開発費を抑えてヒット量産!? プラットフォーム共有の功と罪

長期使用もプラットフォーム共有の弊害? 「日産ノート(E12型)」「日産マーチ(K13型)」

共有は諸刃の剣!? プラットフォーム共有の功罪を考察する
ハイブリッドカーの新しいスタイルを示してみせたノートe-POWER。多用途プラットフォームはこうしたバリエーション展開も比較的容易に行える

 日産が2010年に投入したのが「Vプラットフォーム」。VはVersatile(多用途の、汎用性が高い)の略で、その名称どおり、日産だけでなくグループ企業のルノー製モデルなど、さまざまな車種に用いられた。

 Vプラットフォーム採用車で最も成功したのが2代目ノートのE12型だろう。2012年に登場したE12型は、使い勝手の良さや基本性能の高さから人気モデルとなり、2016年にはシリーズ式ハイブリッドシステム搭載のe-POWERもラインナップに追加。さらなる人気を獲得した。

 しかし、この頃から基本設計の古さが指摘されることがあったのも事実。K13型マーチ(2010年)に初採用され、数多くのモデルを生み出したVプラットフォームだったが、2020年発表のE13型ノートでは、新設計のCMF−Bプラットフォームが使われている。

 基本設計に優れたプラットフォームは長期間にわたって使用されるが、ライバルたちが進化すると古さが目立ってしまうケースもある。メーカーにとってはプラットフォーム刷新時期の判断が難しいところだ。

VWグループのSUVは全部同じ!? 「ポルシェ カイエン」「VW トゥアレグ」他

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ポルシェ製SUVのカイエン(現行型)。ボディのデザインはそれまでのポルシェ製スポーツカーの流れをくみ、ひと目でポルシェだとわかるのも特徴のひとつ

 スポーツカーメーカーとして知られたポルシェが2002年に自社初のSUVモデルを登場させ、世界にインパクトを与えるとともに同社の新たなイメージを確立した。そのモデルがカイエンだ。カイエンはフォルクスワーゲン(VW)のSUV・トゥアレグと共通のプラットフォームを採用し、3代目となった現行モデルでも同様のシステムを継続している。

 この3代目カイエンのPL7系MLBプラットフォームは、トゥアレグのみならずアウディ Q7やランボルギーニ ウルスでも用いられている。これは各メーカーがVWグループの傘下にあるからであり、グループのメリットを生かしたもの。

 プラットフォームを共用することによってコストを抑えることができ、それは製品価格にも反映されるが、メーカーごとの個性は埋もれやすくなる。実際、カイエン、トゥアレグ、Q7、ウルスには“乗り味”にも共通したものがあるという。

 しかし、これらのクルマを実際に乗り比べることができる人はごくわずかであり、車種によって細かいフィーリングが異なるのは間違いない。各車のスタイリングにも共通感はあるが、それをどうとらえるかは個人次第とも言える。

似ているけど違うプラットフォームだった! 「マツダ CX-5」「マツダ CX-8」

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典型的な近年の“マツダフェイス”でデザインされたCX-5。きびきび走るショートホイールベース仕様は、日本国内の道路事情にもマッチしてヒットモデルに

 マツダの快進撃を支えるSUVの2モデルがCX-5とCX-8。この2台は同メーカー製ということもあって兄弟車と言って差し支えなく、実際に両車の見た目はよく似ている。しかし、実は異なるプラットフォームが採用されている。

 CX-5はスポーティな仕上がりをウリにしていて、対するCX-8は高級感を重視した構成を採用。実際に販売価格もCX-8のほうが高い。ホイールベースはCX-8が200mm長く、車重も約200kg重い。これだけ異なるクルマで共通プラットフォームを使用するのは少々無理があり、それゆえに両車のプラットフォームは異なっている。

 ちなみに、ホンダやトヨタはプラットフォーム共有がうまいメーカーで、例えばフィットで開発された新型プラットフォームはヴェゼルやフリードといったヒット車を生み出す礎となった。そのいっぽうで、車名は同じなのにヤリスに採用されるのはコンパクトカー向けTNGAプラットフォーム(GA-B)であるのに対して、GRヤリスは(TNGAの思想に基づいてはいるものの)スポーツ4WDプラットフォームという別々のプラットフォームを採用するものもある。

 今回はプラットフォーム共有のメリット・デメリットと実際のクルマでの例を見てきたが、自動車メーカーのグループ化が進む現在では、今後もプラットフォーム共有の流れが加速するのは必至。これはEV(電動自動車)でも同様だ。同じプラットフォームでいかに車種ごとの個性を出すのかが今後の各メーカーの課題になりそうだ。

【画像ギャラリー】似てる? 似てない? プラットフォームが同じクルマたち

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