ボタンの掛け違えというのはこのことか? ダイハツが軽スーパーハイトワゴンという新しいジャンルをタントによって開拓し、時代がその方向に向かっているさなか、スバルは軽スペシャリティ、R1を登場させた。なんでこんな時代に、このクルマを出したのか? クルマ好きとしては嬉しかったが、やっぱりというか、売れなかった……。
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、スバル
■時代を逆行する軽スペシャリティをなぜこのタイミングで……
2005年1月、千葉県で行われたスバルR1の試乗会に行った時、あまりの唯我独尊ぶりにタマげたことを覚えている。なぜタマげたのか? 当時、ワゴンRより背の高いスーパーハイトワゴンのジャンルを開拓したタントが大ヒットしており、今後は、スーパーハイトワゴンの時代が来ると、ベストカー本誌で取り上げていた。
たしかにプレオはあったものの、まさか4枚ドアのR2(2003年12月発売)に加えて、軽スペシャリティのR1を出すとは思わなかったからだ。
赤いボディカラーのR1を目の前にしての第一印象は大げさかもしれないが「これイタ車?」だった。航空機をモチーフにした、スプレットウイングスグリル、フロントフードからルーフ後端まで卵型のように流れるボディシルエットや張りのあるボディ曲面形状にうっとり。デビュー当時の広告キャッチフレーズは「Super(Small)Car」で、ビジュアルイメージには昆虫のてんとう虫も使用していた。
コクピットの質感も高く、軽自動車とは思えないほど。ただ基本は2人乗りのパーソナルカーで、リアシートは+2という極狭スペース。この時代のハッチバック車(今もそうだが)は3ドア車は壊滅的な不人気ぶりで、5ドアじゃないと売れない時代になっていた。
オシャレなデザインで、内装もいい、さらにスバルはバズーカ砲のような飛び道具があった。そう、658cc、4気筒エンジンと、ストラット式の4輪独立懸架式サスペンション。
この時代のスバルは志が高かった。反面、お金かけすぎ……。R1を走らせると、スムーズに回り、3気筒特有の、がさつなところがないので、本当に上質に感じる。特に高速道路では、四輪独立懸架サスの恩恵で、やや硬さは感じるものの、上質な印象だったのを覚えている。
しかも、当初は最高出力54psの自然吸気エンジンのみだったが、2005年11月には最高出力64psのスーパーチャージャー付きDOHCエンジンも追加した。これがいいのよ、マジで……。
■なんと最も高いのは256万円
やっぱり時代がよくなかった……。R1の売れ行きが大幅に好転することはなく、2010年4月、R1は一部のファンから惜しまれながら販売終了となってしまった。
当時の新車価格は2WDの127.1万~4WDの153.7万円。なんと2024年4月現在、中古車検索サイトでは、中古車流通台数は85台と豊富で、中古車価格帯は9.8万~約260万円。
走行距離が5万km以下で程度のよさそうなモデルは135万~160万円。そしてR1の中古車最高価格はなんと256万円。なぜこんなに高いのか? でも2010年式の走行2000㎞、1オーナーと聞けば納得する!?
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