観光地に行くと、周辺の観光スポットを巡ってくれる路線バスが走っている様子をよく目にする。そういった観光要素の強いバスには、普通の車とは違う特別な飾りを車体に施してあるものが多い。あの飾り、どのような題材をモチーフにしているのか。全国3カ所の観光向け周遊バスを例に軽くチェックしてみた。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWeb内本文上とギャラリーに、飾りのついた路線バス車両の写真があります)
■横浜市内の「あかいくつ」
神奈川県横浜市のベイサイド、桜木町や関内といった観光色の強いエリアに、「あかいくつ」の愛称で長年親しまれる、横浜市営バスによる周遊タイプの路線バスが走っている。
「あかいくつ」には専用車が用意されていて、ベースは一般的な全長10.5mクラス、2ドアタイプの大型路線車であるが、ひと目で別物と分かる飾り付けが車体に施されている。
下回りが赤、窓回りに薄いクリーム色、屋根回りがグレー塗装になっていて、車体各所に木目調のフチ取りがなされ、側窓は上辺がカーブしたアーチ窓風。通常の屋根の上にもう一段、やや小さめな飾り屋根が乗っていて、周囲に小窓が並んでいる。
丸目2灯ヘッドライト+中央に飾り的な丸目ライトが1灯、屋根上にも外付けヘッドライト的な飾りが取り付けられ、どことなく古風なスタイルから、見ればレトロな雰囲気が伝わってくる。
では「あかいくつ」の飾り付けは何をモチーフにしているのか。こちらは(主に戦前に活躍していたデザインの)路面電車をモチーフにしている。西洋文化をいち早く採り入れた港町として長い歴史を持つ横浜によく似合う題材だ。
屋根の上に付いている小窓の並んだ飾り屋根は、初期の鉄道車両や路面電車によく見られる、明かり採り用の小窓(ダブルルーフ)を表現したものとみられ、この部分が旧い路面電車らしさを押し出す演出に思える。
さらに「あかいくつ」の場合、港町ヨコハマの象徴であった赤レンガ倉庫の一部要素や、車によっては船の要素も若干加わった、ハイブリッドな装飾とも言える。
■鹿児島市内の「カゴシマ シティビュー」
続いては鹿児島県の鹿児島市内から。同地には観光スポットが点在していて、市電や路線バスでの移動が便利。その中で、鹿児島市営バスが観光向けの周遊バス「カゴシマ シティビュー」を運行している。
カゴシマ シティビューには通常の黄色い車体の路線バス車両のほか、特別な装飾を施した観光色の強い専用車が3種類ほど用意されている。
うち2種類は、青白ツートンと赤緑ツートンの色違いがそれぞれ1台ずつ。全長9mクラスの中型路線車をベースに、アーチ窓の付いた折り戸と側面窓、屋根上にダブルルーフ調の表現。
青白ツートン車の前扉がステップの奥に取り付けられ、デッキのような表現が設けられているのも非常に変わっていて面白い。
金色のモール表現に加え、前面の“おへそ”部分に丸目ライトの飾りがあるほか、屋根のおでこと肩部分に、1900年代の海外の路面電車や馬車などに取り付けられていた、系統番号や広告を掲示するためのパネル風表現が盛り込まれている。
レトロな全体像を持っているのは間違いなく、後部にある井桁状の大窓表現が、ちょっと帆船を彷彿とさせなくもないが、基本的なモチーフは旧い時代の路面電車だ。
もう1種類のほうは中型路線車タイプで、車体色は青系がベース。車体裾に波模様が描かれ、屋根周りにイルカの背中のような装飾が施された、かなりインパクトのあるデザイン。前面行先表示器の周りにもイルカ風のシルエットがあしらわれている。
こちらは見ての通り「海とイルカ」をモチーフにしている。鹿児島の湾内には野生のイルカが棲息しているほか、市内の「かごしま水族館」ではイルカの水路展示を行うなど、イルカ=ご当地アニマルな一面があるため、同地のイメージに沿った装飾というわけだ。





