泥酔客は乗車拒否ができるが……
次に泥酔者によるタクシー強奪事件ですが、実は泥酔客の乗車を拒否することができます。さきほどの運輸規則の第十三条に定められていて、泥酔者や危険物を持ち込む人、インフルエンザを含めた感染症にかかっている人、もしくはその疑いがある人の乗車を拒否することができます。じゃあ安全と思いきや、現実はそうではありません。乗車拒否はかなりハードルが高いのです。
例えば地方路線は自治体からの助成で成り立っているところがあります。運転手の所見で乗車拒否をしてしまうと、ヘタをすると自治体への説明が求められます。実際私の所属するバス会社では、第十三条に係る乗客を拒否した事例があるのですが、それは何度も迷惑行為をされた上、警察と自治体に事情を説明した上で拒否をしました。
今、差別などへの目が厳しい世の中です。運転手の所見で判断してしまうと、クレームになりますし、ニュースにもなるでしょう。運輸規則に定められているからといって、運転手が絶対に守られるということではありません。ただ、バスにはドラレコがついています。暴言を吐かれたり暴力を振るわれたりすれば証拠が残るので、安心材料がないわけではありません。
タイヤ脱落事故は日常点検で防げる
つい先日のことですが、走行中のトラックからタイヤが外れ、歩行者を直撃した事故がありました。こういったことを防ぐため、運輸規則の第四十七条では運行前の日常点検が定められています。バスもトラックも事故を避けるための実務を厳密に行っているのです。
その点検項目にはタイヤ及びホイールも含まれています。どのような点検方法かというと、ハンマーでタイヤとホイールのナットを叩いて確認しています。きちんと締まっているナットは叩くと「カン」と気持ちの良い音が響きます。緩んでいると音が濁りますし、ナットが少し動きます。ホイール1本の点検は、時間にして1分もかかりません。これだけで脱落を防ぐことができます。ちなみに、どのくらいのトルクでナットを締めているかというと、成人男性1人分ほど(おおよそ40〜60kgm)、乗用車の5倍ほどの締め付けトルクです。
いかがでしたか。今回は最近ニュースになった事例をもとにバス関連のルールを紹介しました。もちろんこれは氷山の一角。全ての法令を読んでいると、バスに自由度はほとんどないことに気づきますが、公共交通機関なので仕方がありません。
しかし、その中でも自由度のある領域はあります。それはずばり、お客様への接客サービスです。接客サービスは運転手個人の裁量です。確信を持って言えるのは、前向きに仕事に励んでいる運転手はクレームも事故も少ないように感じます。
私ですか? もちろん私は運転席で常に笑顔で接客しています!
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