■乗っている車で社会的ステイタスがわかる!? 借金も社会的信用になる
そのような新車購入スタイルが基本なのだが、新車代金の支払い方法がローンやリースが主流(※2)となると、その与信結果が出るまで数時間もディーラーのショールームで待たされることになり、「歯医者と新車ディーラーはあまり行きたくない」というようなことを言われるようになった。
※2/マネーロンダリングを防ぐ意味もあり、小切手以外での一括購入は原則できない。
ちなみにアメリカでは、欲しいクルマを買うために満額の融資が必ずしも受けられるわけでもない。
つまり、お気に入りのモデルを購入するために300万円必要であっても、与信ではクレジットカード利用から不動産ローンまで、そのひとの借り入れ状況や返済状況がすべて審査されることになるので、結果的にそのひとの身の丈にあった融資しか受けることができない。
収入相応の新車(新車が買えればまだいいほう)しか買えないので、背伸びして高いクルマを買おうとしても、融資額が不足してしまうのである。そのようなことから、アメリカでは乗っているクルマでそのひとの社会的ステイタスがわかるものともされている。
返済に問題がなくても、借り入れ履歴が少なければ希望融資がなかなか通らないことにもなる。“いくら借金しているか”も社会的信用をはかるポイントとなっているのである。
チャットを使った、いわゆるリモート商談では与信にかかる時間も別のことに使えるといった利便性もあるようである。
アメリカでの新車購入商談の特徴は、“いくら値引かせる”ではなく、“いくらまでディーラー利益を上乗せさせることを許すか”というのが交渉のポイントとなっている。
■ショールームでの商談風景は過去のものとなる? 将来的にはセールスマンのAI化も
実はWeb上で、新車の販売原価というものが複数のサイトで公開されているのである。誰でもアクセス可能なものであり、ここで公開されている販売原価をベースに、例えば“500ドルまでならディーラー利益の上乗せOK”といった交渉を進めることになるのだ。
さらに、一部のディーラーが専門業者に対して、本来ならメーカーとの秘匿事項となる取引条件(販売原価など)を公開し、これら集まった秘匿情報をもとに新車見積りの比較検討ができるサイトも開設されている。
ここで比較検討して納得したクルマが決まったら、情報公開したディーラーのサイトへ移動して購入できるようになっているとのことである。
代替えで新車購入を検討していても、いわゆる下取り車は個人間売買が発達しているので、そちらを使って処分しているようである。
「実車はチェックしないのか?」という疑問もあるかもしれない。これについては、アメリカでは年間を通じて各州でローカルなモーターショーが開催されており、その会場では試乗コーナーも充実している。モーターショーで実車チェックを行い、購入ではオンラインを活用しているようである。
そのため、近年ではモーターショー会場のブースに、可能な限り市販車を展示するメーカーも目立っている。
チャット商談はいまのところ、現場のセールスマンから選抜した専属要員に担当させている。事実、最近はショールームに行っても昔ほどセールスマンは見かけなくなった。
前出の事情通によると「今はベースとなるビッグデータ収集中といったところでしょう。人間同士のやりとりを情報として貯めこみ、近い将来にはAIがチャット商談の窓口になりそうです」と語ってくれた。
日本とは異なり、セールスマンは歩合給比率がかなり高いこともあり、セールスマンのAI化による人件費の抑制効果はかなり高まるともいえよう。
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