■余裕面して駅を出たら…!?
熊野市からJR紀勢本線の普通列車で有井駅に降り立ち、入れ替わりで乗車してきた大勢の小学生達に手を振られ振り返しつつ、2両編成のキハ25を見送ると、三交南紀へ向けて徒歩で移動を始めた。
大先生曰く「駅出たら踏切渡って道なりに進むと、三重県道141号線っていうのにぶつかって、そこを左に曲がって真っ直ぐ歩いていけば、進行方向右側に三交南紀あるから時間とか全然余裕」だそうだ。
アプリがそう言うし1.2kmだし、だいぶ余裕な心持ちでゆっくり散策しながら歩いていくと、確かに県道141号線が見えてきた。言われた通り左へ曲がれば……ここで初めて、あることに気付いた。
県道141号線は片側1車線のかなり狭い道路、しかも歩道がないのだ。道幅の割に交通量は幹線道路級に多く、大型車もガンガン通る。大先生的には「そんなの気合いで突っ切れ」ということらしい。
まったく考えもしなかった展開、これこそ現代技術が仕掛けてくる情報の罠、鵜呑みにすると大ヤケドだ。
危なくて歩いては絶対通れない、それが有井駅周辺の県道141号線の実情であった。文句を言ったところで、どうせアプリはこう答えるに違いない「あれは嘘だ」と。
■急ぎながら回れ
メインの道が使えず、141号線の1本奥に敷かれている生活道路を大回りしていくしか方法がなくなった。そちらは車も殆ど通らず比較的安心して歩ける。
奥にある道は心なしかグネグネと曲がっている。地道に進んでいるが時間は10分、15分と経っていく。ようやくバスの車庫らしきものが見えてくると、今度は前方に田んぼが広がり迂回を余儀なくされる。
せっせと曲がり道を歩いて迂回中に、バスの発車時刻まで10分を切り、いよいよ青ざめてきた。もうダッシュするしかないか…
…そう思い始めた矢先、曲がり道を抜けたら意外とあっさり三交南紀の裏口に辿り着いた。グルメ番組で店を探しているシーンのような、偶然にしては丁度よすぎるタイミングって本当に起こるんだな、と、ちょっと感心した。
裏口から中に進み、三交南紀の営業所と思われる建物に向かう。実際その建物が三重交通の営業所で、出入口の前あたりに三交南紀バス停が置かれていた。
熊野古道ラインのバスは既にドアを開けて出発待ちをしていた。営業所にはトイレもあり、用事を済ませてから乗車するくらいの猶予は何とか残った。
到着は13:14。有井駅を出て歩き始めたのが12:52だったので、回り道をして22分で三交南紀に着いたわけだ。結局のところ徒歩でも綱渡り感が出てしまったのは、全部アプリの所業にしておこう。
事が予定通りに運ばなかったものの、よりパーフェクトに乗りバスを楽しむべく、熊野市からJR線と徒歩で三交南紀へ向かい、シッカリ端から長いバスに臨むプランは「可」であると、こうして実証できた。
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