北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。
第50回は、越冬のために、シベリアから日本へやってくる渡り鳥、マガンの群れの画像をお届けします。
群れと言っても、その数は万単位。空を見上げた自分の視界が覆い尽くされるほどの数で、スケールの大きな北海道ならでは光景です。
写真・文/佐藤圭
【画像ギャラリー】茜色に染まった空に7万羽のマガンが一斉に飛び立つ!
夕方の帰りは三々五々、朝の出勤は数万羽が一斉に
北海道に春と秋に数万羽の群れでやってくる渡り鳥がいます。
カモの仲間のマガンです。
マガンは、秋にシベリアから日本に飛来し、主に本州の石川県、新潟県、宮城県などで越冬し、春に北へ帰っていきます。
その往復で休憩するのが北海道で、代表的な休憩地が、札幌から北東に42km、美唄市の西端に位置する宮島沼なんです。
それほど大きくない沼ですが、最盛期には、東アジアに生息するマガンの半数、約7万羽が飛来します。
7万羽といってもイメージしにくいかもしれませんね。どういう状態かというと、一斉に飛び立つと空が暗くなるほどで、まさに圧巻の光景です。
マガンは、昼間は沼の近くの畑や水田に出かけてエサを食べ、暗くなると眠るために沼に戻ります。
キツネなどの天敵に襲われないように、水面で眠ると考えられます。
早朝、エサ場へ沼から一斉に飛び立つことを「ねぐら立ち」、夕方、沼に帰ることを「ねぐら入り」と言います。
「ねぐら入り」は、数十~数百の群れに分かれて、夕焼けの空を三々五々、沼に帰ってくます。
ところが、「ねぐら立ち」では、数万の群れが一斉に飛び立つんです。まるで湖全体に敷いたじゅうたんが一気に引きはがされるように見えます。
ゴゴゴゴ~という地鳴りのような羽音と水しぶきの音が鳴り響き、空一面がマガンたちで覆われてしまします。聴覚と視覚を圧倒されて、呆然! これぞ、大自然の驚異を感じる迫力です。
人間界では、コロナ禍が続いていますが、近年、渡り鳥から鳥インフルエンザのウイルスが見つかったというニュースを見ることがあります。マガンは群れで動く習性があるので、1羽が伝染すると、一気に蔓延する可能性があります。
今年は、マガンたちが病に冒されることなく、無事に渡って行けるように祈ってます。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。MILLETアドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
コメント
コメントの使い方