新型クラウンは若返りに成功したのか?トヨタが最重要課題に掲げた戦略の成否

■クラウンを取り巻く環境が大きく変化

トヨタとクラウンが全力で目指しても、ターゲットユーザーの若返りに成功していないのには、いくつか理由が考えられる。

ひとつはクラウンの持つ伝統的なコンセプトが若者にとって新しさを感じさせない印象があることだが、もっと根本的な事情が大きい。

価格だ。

現行型クラウンは最も安いグレード(2Lターボ「B」)でも460万6200円であり、現行モデルの中心グレード(2.5Lハイブリッド「RS」)だと541万6200円する。保険料や諸費用を考えると乗り出し約600万円に達する。

この金額を現代の若者に「払ってくれ」と言うのは酷だろう。

もちろんなかには経済的に余裕のある若者だっているだろうが、それなら押し出しが強く室内の広いアルファード/ヴェルファイア(クラウンとほぼ同額だ)も候補にあがるだろうし、流行りのSUVであれば、ハリアーやC-HRがクラウンの2/3の価格、下手をすれば半額程度で買えてしまう。

30年前であればクラウンを買っていたであろうユーザー層の多くが、SUVや輸入車、ミニバンへ流れている。その流入先の筆頭が(くしくも同門トヨタの)アルファード/ヴェルファイアだろう

さらにいえば、どうせ高額のセダンを購入するならより新鮮さを感じるレクサスESやLSを選ぶユーザーも増えているだろう。他メーカーの国産車にはクラウンの敵はもはや存在しないが、輸入車のベンツEクラス、BMW5シリーズ、アウディA4なども狙える価格帯であり、事実、販売店に取材すると現行モデルの商談はベンツCクラス、BMW3シリーズからの乗り換えや、競合するケースも多いようだ。

こうした社会環境の変化や、ライバル車種の動向を考えると、クラウンがかつてのように、30~40代から「いつかはクラウンに乗りたい」と憧れられたり、それを受けて月間1万台以上売れるようになるとは考えづらい。

クラウンが「たくさんある選択肢のなかのひとつ」に収まったことは、やや寂しいことではあるが前向きにとらえたい

とはいえもちろん、だからといっていたずらに悲観的になる必要はない。

放っておいたらますます高齢化するのは目に見えているユーザー層を、新型クラウンはデザインや機能を一新して「現状で食い止めている」ともいえる。

なによりクラウンのようなサイズの国産FRサルーンはあらゆる年齢層にとって選択肢として重要だし、モデルとしてそれを維持し続けるために、メルセデスベンツやBMWやアウディに対抗できる走行性能や快適装備やデザインを追求し続けるべきだ。

だからこそ、「クラウンは若返りに成功したか?」という問いには、「いま全力で踏みとどまっている最中」と回答すべきだろう。

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