『頭文字D』名勝負列伝06 どちらのエンジンが上か!! ハチロク対ハチロク編

【バトル考察】

 渉がバトルの舞台に選んだのは秩父の山奥。走行経験のある彼自身が、「ひどくせまいうえにいやになるほどトリッキー」と語るほどの難コースである。しかも、1本ごとに前後ポジションを入れ替えながら、互いの気が済むまで走るという、過去に渉が「3回ゲロはいた」ほど過酷なルールだった。

 先行・渉、後追い・拓海の並びで2台のハチロクがコースインし、レビンのハザードとともに勝負の幕が開ける!

 ターボチューンのレビンは、荒れに荒れた路面に手こずりながらも、驚異的なスピードでかけ抜ける。一方、“ドッカンターボ”の渉の変則的な動きにリズムを狂わされ、これまでに走ったことのないほどの酷道にてこずり、さらにエンジンの高回転ゾーンも初体験と、拓海&トレノには不利な条件が3つも揃っていた。

なんとか渉についていく形で1本目を終えたが、休む間もなく2本目がスタート。ポジションを入れ替えて前に出た拓海は、「こんなコースじゃいくら無理してもレビンをちぎれない」と(負の方向に)ひらきなおるのだが、逆に開き直ったことで、落ち着きを取り戻し、何かに気づく。

 それは、今までリボーン・ハチロクに感じていた「乗りにくさ」の謎だった。もともとエンジン載せ替え時に、高回転向けセッティングに仕立てられていた足まわりが、初めて高回転域のパワーを使って走ったことで、拓海の「乗りにくい」感覚を「乗りやすい」に変えていたのだ。

 そしてバトルが3本目の後半になると、ついに2台のマシンのタイヤが劣化し、グリップを失い始める。どちらも強力になったエンジンパワーに対して、タイヤへの負担がダイレクトにきた格好だ。

 ここで、扱いやすさ含め、他のすべてを捨ててでもターボ(=パワー)を手に入れようとした、かつての渉の思いが語られる。そして「何かを求めて前へ進む」という兄の言葉が、イツキとともに待機所で待つ和美の心に突き刺さるのだった。

 4本目、両ドライバーの集中力とスタミナが消費されていく。そして、両車ともコントロールを失いそうな状況になってきたところで、拓海の本量発揮となる。限界領域でのマシンの挙動を理解し、水を得た魚のようにドリフトでギリギリのラインを抜けていく。かつて渉が感じた拓海の神テクニックの片鱗。もしかすると、あの時すでに勝敗は決していたのかもしれない……。

 運命の5本目、スタートと同時に拓海のセリフ描写が一切なくなる。セリフはスタミナギレを起こした渉の心情のみ。そしてコース最終盤、幅が狭過ぎて抜かれるはずのないコース、とタカを括っていた渉の真横に、トレノが並びかけてきた。「ここは追い抜きとか、そういうのは、なしなんだよ!!」と焦る渉。思わず「ちょ、待てよ!」と言いたくなる展開! 渉の一瞬の気の緩みをついた拓海、エグい。エグ過ぎるぜ!

 結果が気になって夜眠れなくなったハチロクオーナーが数多くいたと言われるほどの興味深かったバトルは、最後までモチベーションを切らさず、またミリ単位の並びかけにチャレンジした拓海の勝利で決着した。新エンジンは、まさに神エンジンだった。バトル後、帰宅した拓海が、文太に告げる。「あのさ、あんないいクルマだとは…マジで思ってなかったよ」、と。

 一方、バトルの終わりを待ちながらひとり大人になった和美から「今日でイツキくんともお別れ」と言われ、呆然とするイツキの恋も決着。……かに思われたが、後日、イツキは和美と最後にもう一度だけ会い、ある決断をする。最高だよ。やるじゃんイツキ!

 文太と拓海。そして、和美にイツキ。魅力的すぎる人間模様に、今回は完全ノックアウト。バトルはもちろん、キャラクターが魅力的過ぎますよ、しげの先生!

次ページは : ■【1話丸ごと掲載】(第134話)

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