用途に応じて様々なタイプがある日本のバス車両。1台あたりに使われているタイヤの数が最も多いのは、果たしてどんなクルマ?
文・写真:中山修一
(バスのタイヤ本数にまつわる写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■ごく普通のバスは何本?
まず注目してみるのが、街中でよく見かける路線バス向けの「路線車」や、高速バス・貸切バスでおなじみ、ハイデッカータイプの「高速車/貸切車」だ。
路線車や高速車では、車体を横から見ると、前後に車輪が2つ、両サイド合わせて4つ付いているものが特に多い。それなら、ごく普通のバス車両に取り付けられているタイヤの数は車輪の数と同じ4本……
……かと思いきや、運転するために大型免許が必要なバス車両の場合、後輪が片側2本ずつタイヤを組み合わせた「ダブルタイヤ」になっているものが殆ど。そのため、純粋なタイヤの本数では合計「6本」ということになる。
ちなみに、車両を外側から見て車輪の数が全部で4つなら、ダブルタイヤは1組1本としてカウントされるため、クルマの分類的には6輪ではなく4輪の扱いになる。
■やっぱりあるぞ! 大型特有の多タイヤ車
バスに使われるタイヤの数は6本がキホン。しかし6本が最大なのかと言えば、大量にタイヤが付いている大型トラックと性質がよく似ているバスゆえ、もっと多いのがあるハズ。
ちょっと辺りを見回してみれば、やっぱりあった。最近は活躍している場所が少々限られてきたようだが、一部の高速バスに充当されている2階建バスだ。
ほか最近流行している、屋根を取り払って眺望を限界レベルにまで引き上げた、観光ツアー向け「オープントップバス」も2階建バスの車輪構成とよく似ているタイプがある。
2階建て車両の多くが、通常のバスよりも車体が大柄な分、車輪の数がちょっと増えて、横から見ると片側前1つ・後ろ2つ、といった6輪の構成になっている。
それなら前述のダブルタイヤの法則に従って、6輪仕様の2階建バスは、後輪が片側ダブルタイヤ2組ずつで合計10本かと言えば、これがまた少々トリッキー。
近年の2階建てバスをよ〜く見ると、フロントタイヤの次位・前から2番目の車輪はダブルタイヤであるが、3番目はシングルタイヤだったりする。
そのため、日本でポピュラーな2階建バス車両で使われているタイヤの本数は「8本」ということになる。
また、超大型の高速バス向け2階建て車両に、ドイツ・ネオプラン社で製造された「メガライナー」と呼ばれる車種(現在は引退)があり、片側それぞれ前2つ・後ろ2つ、合計8輪仕様の迫力十分な車輪数を誇っていた。
メガライナーは、後ろから2番目の車輪だけダブルダイヤで、残りはシングルタイヤだったため合計「10本」。それでも他のバス車両と比較すれば、なかなかのタイヤ本数だ。
ちなみにシングル/ダブルタイヤの特に簡単(100%の精度ではないかも知れないけど)な見分け方は、ホイールが凸状になっている場合はシングル、凹んでいればダブルだと思えば大体OK。
■大きい・長いほど多くなる……ワケじゃない?
車体を2つ繋ぎ合わせていることから、何となくタイヤの数も多そうな雰囲気を持つのが連節バスだ。
実際どうなのか、最近の連節バス車両を確認してみると、片側前1つ・中央1つ・後ろ1つ、見た目的には6輪仕様になっている。
このうち、中央と後ろは基本的にダブルタイヤ(過去の車両では後ろがシングルタイヤもあった)なので、連節バスのタイヤ本数は多くて「10本」と言えそう。
やはり車体が大きく・長くなるにつれてタイヤの数も合わせて増えていく……のは確かであるものの、例外は付き物というやつか、法則に当てはまらないバス車両が見つかった。
東京都豊島区の池袋をはじめ、一部の観光地で活躍している電動バスの「eCOM-10」がそれだ。全長約5m、幅およそ2m、20名程度が乗れる小型バスながら、車輪が片側5つも連続で並ぶという、いもむしのようなインパクトの強い外観が特徴。
驚愕の10輪車の枠組みに入り、車輪の数で言えば小柄でも最大クラス。一方、タイヤ本数で表すと、10輪ともシングルタイヤで、連節バスやメガライナーと同じ「10本」だ。