陸上ではバス、また水上では船舶という水陸両用バスを観光地などで見かけることがある。どちらでも走れるバスだが、どのような構造をしているのか? また、どんな資格で運転し、操縦はどのようにしているのか? 実際の水陸両用車を取材してきた。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】迫力満点の水陸両用バスはどうなっているのか?(14枚)画像ギャラリートラックのシャーシを利用! 救命胴衣も備える必要アリ
現在走っている水陸両用車はトラックのシャーシ(骨組み)をベースに製造されたものが多く、最初からバスまたは船舶として製造されたものではない。さらに船舶として航行するには喫水の問題もあり、陸上での客室床面はかなり高い位置になる。
よって低い位置にドアを設置して車内の階段で客室に上がるハイデッカー車のような形状にはできない。浸水を防ぐためには客室床面から直接タラップを降ろすしかなく、これを利用して乗降する。この形状から水上の桟橋から乗船することは想定されていない。
ベースがトラックなので運転席はトラックのそれに船舶用の操縦機器を追加した形になる。トラックの荷室になる部分は当然だが客室として設計され、座席にはシートベルトも装備される。窓はない代わりに荒天の際には透明シートを降ろすことで雨を防ぐ。救命胴衣等の法定艤装品は当然のことだ。
バスとして道路を走る際にはタイヤを使うので運転方法はバスと全く同じだが、サスペンションは板バネである。一方で水上で航行する際にはタイヤは使わないので、スクリュー(プロペラ)で推進力を得る。バスのハンドルもいらないので、別の舵輪を操作して舵で針路を決める。速力は概ね6.5ノット(時速12㎞)程度だ。
登録は自動車と小型船舶
バスとしての登録はナンバープレートが付いているし、小型船舶としては登録番号が側面に書かれているので、車両はダブルライセンスだということがわかる。
車内にはバスとしては自動車検査証(車検証)が積まれているし、小型船舶としては船舶検査証書(船検証)が掲示されている。つまり所定の年月で車検と船検の両方が必要だということだ。
免許はどっちも必要! 着水したらリモコンで操作
運転・操縦する人については、バスとしては貸切バスとして登録されているので、営業運転では大型二種免許が必要だ。水上に入り機関を始動させると今度は一級または二級小型船舶操縦士と、旅客船を操縦するための特定操縦免許が必要で、人もダブルライセンスでなければならない。
運転・操縦操作の実際は、専用のスロープがあり水面まで降りていく最終段階で船舶の機関を始動する。意外にも勢いよく着水するので迫力は満点だ。船舶の進水式をイメージしていただくとつかみやすいだろう。
着水するとバスのエンジンを停止する。ハンドルから舵に、さらに機関の出力や逆転を操作するリモコンを操作する。船舶として航行中は足は使用しない。