スバルWRX STIと名機EJ20の軌跡と行方

3つの顔を持つ個性派となった2代目

 2000年10月、インプレッサは初めてモデルチェンジを行い、WRX STIはワイドボディを採用する。可変吸気システムを採用した改良型のEJ20型水平対向4気筒DOHCターボはトルクを増強し、スポーツABSと強化ブレーキで武装した。

 2代目は初期の丸目ヘッドライト、中期の涙目、そして2005年からはスプレッドウイングスグリル採用の鷹の目と、3つに分類される。STIのコンプリートカーは足のピロボール化やブレーキの強化を行い、2002年秋に登場したC型からはエキマニを等長としたからエンジン音も変わった。この時期、最大トルクは40kgmの大台に乗っている。 

3ナンバーセダンとなった2代目。フェイスリフトを繰り返し、3タイプのフロントマスクが存在する

勝利の為にハッチバックへと転身した3代目

 インプレッサの3代目は2007年に登場した。フェンダーを広げたWRX STIはラリー参戦を意識して5ドアハッチバックだけの設定だ。

 EJ20型エンジンは吸気バルブだけでなく排気バルブの開閉タイミングも連続的に制御するデュアルAVCSを採用し、ターボも形状を変えている。また、マルチモードDCCSや挙動を安定させるマルチモードVDCなどを導入し、車両制御を緻密に行う。走行モードを切り替えられるSドライブの採用もハイライトのひとつだ。

大胆にもハッチバックへの転身を図った3代目。全てはWRCでの勝利のため。しかし、モデル後半で、セダン仕様が復活を果たした

 2009年7月にはボールベアリングターボや機械式LSDを組み込んだ「スペックC」を投入。10年にはセダンのWRX STIを復活させている。また、現行モデルの「S4」に相当する「Aライン」と名付けた5速AT仕様も誕生した。快適性にも配慮したから選択の間口は大きく広がった。

高性能スポーツセダンとして鍛え上げられた4代目

 現行の4代目は、14年夏にベールを脱いだ。WRX STIはインプレッサから独立し、4ドアセダンだけに絞り込まれた。WRCから撤退したこともあり、4代目はハイスピードツアラーとしての性格を強く打ち出している。

インプレッサから独立し、WRX STIとなった4代目。WRC撤退から、ラリーカーよりもロードカーの色合いが強められた

 ハンドリング性能にも磨きをかけ、マルチモードDCCSに加え、アクティブトルクベクタリングを採用して意のままの痛快な走りを実現した。19年秋、数多くの栄光に彩られたEJ20型DOHCターボ搭載のWRX STIは勇退することを表明している。

 モータースポーツの世界で技術を磨き、2L最強のスポーツセダンに成長したのがWRX STIだ。最新モデルのハンドリングは驚くほど正確で、コントロールしやすい。運転が上手くなったと思わせるほどオン・ザ・レールの走りを楽しむことができる。サーキットでもワインディングロードでも操る楽しさは格別だ。

 また、2ℓのEJ20型水平対向4気筒DOHCターボも登場直後と比べると、見違えるほど進化した。最初のころは高回転のパンチがなく、実用域のトルクも細くて扱いにくかった。だが、改良に次ぐ改良とエンジニアの努力によって、「日本一の名機」と呼ばれる高みにまで到達したのである。

 8000回転まで軽やかに回り、S♯モードではシートバックに身体を押し付けられる強烈な加速Gを楽しむことができた。改良された強化タイプの6速MTも小気味よい変速が可能だ。スパルタンモデルから大人のプレミアムスポーツへと成長したのである。

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