元陸上自衛隊の幹部で、東日本大震災など災害対応の経験が豊富な二見龍氏。近著の『自衛隊式セルフコントロール』では、日常生活から災害対応まで幅広く役立つ自衛隊のノウハウが盛り込まれており、「目からウロコ」「すぐに実践できる」などと非常に好評だ。
近年頻発する「想定外」の大災害の数々。私たちはいかに準備をしておくべきか、生き延びるためのポイントを指南してもらった。
文/二見 龍(ふたみ りゅう) 写真/写真AC
■災害の発生現場は、危険がいっぱいの「敵地」
自衛隊では、斥候(偵察)訓練で敵の支配する地域に潜入した場合、決して無理な行動をしません。敵に行動を察知され、捕捉されてしまうからです。
敵地のまっただ中のような、未知で、自身の意思や能力を十分に発揮させられない環境下では、何が起こるのか予想がつかないため、無理な行動に出ることは危険です。危険を感じ取った場合、まずは見つからないようにして様子を伺います。そして、安全が確認できなければ、その場から静かに離脱して、安全が確保できる場所まで移動します。
敵地の斥候は、災害時の備えの対応に通じるところがあります。
たとえ住み慣れた街でも、災害が起きればそこは未知の敵地と同じような状況になりかねません。安全を確保できる場所を平時から確認し、安全に移動できるルートを検討しておきましょう。
まずは、ハザードマップで危険なエリアを確認します。次に橋や崖、万年塀などを実際に見て把握しておき、安全に通行できるルートを歩いてみます。
この時に大切なのは、必ず現場に行って、体験しておくことです。「地図だけ見て」とか、「誰かに教わって」というだけでは、肝心な時に役に立ちません。できれば、何度も通って、自然に身体が反応できるようになっておくことが大切です。
■ひとつずつ、危険を洗い出しておく
次に、災害時を想定して注意しておきたいのが、ケガのリスクについてです。
災害が起きた場合、どこでケガを負う可能性があるのか、1日を過ごす場所ごとに区分して、洗い出しておきましょう。多くの人は、家と職場、そして家と職場をつなぐ通勤ルートがそれにあたると思われます。
家の中で弱点となるのは寝ている時です。寝ている時にタンスや本棚、テレビなどの重いものが倒れてくるような状態は、命にかかわるほど危険です。また、廊下や階段、玄関に物を積んでいるのもダメです。避難経路が遮断されるだけでなく、本来ならば物が少なく安全を確保しやすい場所の廊下が、災害時に役に立たないからです。
いざという時の安全確保のためには、寝室のレイアウトを見直し、家具の転倒防止処置や避難経路の廊下や階段、玄関をクリアに整理しておくことが大事です。
そして、家の中の配置は、しっかりと身体に叩き込んでおきましょう。目をつぶっていても行きたいところへ行けるようにしておくと、真っ暗闇や四つん這いになっての避難が必要な時でも、行動ができます。
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