■峠の頂上が県境…だけど
このバスは、約21kmの区間のうち約19kmが国道1号線を走るベタイチルートの保持者。神奈川県側からスタートした場合、バスが県境を越えるまで10分もかからない。
「箱根峠」停留所を過ぎるとすぐに静岡県入りする。峠の頂上が県境になっている、ということは、もしかして国道1号線で一番高い場所を通るバスでもあるのだろうか?
期待だけ膨らむものの、残念ながらヌカ喜びに終わってしまう。国道1号線の最高地点は、小涌谷と元箱根港の間にある874mだ。
箱根峠の頂上は846mで、順位的にはその他大勢。芦ノ湖の標高は724mなので、箱根峠と同じ846mの地点が、国道1号線上にあと2箇所ある、とも言える。
■麓を見下ろす爽快な景色
高所から降りていく経路ということで、車窓からの景色はなかなかの見応え。道路脇の遮蔽物が途切れ、麓の街が遠くに姿を表す瞬間は眺めていて爽快だ。
車内では「スカイウォーク」という単語がよく耳に入ってきた。N65系統の途中停車ポイントに、日本最長の人道吊橋である、三島スカイウォークが含まれている。
インバウンド観光客のほとんどが、そのスカイウォークへのアクセス目的でN65系統を利用しているとみた。およそ11.3km先・出発から20分くらいでスカイウォークの前に到着した。
■豹変する車内!?
確かに箱根から乗車した人が続々スカイウォークで降車していった。ここから先は他の県境越え路線バスと同様に車内が閑散とするのかな? と思いきや、180度違う結果が待っていた。
スカイウォークでの降車が終わると、今度はここから三島駅へとアクセスしたい、インバウンド利用PART2が幕を開けた。それもとびきりデカいのが。
ちょっと中型路線車では荷が重過ぎるんじゃ? と不安にさせる、積み残し寸前の状態まで車内の様子が豹変した。街中の路線バスでさえ、ここまで詰め込んだらイレギュラーな部類だ。
渋滞はなく国道1号線を淡々と下っていったが、東海バスは前乗り・前降りのスタイルなので、利用者が多いと乗降にちょっと時間がかかる。ダイヤ通りで所要時間53分のところを、10分ほど遅れて三島駅に着いた。
全国的に利用者の少なさが目立つ県境越え路線バスの中で、N65系統は基本データこそ平均的ながらも、最近はインバウンドという巨大な目的をバックボーンに据えた、だいぶ規格外の路線にパワーアップしているようだ。
【バス路線の基本データ】
東海バス N65系統 元箱根港 → 三島駅行き
・跨ぐ県:神奈川県 → 静岡県
・移動距離:約21km
・所要時間:53分
・運賃:1,050円
・停留所の総数:47
・神奈川県内の区間距離:約3.7km
・神奈川県内の停留所の数:10