今やセダンは少数派!? “日産版レクサス“インフィニティがSUVだらけのワケ

 主に北米市場をターゲットにする、日産の高級車チャンネルINFINITI(インフィニティ)が先日、新型のクーペSUV「QX55」を、2020年11月11日にデジタルワールドプレミアすると発表した。

 QX50とQX60の間に位置する、流麗なルーフデザインのSUVとして、シュリンクしてしまったラインアップに活気を取り戻そう、ということだ。

 インフィニティのラインナップを見てみると、セダンはQ50、Q70(北米ではすでに廃止)、クーペのQ60のみであり、その他はすべてSUVとなっている。そこへ、これまたSUVであるQX55が追加されるとなると、さらにSUV比率は高まることになる。

 高級車チャンネルであれば、ステータス性の高い「セダン」をラインアップするというのがこれまでの流れだ。

 現に、奇しくもインフィニティと「同い年(両者とも1989年に誕生)」であるレクサスは、今年秋から冬にかけて、スポーツセダン「IS」とフラグシップセダン「LS」のモデルチェンジをするなど、主力セダンの競争力ブラッシュアップに余念がない。

 なぜインフィニティは、SUVに特化するようになったのだろうか。

文:吉川賢一/写真:NISSAN、NISSAN USA

【画像ギャラリー】日産の北米高級ブランド「インフィニティ」QX50とインフィニティのSUV全車種


■なんと北米のインフィニティは5車種のみ

INFINITI QX60。5ドアの大型SUVだ

 インフィニティのラインナップは、主戦場である北米市場では、現在、Q50(日本名:スカイライン)、Q60、QX50、QX60、QX80(アルマーダの兄弟車)という、なんと5車種のみ。

 フラッグシップカーであったQ70(2009年~)が2019年末をもって販売終了、QX70(2008年~)も2017モデルを最後に販売終了されている。

 ただし、中国市場では、Q70とQX70は、いまだ現役で販売されている。中国市場は、インフィニティのグローバル本社が香港にあったこともあり(現在は横浜の日産グローバル本社へ移転)、ラインナップが手厚い。

 セダンがQ50、Q50L(Q50のロングホイールベース版)、Q60、Q70L(日本のシーマと同じホイールベースに延長したもの)、そしてSUVはQX30、QX50、QX60、QX70、QX80、合計で9車種だ。

INFINITI QX80。大きく四角い車格がいかにもアメリカらしい

 欧州市場では、Q30、QX30、Q50の3車種が販売されている。ちなみにQ30は、メルセデスベンツのAクラスのプラットフォームを使い、インフィニティが化粧直しと足回りのチューニングをしたプレミアムコンパクトだ。

 プロポーションも悪くなく、日本でも売れそうな気配がある。

 その他、アジアや大洋州、中東でも、インフィニティブランドは展開されているが、ラインアップは少ない。

■レクサスとは対照的? インフィニティはなぜSUVばかりなのか

同じ北米市場でも日産ブランドでは写真のヴァーサをはじめとしたセダンやスポーツカー、トラックなど豊富なラインナップだ

 しかしながら、日産ブランドで見れば、SUVではない車型もラインナップされている。例えば北米市場だと、セダンはヴァーサ、セントラ、アルティマ、マキシマ、スポーツカーだとZやGT-R、トラック系だとタイタンやフロンティア、など、わりと豊富にある。

 では、なぜインフィニティのラインアップはSUVばかりなのか。

 日産のFRプラットフォームはかなり古く、現行型フーガ(Y51)は2009年登場、現行スカイライン(V37)も2014年登場だ。他メーカーが続々とプラットフォーム更新をしているなかで、軽量化や動性能の面で、世代遅れとなっていると言わざるを得ない。

 車体骨格剛性強化やサスペンション変更など、改良はなされてはいるが、最新のジャーマン3(=ベンツ、BMW、アウディ)やレクサスと戦うには、このプラットフォームでは、どうしても戦闘力に欠けてしまう。

 しかし、SUVであれば、アルティマやマキシマで使用している、比較的新しいDプラットフォームを使うことができる。

 車体骨格剛性などに新たな知見を入れた新技術が盛り込まれていることに加え、エンジン縦置きFRのレイアウトと比べて省スペースで済み、海外にある現地工場でも製造ができ価格を抑えられる(※FRプラットフォーム車は日産栃木工場がメインであり、そこから世界中へ輸出している)。

FRとしてデビューしたQX50だが、現行モデルからはFFに移行している

 荷物がたくさん積み込めて、視界も高くて見晴らしがよく、安全性も高くてデザインもスタイリッシュ。それでいて、ボディ形状で優位にたつセダンやクーペ、ハッチバックと比べても遜色ない走りをする、昨今のSUV。今後もこの流行はしばらく続くと見込まれる。

 この流行を逃すまいと、世界中の自動車メーカーが、SUVのフルラインアップを仕掛けてきており、頑なにスポーツカーにこだわってきたフェラーリですら、SUVを計画中だという。

 SUVであれば、インフィニティも、プレミアムブランドとして恥ずかしくない最新の競争力を持ったプラットフォームを使うことができる。

 しかも、そのSUVは今、ビッグウェーブに乗っている。インフィニティは、SUVをラインアップすることで、体力を温存しようとしているのではないだろうか。

 もちろんインフィニティとしても、他社のプレミアムメーカーのように、フラグシップセダンをラインアップしたいのはやまやまだろう。しかし今は生き残ることこそがファーストプライオリティである。SUVに特化しなければならないのは、インフィニティとしても苦渋の決断に違いない。

■もはやFRプラットフォームは必要ない!?

スポーツセダンQ50はもちろん、QX系も電動化は避けて通れないだろう

 しかしながら、このFRプラットフォームは今後、そもそも必要なくなってくる可能性がある。

 昨今のセダンは、4WD化が想像以上に進んでいる。得に、ハイパワーエンジン搭載車になるほど、後輪駆動ではトラクション性能や、高い高速走行安定性が保てない。そのため、「FRである必要性」を見出しにくくなっている。

 しかも現在は、4WD前提のSUVの方が開発優先度は高い。となると、人気が下火のセダンをあえて「FR前提」で作る理由が、ますますなくなるのだ。

 電動化はインフィニティも避けては通れない。現在のQ50は、3.5Lガソリンエンジン+ハイブリッドグレードはFRのみだ。

 そのため、そのQ50をベースに4WD化をするならば、「前輪を電動化したFRベースの4WD」も考えられるが、そもそも後輪をモーター駆動にしてしまえば、トランスファーやプロペラシャフト分のコストも不要となり、同時に軽量化と重量配分の適正化も果たせる。

 フラッグシップの「象徴」として、後輪駆動がどうしても欲しければ、フロントの駆動ユニットを取り去ってしまえばよい。ホンダが発表した「HONDA e」のように、電動後輪駆動になっていく可能性は大いにあるだろう。

 筆者の妄想だが、インフィニティのセダンの更新が遅れている理由は、もしかすると、こうしたセダン向けの新型電動プラットフォームも考えているのではないだろうか、とも考えられる。

【画像ギャラリー】日産の北米高級ブランド「インフィニティ」QX50とインフィニティのSUV全車種

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