ホンダ400ccV4エンジンの黄金期に活躍した、NC30型VFR400R

ホンダ400ccV4エンジンの黄金期に活躍した、NC30型VFR400R

取材協力:バイク王つくば絶版車館

 ホンダの400ccレーサーレプリカはV型エンジンのVFRと直4エンジンのCBRの2本立てであったが、主力であったのはワークスレーサーRVFの流れにあるVFRであった。今回紹介するNC30型VFR400Rは、V型エンジンを搭載した400ccクラスを代表するモデルであり、生産中止から30年以上経った今も多くのファンを持つ1台だ。

 
文/後藤秀之 Webikeプラス
 

ホンダのレース活動を象徴するV型エンジン

 NR500、NS500、NSR500、RVF750/400、そしてRCVシリーズへと続くホンダのV型エンジンは、レース切り離すことはできない。特に1980年代から1990年代にかけてはV型エンジン搭載車の活躍が目覚ましく、その技術が市販車にも数多くフィードバックされた。

 まず1982年にVT250Fが登場し、翌1983年にVF400FやMVX250Fが発売された。VT250FとVF400Fは好調な販売を続けたが、2ストロークのMVX250Fは苦戦を強いられ、販売直前まで開発の進んでいたMVX400Fの発売中止という事態を招くに至った。

 

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1983年に登場した初代NC13型VF400Fは、最高出力53PSの90度V型エンジンNC13Eをスチール製のダブルクレードルフレームに搭載していた。

 

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VF400Fよりも先に登場したVT250Fは、最高出力35PSのV2エンジンを搭載して250ccクラス最強を誇った。

 

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ワークスレーサーNS500に倣った、V型3気筒の2ストロークエンジンを搭載したMVX250F。

 

 VF400Fは1986年4月にフルモデルチェンジされ、アルミフレームを持つNC21型VFR400R/Zへと進化する。エンジンはVF400Fに搭載されていたNC13E型をベースに、カムギアトレーンの採用やクランクシャフト角の360度から180度への変更などが加えられていた。このNC21型は翌1987年2月にはNC24型へと1年経たずにフルモデルチェンジし、片持ち式スイングアーム「プロアーム」を装備したNC24型となる。このプロアームは見た目の派手さもあるが、本来はタイヤ交換をする必要のある耐久レース由来の技術であり、鈴鹿の4耐や8耐を中心とした当時の耐久レース人気の高さがうかがえる。

 

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アルミフレームを採用したNC21型VFR400Rは、NC13E型エンジンは継承しつつもカムギアトレーンを採用するなどしてブラッシュアップされた。

 

 

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NC21型のカウルレスモデルとなるのがVFR400Zで、丸型のデュアルヘッドライトを採用した斬新なデザインが目を引いた。

 

 

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NC21型をベースに、リアにプロアームを採用したNC24型VFR400R。ワークスチームであった「ロスマンズ・ホンダ」カラーを採用した特別仕様車なども設定されて人気を博した。

 

 そんなこともあり、ホンダは1987年7月にTT-F1用のホモロゲーションマシンとなるRC30型VFR750Rを発売した。148万円というその価格は当時の量産車としては最高額で、日本では1000台限定、海外向けは製造期間限定という形で販売された。各部にはワークスレーサーRVF750の技術がフィードバックされ、丸目2灯式のヘッドライトやアルミフレームにプロアームを組み合わせた車体は耐久レーサーそのものと言える仕上がりであった。このRC30の発表の約1年半後の1988年12月、NC24型VFR400RはNC30型へとフルモデルチェンジされ、前年に発売されたRC30型VFR750Rに近いデザインが採用された。

 

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レースマシンであるRVF750の技術わフィードバックしたRC30型VFR750Rは国内では1000台限定で発売。チタン製コンロッドや、クロームモリブデン浸炭鋼製のカムシャフトを採用した新設計のV型エンジンを、ホンダ独自のアルミツインチューブバックボーンフレームに搭載。

 

 

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NC30型VFR400Rは、RC30のミドル版とも言える完成度を見せた。当時話題になった、西武系のシードがスポンサーだった「シード・ホンダ」をイメージしたカラーもラインナップされた。

 

 
 
 

最も売れたV4エンジン搭載40ccモデルNC30

 NC30型VFR400Rは1988年に発売され、1990年のモデルチェンジで前後のサスペンションがアジャスタブルタイプに変更されている。今回の撮影車は1990年モデルとなり、この後は基本カラーチェンジのみで製造が続けられた。

 

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より大胆な配色となったトリコロールカラーを採用した1990年式NC30型VFR400Rは、サスペンションをアジャスタブルタイプに変更。

 

 

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左出しのエキゾーストシステムと、プロアームが存在感を示す左リアビューは、レーシングマシンそのままと言える。

 

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ポジションはレーサーそのものと言える前傾姿勢を強いられるため、長距離ツーリングなどには不向きだ。

 

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足つき性は思いの外良好。171cm、65kgのライダーが跨って両足を着くと、軽くかかとが浮く感じだ。

 

 NC30型のフレームは完全新設計されたアルミツインチューブタイプで、「目の字」構造をもつ異形五角断面材を使用することで当時の750ccクラスに匹敵するものであった。このフレームに組み合わされるフロントフォークは41mm径の初期荷重調整機構付き正立タイプで、リアはプリロードと伸び側減衰力の調整機構付ダンパーユニットを装備したプロリンクリアサスペンションとセンターロック方式を採用したプロアームが組み合わされた。ホイールサイズはフロント17インチ、リア18インチで、5本スポークタイプのアルミキャストホイールにラジアルタイヤが履かされている。ブレーキはフロントに296mmフローティングローターと異径対向4ポットキャリパーを組み合わせたダブルディスク、リアは220mmソリッドローターと片押し2ポットキャリパーの組み合わせとなる。

 エンジンはVFR400Fから受け継ぐNC13Eで、ボア×ストロークは52.0×42.0mmの399ccは変わらない。NC21型で360度から180度へと変更されたクランクシャフト角は再び360度へと変更され、ロッカーアームをアジャスト式からダイレクト式へと変更。クラッチにはバックトルクリミッター機構が組み込まれ、ミッションはクロスミッション化されている。最高出力は当時の規制値一杯の59PS/12500rpm、最大トルクは4.0/10000rpmというハイスペックに仕上げられた。その他にも上下二段積みのラジエターや、4-2-1集合の左出しエキゾーストシステムなどの豪華装備が与えられていた。

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耐久レーサーをイメージさせるデュアルヘッドライトを採用。この時代のレーサーレプリカのトレンドであった。

 

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タコメーターと水温計、スピードメーターとインジケーターランプ類がそれぞれ一体になったデザインは、レーサーへのコンバートが考えられたレイアウトだ。

 

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シンプルなデザインのハンドル周り。クラッチはNC24以降油圧式からワイヤー式に変更されている。

 

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ステップ周りの素材にははほとんどアルミが使用されており、ヒールガードも装備されるなどレーサーそのものと言える仕上がりだ。

 

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フューエルタンクの容量は15L。ハンドルを逃すために前方が大きくえぐられているのが特徴的だ。

 

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シートは薄く、タンデムシートはおまけ程度と言えるの。タンデムシートの前方には、ヘルメットホルダーが設定されている。

 

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フレームは完全新設計のアルミツインチューブタイプで、ダイレクト式ロッカーアームなどを採用したNC13E型エンジンが搭載されている。

 

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シングルシート風のテールカウルのエンドには、角形のランプが二つ並ぶ。これはRC30のデザインを継承したものだ。

 

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フルステンレスのエキゾーストシステムは、4-2-1集合タイプとなる。NC24では身が出しだったサイレンサーは、左出しとなる。

 

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フロントホイールは17インチで、ブレーキは296mmフローティングローター+異径対向4ポットキャリパーを採用。

 

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プロアームは元々フランスのオイルメーカーelfのブロジェクトが生み出した技術のため、「by HONDA/elf france」のロゴが添えられている。

 

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NC30型のプロアームはレーサーと同じセンターロック式を採用。リアホイールのサイズは18インチとされていた。

 

激戦を戦ったVFRと、戦う場所をなくしたRVF

 VFR400Rは1991年に発売された1992年モデルが最終モデルチェンジとなり、1992年6月にその年の鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦する、“OKI HONDA RACING”のRVF750をイメージしたカラーリングパターンを採用したエンデュランス・スペシャルカラーモデルが最後に追加された。そして1994年1月にVFR400Rの後継モデルとなるNC35型RVFが発売され、5年というこの時代のレーサーレプリカとしては比較的長いモデルライフを終えた。

 RVFはNC13Eエンジンを継承しながら、VP型キャブレターやダイレクトエアインテークシステムを採用するなどしてブラッシュアップ。フレームは新設計されたアルミツインチューブのダイヤモンド式で、新設計倒立フロントフォークや異径4ポット対向キャリパー、前後17インチホイールなざよ採用していた。しかし、RVFが登場した1994年には既にレーサーレプリカブームは過ぎ去り、VFR400Rが活躍したTT-F3クラスはすでに廃止されていた。そのためサーキットで活躍することはなく、売り上げ自体も大きく伸びることなく2000年代に入ると生産中止となった。

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