専門誌や『バスマガジンWeb』をはじめ専門Webサイトまであり、現在は趣味の一ジャンルに数えられる「バス」であるが、飛行機や電車など他の乗り物に比べると、愛好の対象になったのは後発のほうだ。じゃ、それっていつからなのか、を辿ってみた。
文:中山修一
各種画像:キャプション参照(全てパブリックドメイン)
(バスが出てくる100年以上前の文献の画像付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■バスが出てくる大昔の文献ってどんなもの?
今は各種趣味の媒体で楽しめるバスの世界。では、バスが趣味化する遥か昔の時代に製作された文献に注目すると、一体どのようなテーマの本にバスが登場する機会が多かったのか、ふと気になった。
調べるにあたって、まとまった数の蔵書を持っていて、割と手軽に情報が手に入る場所といえば国立国会図書館しかない。
今回は、国会図書館の膨大なコレクションから、保護期間満了(著作権切れ)で、誰でも自由に利用できるパブリックドメインになっている各文献をサンプルに、作中にバスが出てくる最古の本を探してみることにした。
現代人には解読できない文字で書かれているものや、国会図書館側で現代語に変換されていても怪文書すぎて読めないもの、製作年不明もしくは年代が「0000」と表示されているものは除外した。
■「バス」で検索してみると……
今回は最古の文献を探すということで、恐らく古い順に見ていけば、19世紀の終わり頃に発行された本が出てきて、早々に結果が出るんじゃないかと期待した。
まずは何も足さずにキーワードを「バス」とだけ入れて検索をかけてみた。すると1,456,308件もヒットしてしまい、案の定、「引キ伸“バス”」とか「セ“バス”トポリ」とか、乗り物のバスと関係ないワードが大量に引っかかった。
その中に、1886年9月の日本の天気図が含まれていた。どこかに「バス」というワードがあるらしいのだが、該当ページを見ても、気温が数字で書かれている箇所にバスの記載があるマークが出ていて、バスの所以は皆目分からずであった。
もう一つが1886年10月刊行の読み物『絵入太平記 上』。「バス」とだけ表示されていたのだが、該当ページを見ると挿絵の芝生の部分に「ここがバスです」とポイントされていて、どこがどうバスなのかは人知の及ぶところではなさそう。
■キーワードを足してみる
これでは埒があかないので、検索ワードを「バス 自動車」にすると少々精度が上がった。とはいえそれでも8万件ほどあるけれど……。
順繰りに確認していくと、始めて2時間くらい経ってから「これそうなんじゃないの?」と思われる1冊が出てきた。
1904年に刊行された『世界一周実記』がそれ。題名の通り海外旅行をテーマにした個人の旅行記で、ロンドンを訪問した際にバスに乗ったという記述がある。
抜粋すると、「この日帰路乗合馬車にに乗る、一人にて乗りたるは是が初めなり、乗合馬車即ちオムニバスは当地普通にたヾバスと称す」というもの。
間違いなく乗り物のバスのことだ。ただしバスと言っても、年代的にまだ馬車であるところがミソ。
エンジンの付いたバスについて触れた最古クラスと思われる1冊は、1912年製作の『世界小観』で、こちらも英国訪問時の様子を記した旅行本の一種だ。