廃止になった鉄道の代わりをバスが務めるのは定番の流れ。とはいえ最近は、ごく普通の路線バスが後釜になるとも限らない?
文・写真:中山修一
(JR根室線とその代替バスの写真つき記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■また一つ消えた往年の大動脈
2010年代から、あまり客が乗らない鉄道路線の営業を取りやめる施策を積極的に行っているJR北海道。これまでに江差線をはじめ石勝線夕張支線、日高線、留萌本線等々に大鉈が振るわれた。
2024年4月には、その昔は北海道を横断する交通の大動脈だった根室本線の一部、富良野〜新得間(81.7km)、石勝線との線路重複区間を除くと富良野〜上落合信号場間(57.6km)が廃止された
根室本線は事情が少し特殊で、2016年の災害で東鹿越~新得間(41.5km)が不通になった都合により、その後8年近くの間、代行バスを挟んで路線を繋いでいた。
代行バスにはハイデッカータイプの観光バス車両が使われ、それはそれで快適な移動手段であったが、2024年3月31日の列車運転終了、翌4月1日の廃止とともにJRの代行バスも役割を終えた。
■だいぶ細かくなりました
根室本線の富良野〜新得間が廃止されても、周辺の公共交通機関が全てなくなった訳ではなく、手順通りに代替バスが足を支えるようになった。ただし、根室本線の代替バス事情は少し変わっている。
富良野と新得の間にあった根室線の駅を順に並べると……
布部−山部−下金山−金山−東鹿越−幾寅−落合
……のようになる。代替バスといえば、各駅があった場所の近くに立ち寄る経路を取るのが教科書通りのお作法だ。
それに対して、根室線の代替バスは路線が複数に細分化されたため、全駅を1本の路線でカバーしているバスは1つもない。
JR線時代を偲んで各駅をバスでトレースしていくのは、代替バスの楽しみ方の一つであるものの、根室線の場合は妥協と諦めが肝心と言ったところか……。
■まさかの都市間バス!
さらに、富良野→新得(またはその逆)を通り抜けるバスは1路線だけ。北海道拓殖バス、十勝バス、道北バスの3社で運行している、旭川・帯広線「ノースライナー」がそれにあたる。
JR根室線が現役だった時代から走っていた競合関係のバスが、鉄道廃止後にそのままスライドして代替バスの役割を担うようになった形だ。
しかもノースライナーは、一般路線バスではない予約制の都市間バスで、車両も高速バス等に使われるハイデッカータイプだ。そんな存在が鉄道代替バスに変身したケースはちょっと珍しい気がする。
代替バスとして見ると大変ユニークな性質を持っているが、鉄道廃止区間を乗り換えなしで移動できる唯一無二のバスであるため、根室線代替バスの旗振り役=ノースライナーと思っておけば良さそうだ。
■廃止でステップアップしたノースライナー
ノースライナーは旭川駅前〜帯広駅前を毎日結んでいる。三国峠回りと狩勝峠回りの経路違いが2種類あり、根室線代替バスを兼任しているのは後者のほう。ちなみに三国峠回りも国鉄士幌線の代替交通の一部を担っていたりする。
根室線の該当区間が廃止されたのに合わせ、狩勝峠回りのノースライナーも刷新。本数が1日3本から5本に増便されたほか、停車ポイントの移転(美瑛駅前)と追加(落合)があった。
代替バスとしてのノースライナーがカバーしている根室線の駅は、富良野、山部、幾寅、落合、新得の5箇所。このうち富良野〜山部間のみの利用はできない。