全国に25,000以上あると言われるバス路線。その中でも、県境を跨いで走る高速バス以外の一般路線バスの数は極端に少ない。そんな県境越えバスの実態はどうなっているのだろう? 今回越える境界は愛知県と長野県!
文・写真:中山修一
乗車時期:2022年11月
愛知県から長野県へ
世界を代表する日本のメーカー・トヨタ自動車のお膝元である愛知県豊田市。地図で見ると市の左側1/3ほどが都会、残りの右側には山々が連なり、工業都市でありながら観光地としての一面を持つ。
豊田市は岐阜県と長野県に隣接している。市の右端が長野県との境界になっているが、ここを跨いで長野県側まで乗り入れるコミュニティバスが運行されている。「どんぐりバス」根羽線である。
そいつに乗るならバスに乗れ!
根羽線は、どんぐりの湯前〜根羽(ねば)を結ぶ路線だ。そもそも、どんぐりの湯前バス停というのはどこにあるのか……。
豊田市のほぼ中心の山あいに位置する、紅葉のシーズンになると大変な賑わいを見せる景勝地の香嵐渓から更に奥へ進んだ、人口253人の町・武節町が、どんぐりの湯の所在地だ。
根羽線の始点まで路線バスを乗り継いで向かえる。名鉄名古屋本線の東岡崎駅と名鉄三河線の猿投駅の2箇所が最寄り(?)駅で、いずれの場合もまず「足助(あすけ)」まで向かう。
次に、どんぐりの湯方面への路線バスが足助から発着しているので、それに乗り換えて終点まで行けばようやく県境越えのスタート地点に到達する。
名鉄線の豊田市駅からも、どんぐりの湯まで直通のバスが出ているが、こちらはバスの時間が合わず、1日で県境越えをするにはちょっと不向きだ。
武節町や隣の稲武町、足助の周辺には宿泊施設もあるので、せっかく行くなら前日入りして一泊してみるのも楽しいはず。
満車の駐車場脇から出発
今回は日曜日12:18発の便を利用することにした。1日8本ある根羽線のうち長野県の根羽まで向かう便は、6:47、12:18、18:00発の3本。
もし何か起きた時のために最終便をバッファーに残しておくとして、趣味レベルの現実的な時間帯で利用できるのは実質12:18発の1本のみとなる。
バス停の名前になっている通り、乗り場の向かい側に日帰り温泉施設が建っている。ついでに浸かって行きたいところであるが、残念ながら2023年1月頃まで休館とのこと。
どんぐりの湯の隣に「道の駅 どんぐりの里いなぶ」がある。時期がちょうど紅葉のシーズンと重なっていたためか、一般車の往来が大都会の幹線道路以上に激しく渋滞が発生するほど。
駐車場も次第に埋まっていき、バスの発着場を兼ねた区画は満車になっていた。
渋滞の影響を受けたようで、出発時間ギリギリになって、どんぐりの湯前バス停にバスが入線した。2017年にモデルチェンジした日野ポンチョの36人乗りロングボディ車だ。
2カ所あるドアの後ろ側から乗車する。距離に関係なく均一運賃なので整理券などは特にないが、後払い方式である。
他に乗車した人はおらず、筆者一人を乗せてバスは出発した。風情を感じる住宅が建ち並ぶ町の表通りを抜け、どんぐりバスの営業所前を経由して、一路根羽へと走り始める。