■ヤリスクロスはライズとC-HRの中間
そして、今秋、日本で発売開始されることとなったヤリスクロスは、サイズ的にはライズとC-HRの中間に位置する。欧州市場にも2021年以降に投入予定だそうだ。
ヤリスと同じ「GA-B」プラットフォームを採用しつつ、ボディサイズを拡大。エクステリアは、グリルやリアの傾斜したウィンドウとテールランプなどが、どことなく「RAV4」を連想させる、マッシブな雰囲気をもつ。エンジンは、ヤリスと同様の1.5L直3ハイブリッドと1.5リットル直3ガソリンエンジン、これにCVTもしくは6速MTが組み合わさる。
手引き式のサイドブレーキしかなかったヤリスに対し、ヤリスクロスは電動パーキングブレーキとなっており、おそらく全車速追従型のACC(アダプティブクルーズコントロール)が備わると予想される(※ヤリスは30km/h以下で解除される)。また、使い勝手がよさそうな2分割できる荷室デッキボードも良い点だ。
ヤリスクロスに関しては、現時点では詳細がわかっていないので、短所については想像となるが、気になるのは、ホイールベースが短く、かつ傾斜したリアウィンドウによって、後席を後方に配置できず、ヤリスと同様に狭く感じるのでは、という点だ。
【画像ギャラリー】売れそうな雰囲気でまくりの新型ヤリスクロスと強力ライバルたち
■キャラクターの棲み分けはできているのか
この3台、実に巧妙にキャラクター分けができている。ボディサイズに関しては、序列が完璧にできているし、デザインに関しても、ライズがオフロード寄り、C-HRが都会派クロスオーバー、そしてヤリスクロスは欧州車に似たスタイリッシュなSUVといったように、少しずつずらしたように見える。パワートレインも、ヤリスクロスにガソリンモデルを用意したことで、エントリー価格を下げることができ、ユーザーの取り込みに余念がない。これほど見事な作り分けが出来るのは、トヨタならではだ。
■ヤリスクロスは売れるのか
ヤリスクロスの販売価格が、まだ明らかになっていないのだが、おそらく、ライズよりも少しだけ高い価格設定で来るものと思われる。ライズよりももう少ししっかりとした走りのコンパクトSUVが欲しい、と感じていたユーザーがヤリスクロスに飛びつく可能性は大いにあるだろう。
デザインも流行のRAV4チックであるし、若干割高なC-HRと比較して、「こちらの方がいいかも」となる可能性も考えられる。期待が持てる一台であることは間違いない。
■喰い合ってでも売るべきなのか
現時点のトヨタのSUVラインアップは、ライズ、C-HR、RAV4、ハリアー(6月フルモデルチェンジ)、ランクルプラド、ランドクルーザー、ハイラックス、そして、レクサスのRX、NX、RX、LX。ヤリスクロスを加えると、その数なんと12車種。まさにSUVのフルラインアップだ。
国内全体の新車販売台数が伸びているわけではないので、今年秋にヤリスクロスがデビューすれば、サイズ感が似通っているライズやC-HRは、多少は販売台数を減らすことになるだろう。「喰い合い」が起きるのは想定しながらも、トヨタがヤリスクロスを開発したのは、真の目的が「他社車からの乗り換えを促進すること」、つまり国内のトヨタのシェアをじりじりと押し上げることにあるからだ。
トヨタの販売会社は、この2020年5月から、全店で全車併売を開始する。顧客側からすると、一店舗でトヨタ車全車のクルマの比較ができるようになるわけだ。ライズを見に来た顧客が、横に飾ってある新型「ヤリスクロス」を見て、心映りして検討してくれるかもしれないし、はたまた、もうちょっと高級なC-HRを検討してくれるかもしれない。トヨタ販売店にいって、これだけの選択肢があれば、顧客側は「お腹いっぱい」状態となり、他メーカーの販売店に足を運ぶことを、極端に減らすことができる。
さらにトヨタは、出したモデルへ定期的にマイナーチェンジを行い、商品力維持を続けている。他の自動車メーカーは、トヨタのこのスピード感についていけず、国内への消極的な商品投入も相まって、国内シェアが奪われていっている(表2参照)。このままでは、この流れはさらに加速していき、「2台に1台がトヨタ車」となる日もそう遠くない。
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