世界的に有名な観光地・プラハ。地元民にも観光客にとっても公共交通機関が重要な足となるこの街には、どんな乗り物・とりわけどんなバスが走っているだろうか?
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(現地の写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBをご覧ください)
■あの乗り物が主役? プラハの公共交通機関事情
チェコ共和国の首都プラハは、都市全体が世界文化遺産に指定されており、日本はもちろんのこと、世界中から多くの観光客が訪れる人気の街だ。
そんなプラハの主要な都市交通は、チェコ国内で唯一運行される地下鉄がA線・B線・C線の3路線と、町中に張り巡らされたトラム(路面電車)だ。
どこの国や地域にもありそうな路線バスは…? というと、実は観光客が訪れるような市の中心部には、ほとんど走っていない。
観光名所にして市の中枢でもある旧市街は、乗用車すら通行するのが困難な細い路地ばかりで、そこを大勢の観光客が溢れんばかりに歩くのだから、普通のバスですら走らせることは不可能なのだ。
それ以前に、プラハの街は他の国の首都と比較してもかなり小規模で、主要な観光スポットならほぼ徒歩だけで見て回れるので、短距離移動向けの路線バス自体が必要ないというのもある。
ホテルの最寄りにある駅や停留所から、中心部近くまでは地下鉄やトラムに乗り、あとは下車して徒歩でブラブラ、がプラハ観光の基本である。
■ぜんぜんバスは走っていないの?
では、プラハの路線バスはどこを走っているのか、いや、そもそも路線バスは走っているのだろうか? 市の中心部に全く路線がないかというと、そういうわけでもなく、病院へ向かう路線などがわずかに運行はされているが、その数は非常に少ない。
実はプラハのバス路線は、市の外円部にある地下鉄やトラムの駅から、周辺の団地などへ向けて運行されているものが多い。
市の中心に比較的近いところでは、地下鉄B線のフロレンツ駅やアンデェル駅にバスターミナルがあり、高速バスと市内の路線バスが複数乗り入れている。ここを発着する路線バスは、トラムが走っていない住宅街の中を縫うように運行されている。
さらに外側へ目を向けると、地下鉄A線やトラムが接続するデイヴィツカー駅は、バス11路線が発着するターミナルになっている。11のうち3路線は、プラハ市外へ直通する郊外路線だ。
市の外れに行けば行くほど、バス路線は増えて行き、それと同時にプラハ市外を結ぶ路線が増えてくる。路線バスは、地下鉄やトラムのフィーダー輸送に徹しているのが分かる。
プラハで使われている系統番号は明確に区分けされていて、1~はトラム、50~はトロリーバス、100~は市内路線バス、250~はスクールバス、300~はプラハと郊外を結ぶ路線バスだ。
300以上の番号はプラハ(および周辺地域で構成される)交通連合の共通運賃を採用する、周辺地域の広域路線網で使用されている。おそらく、プラハを訪れる日本人の大半がお世話になるのは、250番以下の数字の路線になるだろう。
■脇役のポジションをキープ
そんなプラハの路線バスだが、実際のところ完全な脇役に徹しており、プラハ市としては環境問題の後押しもあって、地下鉄やトラムを拡張させる方向に進んでいる。
2023年以降で見ても、2つのトラム路線が延伸し、並行する路線バスが置換えられた。現在もいくつかの延伸計画があり、順次バスを置換えて行くと発表されている。
一方で、別の記事でもご紹介したが、トロリーバスへ置換える計画も進められている。プラハのトロリーバスは、50年前にいったん廃止されている。
しかし数年前から再び試験走行が行われ、昨年ついに復活を果たした。今年3月には、2つ目の路線として空港と地下鉄駅を結ぶ路線へ導入され、既存の路線バスを置換えている。