実はタクシーとしても優秀だった?
クラウンの歴史を語るうえで欠かせないのが、同車をベースにしたタクシーの存在だ。
トヨタ製では、それまでトヨペット・マスターという車種がタクシーに使用されていたが、1955年に登場した初代クラウンがタクシー用途にも耐えられることがわかり、1956年11月にマスターの生産を終了。以後はクラウンがトヨタ製タクシーの主役となっていった。
1995年には中型タクシーや教習車での使用を目的に開発されたクラウンコンフォートが登場。しかし、名称や外観はクラウンだが、実は6代目マークⅡ(X80系)がベースで、クラウン直系のモデルとは言い難い。
とはいえクラウンであるのもまた事実で、2018年までの長きに渡って生産が続けられた。近年は後継車のジャパンタクシーにその座を譲っているものの、まだまだ街中でクラウンのタクシーを見かけることは多く、個人タクシーでも使われている。
売り上げの低下はクラウンに何をもたらす?
1990年をピークに、その後のクラウンの販売台数は、徐々にではあったが、確実に下降線を描いてきた。販売台数は2003年登場の通称「ゼロクラウン」こと12代目モデルでいったん上昇するものの、その後のモデルでは再び減少を始めてしまった。
2018年にオーナーの若返りを狙って登場した現行15代目モデルでも残念ながら凋落傾向に歯止めはかけられず、新型コロナ流行などの逆風もあってセールスはかんばしくないと言われている。
世間がクルマに求めるものが、ステータスを象徴する高級車から環境に優しいエコカーに流れているのは間違いなく、ハイブリッドモデルもラインナップするとはいえ、大柄でエコからは遠いイメージのクラウンは、時代にそぐわないというムードがあるのも事実。
そしてクラウンの用途で重要な位置を占めていたショーファーカーの中心は、アルファードなどのミニバンに移っている。つまり、クラウンがこれから生き残るためにはなんらかの変革が必要になるだろう。
SUV一本化は真実か? クラウンの未来を考える
クラウンの現行モデルは2018年発売の15代目。それまで目立ちつつあったユーザーの高齢化に歯止めをかけて、より若い層にアピールできるよう内容を一新し、全グレードに車載通信機のDCMを搭載した初代コネクテッドカーとして登場した。
このように期待を一身に背負って誕生した現行クラウンだが、販売台数は思うように伸びず、2020年には「セダンタイプの生産終了か?」というショッキングがニュースも流れた。
そして2021年、中国ではトヨタと広州汽車との合弁会社・広汽トヨタからクラウンクルーガーというモデルが発売された。クラウンの名称を持つものの、このクルマのベースはSUVのハイランダーで、見た目もSUVそのもの。クラウンクルーガーの登場が、今後のクラウンが進む道を示しているとの見方もある。
さらにはトヨタのBEV(バッテリー電気自動車)戦略に乗ってBEV仕様のクラウンが登場するというウワサもあり、その動向からまだまだ目が離せない。
日本を代表する高級セダンとして君臨してきたクラウンだが、いよいよ大胆な変革を受け入れる時期がきたかもしれない。だが、それがクラウンの栄光の歴史を否定することはなく、多くの人が憧れた「クラウン」は、日本車の歴史において重要な存在であることは紛れもない事実だ。
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