■PCSはできれば動作してほしくない!恐怖の体験記
続いてPCSの体験をした。これだけはカメラの持ち込みは禁止され、撮影は外からの見学時にのみ許された。これは企業秘密のためではなく純粋に安全のためだ。PCSは前方の障害物を検知して運転士が回避操作をしないと直ちに停止させる機能だ。
衝突させずにとにかく停めなければならないので、自動でパニックブレーキがかかる。質量のあるものであれば慣性の法則で前方に飛んでいくので、搭乗する人は飛ばないようにシートベルト必須で、カメラは飛んでいく可能性が高いので車内に持ち込むことは禁止されたというわけだ。
まずは時速50㎞で前方の車両にノーブレーキで突っ込んでいく。乗っている方も怖いが、わかっていてもノーブレーキを貫くドライバーも怖いはずだ。もし動作しなかったら本当に追突してしまうからだ。十数トンのハイデッカーバスが時速50㎞でノーブレーキ衝突する恐ろしさは、バスを運転したことがない方でも容易に察しが付くはずだ。
直線コースで本当に時速50㎞で突っ込んでいった。普段、路線バスを運転している記者は右足がかすかに動いていた。「もうあかーん!」と思った瞬間にフルブレーキがかかり車輪はロックせずに前方車両3m手前で停止した。これだけ余裕があれば右にハンドルを切れば容易に避けて通過できるほど余裕がある距離で停止したのだ。怖い、恐ろしい体験だった。
次に、前方車両が時速30㎞で走行しているのにバスは後ろから時速50㎞で追撃していく。速度差は20㎞/hだがそのままだと確実に追突する。しかし前方車両との距離を約3mに保ったまま急制動がかかり停止直前に生ドライバーが右に回避して停車した。
このようなシチュエーションは貸切車や高速車にこそ必要な安全対策で、実は路線バスと貸切・高速バスとに区分した場合の事故の原因が異なるからだ。路線バスで最も多い事故は車内事故だ。頻繁に停車と発車を繰り返し、右左折や車線変更が多い路線バスだから多い事故原因だ。
一方で、貸切バスや高速バスで最も多い事故原因はズバリ「追突」である。長時間を停車することなく走るこのタイプのバスは、突如現れた渋滞や一般道での信号等で追突が多い。PCSが適切に動作すれば、追突事故は減少するはずで安全装置に依存して運転するわけにはいかないものの、運転士をアシストして一瞬の見落としを機械的に回避できる。
■運転士不足に対する答えの1つではある
バスは乗客に対する乗り心地や設備の追及は当然だが、運転士の負担軽減と安全アシストの方向でもアップデートは必須事項となりつつある。今回の新型セレガは日野自動車曰く「マイナーチェンジ」の部類に入るモデルチェンジらしいが、安全に対するアップデートは確実に進歩している。
これらの装置があるから必ず安全ということは決してない。しかしリスクを減らすことは可能である。リスクが減れば真の安全に近づくことができる。しかし最終的には人間の判断と技術によるところが大きい。鉄道とは異なり不特定多数の交通が行き交う道路だからこそ、無人自動運転が難しいのだ。それが実現するには課題は多いが、それまでは運転士がバスを動かさなければ公共交通は崩壊してしまう。
しかし運転士不足は深刻さを増す一方だ。これらの安全機能は運転士の労働環境や負担軽減にはなることは事実で、運転士のなり手がいない現状ではバス製造メーカーが出した回答の一つとして受け取ることが可能だろう。
そしてデザインもさることながら実際の燃費向上は台数が多くなればなるほど、走行距離が長くなればなるほど、長い目で見て事業者の運行経費が軽減されその差額が運転士の待遇向上につながれば、これだけで成し遂げられるわけではないが重要な要素になることが期待される。
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