フジエクスプレスで臨時運転士として乗務する記者のバス運転士日誌は、運転をしながらどうやって取材して記事を書いているのかをお話しする。どのように記事テーマを決めていつ取材して記事を書くのかについては、普段の記者の取材手法が大いに役に立っている。しかし運転士業をしているときはそんなことは考えていないのも事実だ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■日誌なので予定稿はない!
タイトルが「運転士日誌」なので運転士をしていて、その日にあった出来事や気が付いたことや気が付かされたことについて記事にしているのは言うまでもない。通常、記者というと写真を撮りながらメモ帳を片手に懸命に何かを書いているイメージがるのではないだろうか。
記者の場合は基本的にどんな取材であってもメモは取らない。芸能人の取材であってもメモは取らない。一言一句違えてはならないのであれば録音でも録画でもして文字起こしをするが、それでは動画を流せばいいだけであり、それは同じ報道であってもテレビジョン放送の役割だろう。取材相手がいる場合にメモを取る場合はたいていが取材要点をまとめたメモをあらかじめ用意しているケースが多い。
それではお互いに会話で成り立つ取材においては取材相手に失礼であるし、相手の目を見て話すことができない大きなデメリットがある。よってその時の情景と会話の内容をセットで覚えるのでメモは取らない。さて、バス運転士をしている間は、当然ながら運転士の業務をしているわけだが、写真を撮影するわけにも録音録画をするわけにもいかない。
しかも、「今日の乗務では何をテーマに記事を書こうか」というような予定があるわけではないし、そもそも何が起こるかわからないので、予定稿など用意できるはずもないのだ。
そして、運転士をしている間は旅客の命を預かり運送しているので、記事のことなどを考えている余裕はないし考えない。よって、後になり当日の乗務を振り返った結果、記事にするしないが決定するのである。その際に「情景と事象をセットで覚える」普段の取材手法が役に立つのだ。
■写真はイメージが多い
では、記事に使用する写真はどうするのかというと、営業所内や出庫前、折り返し時の休憩時間や回送運行開始前に撮影したものをイメージ画像として使用する。必要であれば非番の日にカメラをかついで同僚運転士が運転する当該路線のバスや沿線を撮影に行くこともある。プライベートな旅行であっても撮影は欠かさず、資料映像としてストックしておくのだ。
よって記事にする出来事があったその場での写真を使用することは不可能なので、同型の車両や後撮りした写真をイメージとして使用することになる。もっとも、休憩時間中の出来事を記事にする場合、例えば食事の内容や季節の風景等はその場で撮影ができるので特に問題はない。
■協力してくれる仲間たち
しかし、運行中の出来事で、そんなことが起きるのかという偶然性や頻度については、同じ路線を運行する同僚の運転士に聞くのが手っ取り早いし間違いがない。休憩時間や運行開始前、あるいは勤務明けで帰宅前にでも話をしてくれる同僚運転士は多い。
これが非常に力になっている。自分の貴重な時間を割いてまで取材に協力してくれるのは非常にありがたいし、あまり時間を取り過ぎると申し訳ない気になることもしばしばだ。
ついでに、管理職であり上司に当たる運行管理者ですら、取材の進捗状況を心配されたり、知りたい内容について自分の時間を使いこそっと調べて情報をくれたり、あるいは取材の提案をしてくれたりと気にかけてくれる。
どうしても会社に事前に許可を取るべき取材であっても、お偉い方々が力になってくれるので、それほど取材で苦労をしたことはない。そのような皆さんのバックアップがあり、初めて記事が完成する。
今後は自分が運行するものだけではなく、別の営業所や記者が運転しない高速バスの取材を内部からしたいとは考えているし、実際に別の営業所の運転士から要望があったことも事実である。




