山梨県の観光地、富士五湖のひとつ山中湖は、1周およそ14kmの天然の湖。湖畔沿いに舗装路が整備されていて、マイカー/レンタカーを使った移動はもちろんラクラクだ。一方で山中湖をとりまく公共交通機関事情はどうなっているだろう?
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、山中湖周辺の公共交通事情の写真があります)
■バスに明るい山中湖
鉄道駅までやや遠い立地ゆえ各所から高速バスが集結しつつ、さらに全国でも数少ない水陸両用バスが観光向けに運航しているほど、けっこうバスと密接な関係を持つのが山中湖だ。
遠方からのアクセス用途のみならず、遊ぶために用意されたバスが湖上を航行するほどなら、湖畔に敷かれた道沿いをグルリと回るような、簡単な足代わりのバスの一つだって走っていそうな気がする。
そのあたりどうなっているのか、2025年11月現在の様子をチェックしてみると、やはり観光向けの周遊バスが出ていた。
■バスで湖、1周できる?
山中湖に来る高速バスではない普通の路線バスは何系統かあるようで、中でも湖畔を1周するルート設定が取られているのが、富士急バスによる「ふじっ湖号」だ。
このバスは山中湖の南側を通る国道413号と、北側の県道729号をメインルートに、周辺の観光スポットに立ち寄りながら湖畔を回っていくもので、理屈の上ではバスを使っての山中湖1周もそう苦労せずに完遂できる。
反時計回り(左まわり)と時計回り(右まわり)があり、1日あたりの本数は全部で11本。それほど多いわけではないので、事前にバスのダイヤを確認しておくのが安心か。
途中で降りた場合、反対方向のバスが来るまで、場所にもよるが15〜30分ほどの猶予があるため、下車したスポットを軽く楽しみつつ、左まわりと右まわりを交互に乗り換えて、ジグザグに移動していくと効率がよさそうだ。
■重量級のロングランナー
さてこの「ふじっ湖号」、バスの運行形態で言うところの循環バスにあたる。ただし、山中湖をグルグルずっと回っているのではなく、始発/終点は湖から15kmほど離れた、富士急線の河口湖駅になる。
オーバル周回型やエンドtoエンド型ほか、循環バスにも描く経路に色々と種類があるが、「ふじっ湖号」は柄杓型に相当するようで、河口湖駅を出て山中湖のアプローチ部分まで行き、湖を一周して再度河口湖駅へ戻るルートだ。
河口湖〜富士山山中湖(ホテルマウント富士入口)間が柄杓の柄の部分、富士山山中湖から先〜富士山山中湖に戻ってくるまでの区間が掬う部分といった感じになる。
山中湖の周囲は14kmほどながら、河口湖駅までの区間を足すと、1回の走行距離は何と53km。(あまりいないと思うが)全区間乗り通せば所要時間2時間27分という、循環バスとしては何気に重量級のロングランナーだったりする。
■見本より全然デカい車が登場!
富士急バスの公式サイトを見ると、「ふじっ湖号」には専用カラーに塗られた小型バスの日野ポンチョが見本写真に添えられている。
湖畔を巡る限りは、短距離利用メインの簡単な足代わりに見えるので、ポンチョのサイズ感がちょうど良いのかな? と思っていた。
ところが現地へ行ってみると、やってきた「ふじっ湖号」の車はフルサイズの大型路線車。しかも高定員の長尺タイプだった。
山中湖といえば昔からインバウンドに注目されがちな観光地で、訪問当日の平日水曜日も、周囲から聞こえてくるのは日本語よりも英語か中国語のほうが多かったほど。バスも一通り席が埋まるくらい乗っていて、やはりインバウンドが中心。
2日間「ふじっ湖号」を利用してみて、どれも大型路線車だったことから、ポンチョクラスの車両では現状、輸送力が足りない可能性大とみた。大きなスーツケースを引いている人が多かったので、車内での置き場対策も多少ありそうだ。
なお本来「ふじっ湖号」向けに用意されたポンチョは、山中湖〜月夜野間のローカル線・道志線に使われていた。





