2011年3月11日14時46分頃、宮城県東南東沖130kmを震源とする東北地方太平洋沖地震が発生しました。これは日本周辺における観測史上最大の地震で、同年4月1日、日本政府はこの災害を「東日本大震災」とすることを了解しました。
この地震により東北~関東地方の太平洋岸広範囲にわたって最大40mを超える津波が発生。震災による死者・行方不明者は1万8424名を数え(警察庁2019.12.10発表資料)、建築物の全壊・半壊は40万戸以上、停電世帯は800万戸以上を数えました。
この巨大な震災から10年、本稿ではあらためて「防災・減災・備災のためのカーライフ」を考えてみたいと思います。災害に備えるクルマ選び、災害に備える(自動車ユーザーにとっても)心構えなどを、モータージャーナリストの諸星陽一氏に伺いました。
文/諸星陽一 写真/諸星陽一、池之平昌信、ベストカー編集部
■東日本大震災からもうすぐ10年…
あの忌まわしい東日本大震災からまもなく10年が経とうとしています。
震災当日、私は発売されたばかりの日産リーフの試乗会に参加していました。試乗中に地震が発生しました。予定では指定された充電スポットで充電体験を行うはずでしたが、停電が発生していたため、それは叶いませんでした。
もっとも停電ではガソリンスタンドのポンプも動かず、結局どのようなクルマでもエネルギー補給はできない状態でした。
震災当日から24日後に物資輸送のボランティア活動をするために宮城県仙台市を訪れ、名取市などの大きな被害を受けた地域を目の当たりにしました。その悲惨な光景は今も忘れることができません。
実際に被災した方々に比べれば、震災後しばらくして被害のほとんどなかった東京から来たボランティアなどが感じる思いなどは万分の一にも値しないでしょうが、それでもこの震災後にどう生き延びるかはまさにサバイバルであったのだろうと感じることはできました。
■実体験でわかる震災時にも強いクルマ
当日、エスティマハイブリッドに乗って被災地を目指しました。燃料は東京で満タンにして出発、さらにジェリカンに20Lのガソリンを予備として搭載、東北に入る前に途中で一度ガソリンを給油したかもしれません。
当時、被災地は燃料不足で必要な人が燃料を入れられないという話が伝わってきていたため、被災地の負担を減らすことが目的でした。
地震によって停電が起きてしまえばガソリンスタンドのポンプは動かず、スタンドの地下タンクにガソリンが残っていても給油することができません。
現在は、災害対応ガソリンスタンドも増えてきていて、自家発電によってポンプを動かせる施設が増えてきていますが、当時はクルマにエネルギー補給することが困難な状況だったのです。道路が分断され、タンクローリーが走れないということも、燃料不足に拍車を掛けました。
このような状況を体験していると、クルマを動かすためのエネルギーにガソリン給油と充電の両方で補給が可能なPHVは災害に強いクルマであるという印象は大きくなります。電気が復旧しなくても災害対応ガソリンスタンドで給油できれば大丈夫、ガソリンが給油できなくても電気が充電できれば大丈夫というのは大きな武器です。
当時、使用したエスティマハイブリッドはPHVではありませんでしたが、100V-1500Wの電源供給も可能で、いざというときには電気を供給することで役に立てる可能性もあると思いました。
仙台へのアクセスは東北自動車道を使いました。どうにか通れるようになったばかりの東北自動車道は、高速道路とは思えないような路面のうねりがあり、かなり苦労して走った記憶があります。
また、被災地では道路脇に瓦礫が積み上げられていたり、道路に土や砂利が流れ出ていたり、ひび割れや段差も多く見られました。厳しい道路状況を考えると、クルマのタイプとしてはSUVがマッチすることは間違いないでしょう。
セダンタイプのPHVなどもエネルギー面ではほとんど劣ることなく使えるでしょうが、車内で寝泊まりしたり、荒れた路面を走って物資を輸送したり、という点を考慮するとセダンタイプよりもSUVのほうが使い勝手はいいはずです。
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