、耐久レーサーのクイックチャージャータイプをイメージさせる。初期型のタンク容量は20L、タンク形状が変更された後期型は18Lとなる。

 

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シートはしっかりとした厚みのあるものが装着される。タンデムシートカバーを取り付けると、シングルシート風のデザインが再現できる。

 

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シートカウル内に別体型のテールランプが収められており、レーサーを公道仕様にしたような印象に仕上げられている。

 

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ステップ周りは主にアルミが素材として使用されているが、ステップはラバー付きで実用性が考慮されている。

 

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細かいシリンダーのフィンは、油冷エンジンの特徴。「YOSHIMURA」のロゴは後付けされたものだが、このカラーリングには相応しい。

 

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エンジンはトルクフルで低速から扱いやすく、実用域では現行モデルに引けを取らない動力性能を発揮する。

 

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マフラーはブラックアウトされたメガホンタイプ。GS1000Rにはサイレンサー別体タイプのものが装着されていたので、よりレトロテイストが強いイメージだ。

 

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フロントブレーキは6ポットキャリパーを採用したダブルタイプで、イナズマやバンディットよりも強化されている。

 

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