「東急」と「東急バス」のような、電車とよく似たブランド名のバス。その場合、電車・バスともに1つの事業者が運営しているのだろうか。
文・写真:中山修一
■電車系なバスのブランド
電車とよく似たバスのブランド名の例に…
JR各社、西武、東武、小田急、京急、京王、東急、相鉄、江ノ電、静鉄、北鉄、名鉄、近鉄、ことでん、いよてつ、西鉄
…などなど、挙げるとすれば結構たくさん出てくる。全国展開のJRは少々例外的ながら、首都圏を筆頭に、いわゆる私鉄の電車網が広い地域でよく見かける。
なぜ電車とほぼ同じブランド名を冠したバスが生まれたのか……日本の交通網の歴史を遡ると、戦前〜戦後〜高度経済成長期にかけて、電車を走らせている会社がバス事業に進出するのが、全国各地で定番だった時代がある。
元々は、その時点で鉄道が通っていない場所に路線バス網を作り、鉄道と連携して利便性を高めつつ全体の収益を上げるのが主な目的だった。
自社でバス事業を始めた所もあれば、既存のバス事業者を買収して自社の一部門に組み込んだ所もあり、出自は様々。規模が大きな鉄道会社となれば、大抵はバス事業も行うようになった。
同一の会社が運行するなら名称を分ける必要はなく、むしろ統一感を持たせたほうが好都合であり、バスも電車に合わせたブランド(社名)が付くのはごく自然と言える。
■実は付かず離れずな関係?
今日の電車系ブランドのバス事業者のほとんどが、鉄道会社をルーツに持っている。では、そういった事業者は、鉄道会社の部門の一つとして、現在も変わらず運営を続けているのだろうか。
前述の16社で確認してみると、そのうち13社が以下のようになっていた。
【分社化】カッコ内はバス会社としての設立年
・JR(1988〜2004) ・東武(2002) ・京急(2003) ・東急(1991)
・京王(2002) ・相鉄(2001) ・江ノ電(1998) ・静岡鉄道(2002)
・北陸鉄道(1989〜) ・名鉄(2004) ・近鉄(1999) ・伊予鉄(2018)
【他社に譲渡 → グループ化】
・ことでん(1986)
上記のバス事業者は全て、元は鉄道会社の一部門であったが、1980年代の終わり〜2000年代前半にかけて鉄道会社の本体から分離して子会社に変わっている。
いずれのバス事業者も大元の鉄道とはグループ会社の間柄であるため、まったくの「アカの他人」までは行かないものの、すでに大多数が電車と直接の関係は解消しているわけだ。
上記に当てはまらない事業者に、西武バスと小田急バスがある。この2社は最初からバス専業で鉄道会社の本体に組み込まれたことがなく、ブランドの部分だけ電車と統一されている。