回送のバスでランチはダメ!? 超厳密な運輸規則っていったいなんだ?


 みなさん、こんにちは。路線バスの運転手をしている運び屋フランクです。先日、路線バスの運転手が休憩中に奥様をバスに乗せて食事をし、処分されたニュースがありましたね。少し厳しすぎるのではという声もありましたが、バス事業は法規に縛られているので仕方がないと思います。今回の話はバスの運転手や乗客が守らなければならないルールがテーマ。最近ニュースになった事例とともに、法規の内容を一部紹介します。

文/運屋フランク、写真/PIXTA(ピクスタ)、運屋フランク

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バス事業の憲法「旅客自動車運送事業運輸規則」に従い業務を行う

 私のようなバスに関わる人間や事業者は、バス事業を行う上でさまざまな法規を守らなければなりません。道路交通法や道路車両運送法はもちろん絶対遵守です。これはみなさんの乗用車においても同じですね。バス事業者にはさらに、国土交通省が定める「旅客自動車運送事業運輸規則」が適用されます。規則という文字だけを見れば法律よりも緩いような印象を持ちますが、これは事実上バス事業の憲法。違反があれば、運行停止の末、バスのナンバーも取り上げられるなど、厳しい措置がとられます。

旅客自動車運送事業運輸規則は全69条。クレーム処理はそのうちの第1章(総則)の第3条に定められています

適切な処理と情報の保存が求められるクレーム対応

 冒頭で触れた奥様との“車内ランチ”の件は、市民からのクレームが発端のようですが、そもそも回送中のバスに人を乗せること自体がアウト。また、クレーム処理についても運輸規則の第三条で定められています。大まかな内容は、苦情の連絡があった場合は速やかに対応、説明しその経緯を1年間保存しなければなりません。つまり、うやむやにはできないのです。バス会社に勤めている私も、会社がクレームに敏感なことは肌で感じていますが、それは運輸規則があるからです。正直、微笑ましい夫婦のランチなのだから勘弁してあげてよと思います。しかし、苦情が上がったからには会社側も適切に対応をしなければならないのです。

遅延が生じている場合もそれらを掲示するよう規則に定められています

刃物や燃料等の危険物は持ち込み禁止

 最近、電車の中で人を殺傷するような痛ましい事件がありましたね。また、酔客がタクシー運転手に暴行を加え、挙げ句の果てにそのタクシーを強奪した事件もありました。正直、バスも対岸の火事ではなく、私は怖いです。私の地元では、バスは電車以上に身近な交通機関です。しかも、ワンマン運行なので危害を加えられたらひとたまりもありません。

 電車の事件では、犯人が車内に刃物を持ち込みました。これは乗客側の規則違反です。運輸規則の第五十二条は、車内への危険物の持ち込みを制限しており、路線バスでも同様です。具体的な危険物とは燃料や火薬、刃物などです。とはいえ、危険を回避できるわけではありませんので、今後一層厳しく取り締まられると思います。

携行缶に入れていたとしても危険物の持ち込みは原則禁止です

泥酔客は乗車拒否ができるが……

 次に泥酔者によるタクシー強奪事件ですが、実は泥酔客の乗車を拒否することができます。さきほどの運輸規則の第十三条に定められていて、泥酔者や危険物を持ち込む人、インフルエンザを含めた感染症にかかっている人、もしくはその疑いがある人の乗車を拒否することができます。じゃあ安全と思いきや、現実はそうではありません。乗車拒否はかなりハードルが高いのです。

 例えば地方路線は自治体からの助成で成り立っているところがあります。運転手の所見で乗車拒否をしてしまうと、ヘタをすると自治体への説明が求められます。実際私の所属するバス会社では、第十三条に係る乗客を拒否した事例があるのですが、それは何度も迷惑行為をされた上、警察と自治体に事情を説明した上で拒否をしました。

 今、差別などへの目が厳しい世の中です。運転手の所見で判断してしまうと、クレームになりますし、ニュースにもなるでしょう。運輸規則に定められているからといって、運転手が絶対に守られるということではありません。ただ、バスにはドラレコがついています。暴言を吐かれたり暴力を振るわれたりすれば証拠が残るので、安心材料がないわけではありません。

運輸規則上、泥酔客は乗車拒否ができるものの、現実に拒否することはかなり難しいです

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