本州と四国を繋ぐアクセスルートの一つが瀬戸大橋だ。公共交通機関で行くなら通常は電車一択かもしれないが、実はバスでも通れる。しかも高速バスではない一般路線バスを使って、だ。
文・写真:中山修一
■電車で渡るのが当たり前? 瀬戸大橋を通る公共交通機関
1988年に開通した瀬戸大橋は、下段に鉄道・上段に道路を設けた2段構造で、3つのルートがある本州四国連絡橋のうち唯一の鉄道道路併用橋となっている。
瀬戸大橋の全区間が高速道路のE30 瀬戸中央自動車道になっている。かつては下を走る鉄道と高速バスが競合していた時代もあったようだが、現在のところ瀬戸大橋を経由する高速バスは結構少ない。
さらに、公共交通機関で瀬戸大橋エリアを移動するとなれば、使いやすさと所要時間で鉄道が圧倒する。もはや近郊区間なら鉄道一択と言えるほどだが、瀬戸大橋を渡る短距離バスが1路線だけある。
香川県のバス事業者である琴参バスが運行する「瀬戸大橋線」がそれだ。自ずと高速道路を通るので高速バスかと思いきや、前述の「結構少ない」高速バスには含まれない。何と一般路線バスなのだ。
■一定の条件を満たした認可!? 琴参バス瀬戸大橋線
琴参バス瀬戸大橋線は、香川県のJR坂出駅前と岡山県のJR児島駅前を結ぶ路線だ。過去にも同様のバス路線は存在していたが、本州〜四国間を移動するには途中でバスを乗り継ぐ必要があった。
坂出と児島を直通するようになったのは2021年4月からで、意外と最近できた路線とも言える。平日1日5本、土日祝4本で、児島行きが下り、坂出行きが上りとなっている。
利用当時、たまには瀬戸大橋の下ではなく上を通りたいという欲求にかられ、時刻表に目をやると、イメージにぴったりな琴参バス瀬戸大橋線を発見。たまたま出発時刻が近かったため、試しに坂出駅から乗りバスしてみることにした。
当日は坂出12:00発(2023年現在のダイヤでは11:30発に相当)の便に乗車、バス停前で待っていた地元の利用者を4人ほど乗せて出発した。
5分ほどかけて坂出駅周辺の停留所を4つ経由してから、バスはそのまま瀬戸中央自動車道坂出北インターに向かう。
法律上、一般路線バス(路線車)は高速道路を通れないのが原則だ。ところが、一定の条件を満たした上で認可を受けると、一般路線バスでも高速道路を通って良い、基準緩和バスという特例が存在する。
路線全体の距離または総所要時間のうち、高速道路を走行する部分が2分の1以下で、60km/h以下の速度で走り、その旨を後部に掲示させるのが具体的な条件だ。
このバス路線の走行距離は約22kmあり、高速区間が約15kmなので距離的には対象外ながら、通しの所要時間およそ1時間10分に対して高速道路の走行時間は29分くらい。時間のほうで条件をクリアしている。
ちなみに全国を見回すと、相鉄バス旭16系統、西鉄バス北九州170番、東武バスウエスト新高01系統のような、高速道路(自動車専用道路)経由の路線バスがごく少数ながら走っている。