テキサスの“走れるマシンデザイナー”キャロル・シェルビーが作ったマッスルカーたち【レースカーデザイナーが手掛けたスーパーカー】

アメリカンマッスルカーをさらにマッスル化「シェルビー GT350/500」

テキサスの“走れるマシンデザイナー”キャロル・シェルビーが作ったマッスルカーたち【レースカーデザイナーが手掛けたスーパーカー】
シェルビーの名を冠して1965年に登場したGT350(写真は1966年型)。レースを想定した徹底的な軽量化とエンジンのパワーアップで高性能を獲得している

 コブラへのエンジン供給によってシェルビーとの関係を深めたフォードは、1964年に発売したマスタングのハイパフォーマンスモデル製作をシェルビー・アメリカンに依頼した。その目的はレース出場のためのホモロゲーション取得であり、ハイパフォーマンスモデルには小改造でレース出場が可能な性能が求められた。

 この依頼を受けてシェルビーが製作したのがGT350だ。マスタングをベースにボンネットの軽量化やサスペンションの強化、デフのLSD化などを行い、エンジンはフォード製チャレンジャー289HPをベースにシェルビー・アメリカンがチューンしたコブラ298V8エンジンを搭載。エアコンや後部シートも取り除かれるなど、まさに公道を走るレーシングカーとして開発されている。

 フォードではこのマスタングの上級モデルにあたるマシンをシェルビー GT350と呼び、正式にはマスタングの名称を与えていない。それだけ当時のアメリカでシェルビーの名前には知名度と訴求力があったということになる。

 GT350は後に排気量をアップしたGT500にリニューアルされ、1969年までに約1万5000台が生産された。そして2007年、シェルビー GT500はフォードの手によって復活する。フォードではこの時期にGT40などの往年の名車をイメージしたモデルをリニューアル生産していて、6代目マスタングの開発にあたってキャロル・シェルビーの意見を取り入れたシェルビー GT500を発表した。

 2015年になると今度はシェルビー GT350も復活。これは初代モデルの登場から50年を記念したアニバーサリーモデルとして企画された。このモデルにキャロル・シェルビーは関与していないが、フォードは初代モデルの開発に尽力したシェルビーに敬意を表してこの名称を採用した。

優勝請負人としてのキャロル・シェルビー「フォード GT40」

長い歴史を持つモータースポーツの世界において高い評価を得たレーシングカーデザイナーは、ロードカーの開発においても有能なのか? 今回は、ACコブラ、フォード GT40など、数々の名車を作り出した、ル・マンウィナーにして名デザイナーのキャロル・シェルビーの足取りを辿ってみたい。
ル・マン出場のためのホモロゲーション取得用に製造されたGT40のロードバージョン。ただしロードモデルの製造はシェルビーではなくFAVが担当している

 1964年、フォードは自社のイメージ向上を狙ってル・マン24時間レースでの優勝を目指すことになる。そのためにイギリスにフォード・アドバンスト・ヴィークル(FAV)が設立され、このチームがイギリスのレースカー・ローラ6をベースに開発したのがGT40だ。GT40は同年のル・マン24時間レースに出走するが、熟成期間の短さもあって出場3台がすべて夜明けを迎えることなくリタイアという惨敗に終わる。

 この結果を重くみたフォードでは、シェルビー・アメリカンにGT40の開発を委託。シェルビーはマシンの改良を行うと同時に、自らチームを率いてかつてドライバーとして制したル・マン24時間レースに挑むこととなる。

 雪辱を期して参戦した1965年のル・マン24時間レースではまたしてもレース序盤に全滅してしまい、シェルビーの立場も危ういものになる。だが、ここでくじけずにGT40の開発は継続され、1966年には悲願の優勝を1-2-3フィニッシュという最高の結果で達成する。以後GT40は1969年までル・マン24時間レース4連覇を成し遂げた。

 GT40の成功によってキャロル・シェルビーの名声はさらに高まり、アメリカを代表するスーパーカー開発者の地位をゆるぎないものにした。その後はクライスラーとも共同で数多くのモデルを手掛け、1970年代後半にレースやロードカー開発から引退。2012年に89歳でその生涯を閉じたが、アメリカの自動車史においてその存在は今でも燦然と輝いている。

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